あと、プログレッシブについて、一巻終わったら、本編に入ります。長いので……
俺達は、アスナのウインドフルーレの強化素材を取りに来ていた……三人で。さて、三人目は誰でしょう!
「エヘヘ、そういえば二日振りだね、エイト」
「ああ…そうだな」
はい、俺、アスナ、そしてキリトの三人でした。正解者はいたかな?
一人脳内クイズをやっていたら、どうやら目的地に着いたらしい。
ていうか、なんでキリトいるんだっけ……
あの失言の後、(無理矢理)狩りに付き合うことになった俺は、多大な犠牲を払い、なんとか機嫌をとることができた。
その一幕がこれだ。
「あの……アスナさん?僕、目的地知らないんですが……」
「西の方」
答えになってねぇ…
俺の精神的HPバーは、ゴリゴリと削れていってる。
「あ、あの……そろそろ許して頂けないでしょうか……さっきのは失言でした……」
俺は、上司に頭を下げる社畜よろしく頭を下げ続ける。
「ふーん、本当に反省してる?」
な、なんだ……この小学生の時に、先生に怒られた時のような感覚は……
「は、はい……反省してます」
「じゃあ、わたしのお願い、何でも一つだけ聞いてね」
……断ったら刺されるな……
「は、はい…わかりました」
……そのお願いが、約二年後だとは俺も思わなかった……
で、そんなこんなで、どうにか機嫌を取り、西……正確には、南西へと歩いていたのだが……
……何か知らんが、モンスターに囲まれているプレイヤー――キリトがいた。
「何で居んの?アイツ…」
最近エンカウント率高すぎでしょーとか思いながら加勢に入る。
あれくらいの敵なら、キリト一人で全滅できるだろうが、SAOでは億が一でも、HPを全損させる危険をできるだけ避けなくてはならない。
「ヤアアアア!!」
アスナのリニアーが巨大牛の頭に突き刺さる。
……一層ボスの時に、俺に引いてたくせに、アイツの方がえげつなくないか?
とか考えながら、俺は突進してくる牛と突進系スキルを使って、真正面からぶつかる。
現実では考えられない光景だが、いかに俺が敏捷極振りだといっても、相手は通常攻撃、俺はソードスキルを使っているので、ノックバックしたのは牛だ。
「スイッチ」
淡々とそう言うと、スイッチしたキリトが、バーチカル・アークで最後の牛を倒す。
「何やってたんだ……お前」
普通あんなに敵集めるか?五匹以上いたぞ?
「い、いやあ……攻撃が単調で、突進避け続けたら……何か他の牛に当たって…」
……そんなことあるのか?まあ、プレイヤーのフレンドリーファイアがあるから、あるの……か?
「そりゃ……ある意味凄いな」
「それよりも!!」
お、おおう。結構すごいと思うけどな……
「何で二人が一緒にいるの?」
笑顔が怖いっす。
「あー、むりや……」
アスナの睨みがきたので言い直す。
「い、いや、アスナの武器強化素材を取りに…」
「ふぅ〜ん。ならわたしも付き合うよ?」
……これは正直ありがたい。空気が重くて息ができない。……まあ、する必要ないけど。
それに戦力は多い方がいいからな。……楽できるからとかじゃないよ?ホントダヨ?
というのが経緯だ。
「それにしても……何でファンタジー世界でパーカーなのよ。怪しすぎるでしょ」
「……あー、そうだな…確かに自分でも思ったが、あれしかなかったんだよ。どこで売ってんだ?そういうフード」
「これは《はじまりの街》の西市場にあるNPCの……」
ここで俺は、また自らの失言に気づく。
「……って、同じの被るのやめてよね!それじゃまるでペアル……じゃなくて、固定パーティーみたいに見られるじゃない!顔隠すなら麻袋でも被れば!」
「しねえよ……そんなこと……」
そんなことしたら社会的に俺が死ねるよ……
具体的には、
「えー、何であの人と同じの着てんの?」
「ほんとだー、何あれストーカー?警察呼んだほうがよくなーい?」
とかだ。
何でたまたま同じ服着てただけで、ストーカー扱いされて警察に補導されなきゃならないんだよ……
また自分で余計なこと(過去のトラウマ)を思い出して、気分がどんよりしたので、この世界の俺の癒し(キリト)に話しかける。
「……なあ、女子って全員あんな過剰反応なのか?」
「……エイトが女心を分からなすぎるだけだと思うよ」
……そりゃ分からんだろ。俺男だし。
こんな美少女と関わることなかったし」
……雪ノ下は性格悪いから除外、由比ヶ浜はアホの子だから除外な。
「ビショウジョ、ビショウジョかあ……エヘヘ」
「ど、どうしたんだ?」
「何でもなーい」
……そして冒頭に戻るのである。
「じゃあ、アスナはともかく、エイトは知らないと思うから説明するね?」
「ああ……頼む」
アスナさん全然説明してくれないんですもんねー。
「といっても、説明することは、ワスプの針に刺されると二、三秒スタンするから、見かけたら即フォロー、いいね?」
「わかった」
「了解」
これからすぐに狩りに行くのかと思ったが、アスナの言葉には続きがあった。
「南に移動しすぎると《ジャグド・ワーム》を引っかけるから、それも注意ね」
「「り、了解……」」
キリトェ、情報忘れんなよ……
俺達が狩っている《ウインドワスプ》は、端的に言えばデカイ蜂だ。
蜂ならば当然針があるわけで――うん、めっちゃ怖い。
攻撃を見極めているときに決まった法則性があるのに気づいた。
ホバリングして急降下したときに、蜂の体が真っ直ぐだったら噛みつき、曲がったら針攻撃だ。
今回は針攻撃だ。《ウインドワスプ》の針が淡い黄色い光に包まれる。
タイミングを合わせてバックジャンプ。
ディレイに陥った蜂に、現状最強技、《バーチカル・アーク》を叩き込む。
――相手の体力、残り約五割。
すかさず《スラント》、《レイジスパイク》と叩き込み、最後に《シングルシュート》。
この間一分。
チラリと周りを見ると、キリトが《体術》スキルを使っていて、アスナが《リニアー》で敵を倒し、「――二十二!」と言っていた。
アスナは少し変わった。いや、元に戻ったのかもしれない。――SAOに入る前のアスナに。
アイツには才能が、実力が、強さがある。
アイツは将来、攻略プレイヤーの先頭に立てるだろう。
キリトは……性格上難しそうだか、実力は恐らくアスナ以上になるだろう。
で、何で俺達がバラバラに、本気で《ウインドワスプ》を狩っているのかというと、アスナの提案だ。
要は、「晩御飯は奢るけど、それとは別に、五十匹狩るのが一番遅かった人がデザート奢らない?」だ。
……ウルバスのNPCレストランには、メチャクチャ美味いショートケーキがあるのだが、高い。
故に――――将来有望な二人にも、俺は負けるわけにはいかないのだ。俺の財布のために。
一時間後には、高笑いする俺、俺をジト目で見るアスナ、ジ○ーになっているキリトがいた。
方法はこうだ。
俺、あと一撃で死ぬ《ウインドワスプ》を《シングルシュート》で横取りする。
これだけだ。
――ちなみに、反則扱いされて奢るのは俺になってしまった。
――何故だ……ルールないのに反則って……解せぬ。
次回!奢りと食事とウインドフルーレの破壊です。