ソロアート・オフライン   作:I love ?

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ついに『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』が放送したあぁぁぁぁ!八幡が動いてる、喋ってるううぅぅぅ!しかも絵が一期と比べてすごい上手い!
……すいません、取り乱しました。
最近は気が早く、ユウキ生存のためにAIDSを調べたり、生存後の生活を考えたりしていて投稿が遅れてしまった第五十八話、どうぞ!


二層の再現のように、彼らは議論を重ねる。

「DDAが?」

 

一応昨日のことを報告したら、僅かにアスナが眉をひそめた。

DDAとは、ディヴァイン・ドラゴンズ・アライアンスの頭文字で、《聖竜連合》の略称である。ちなみにアスナ属する《血盟騎士団》は、ナイツ・オブ・ブラッドの頭文字をとってKoBと言う。つまり俺達ソロプレイヤーはSP……つまり特別(SPecial)護衛(Security Police)だ。やだ、知らず知らずのうちにアスナの護衛をさせられちゃってる!

そう言えば、ナイツ・オブ・ブラッドって、直訳で『血の騎士達』なのに、制服は白いよな……と、DDAの威光を全く気にしていない、普段の騎士服ではない血盟騎士団トップツーのアスナを見ながら思った。

サクラの月(つまり四月)二十三日の天候パラメータは、昨日とは打って変わって霧雨模様だが、アインクラッドでは雨のせいで風邪をひくことはない。ちょっと冷え込むくらいだ。

午前九時ちょうどという、俺みたいな不真面目ソロプレイヤーにとっては早い時間に待ち合わせた俺達三人は、朝食がてら情報整理のために、手近なカフェテラスに入った。最大のトピックは、『DDAギルメン、一般プレイヤーエイト(善良なアインクラッド城民)から武器巻き上げ事件(俺命名)』だ。血盟騎士団副団長(KoBサブリーダー)、《閃光》のアスナ氏に聖竜連合(DDA)所属、シュミット氏のことを訊くと……

 

「あー、いたわねそんな人。でっかいランス使いでしょ」

 

……どうやらシュミットは、(少なくともアスナには)あまり知られてはいないらしい。憐れ、シュミット。

 

「ああ、なんか二メートルくらいあるバカでかいランス背負ってる奴だ」

 

そこで一息つき、極甘コーヒー(MAXコーヒーではない)を口に運ぶ。練乳をいれてないからか、やはりMAXコーヒーとはどこか明らかに違う。そもそもこの世界に練乳があるのか知らないが、MAXコーヒーが作れるのだからきっとあるのだろう。

同じくカップを抱えて、アスナが思案顔でカフェオレを見つめる。

 

「……実はそいつが犯人、てセンはないわよね?」

 

「断定は危険だけど、それはないと思うよ。もしシュミットさんが犯人だとして、槍をわざわざ回収しにきたなら、最初から現場から持ち去ればいい話だし……」

 

「ま、あのショートスピア(凶器)の形状と名前からして、犯人が何かメッセージを伝えるために残したと考えるのが妥当だろ」

 

「そうか……、そうだね。あの殺し方に加えて、武器の名前が《罪の茨(ギルティソーン)》だしね……」

 

アスナが陰鬱な表情で呟いた言葉に、俺は更に付け加えるように口を開く。

 

「……あれならPKじゃなくて、一方的な虐殺……《公開処刑》と言った方が適切だろうな」

 

公開処刑(一方的虐殺)》。未だかつてレッドさえ成していなかったことだ。その恐ろしさに、俺達三人は思わず身震いする。

 

「でも……そうなると、動機は《復讐》とかじゃなくて、《制裁》になるよ?」

 

「シュミット、ヨルコさん、カインズの三人が過去に犯人にとってなんらかの《罪》を犯したとしか思えないな。で、その制裁に公開処刑をした……」

 

「そう考えると、シュミットはむしろ、犯人側じゃなくて狙われる側、って感じだわね。以前にカインズと一緒に《何か》をして、その片方が殺されたから焦って動いた……」

 

「その何かが判れば、自動的に復讐者(殺人した人)も判る気がするね……」

 

「逆に言えば、その何かが判らなければ何も解らないってことだけどな」

 

「身も蓋もない言い方するわね……」

 

うっせえ、事実だろ。探偵漫画じゃないんだ。コ○ンでも金○一でも緋弾○アリアでもないんだよ。最後はラノベな上に、探偵じゃなくて武偵だし、アクション主体だけどな。しかも主人公がチートスペック、一級フラグ建築士だ。

一年半以上も昔に電子書籍で読んだラノベの内容を覚えている自分の脳を自画自賛しつつ、時刻確認のために視界端の時計に目を向ける。十時からここの近くにある宿屋にいるヨルコさんにまた話を聞くらしい。

黒パンと野菜スープの朝食をゆっくり食べても時間が有り余ることに安心しつつ、モソモソと黒パンを千切って噛む。

小町の愛妻ならぬ愛妹(決してイマイチパッとしない訳ではない)朝食の方が百倍旨いな。そもそもあれだな、人を愛する気持ちを含め、感情がSAOでも表現できる時点で、デジタルデータ化出来るってことだよな。感情も随分安っぽくなったもんだ。

このままVR技術が研究されれば、人の感情さえもコントロールできそうだ、などとうすら寒いことを考えながら朝食を済ませる。

やることがない俺は、流し目でいつもと違う服装の二人を眺める。

まずアスナ。いつもの騎士服ではなく、ピンクとグレーの細いストライプ?型のシャツに黒レザーのベストを重ね、ミニスカートもレースのフリルがついた黒、脚にはグレーのタイツ。更に靴はピンクのエナメル、頭には同色のベレーと、なんかキメているみたいだ。そこらのリア充とは違い、ファッションには疎い俺にも判るほど服を着こなしている。

対するキリトは、ピンク、グレー、黒と三色を主色にしているアスナとは違い、全身黒だ。

上はリボンをあしらったブラウスにカーディガンを羽織っており、下は白い線でなんかの花が描かれているエスニック、靴はオックスフォードだ。小町に無理矢理見せられたファッション雑誌(偏差値が低そうなもの)がこんなところで役に立つとは……

ちなみに俺は、長袖紺色のTシャツに、腕の部分は黄緑、胸の回りに太い灰色のラインが入っている白いフード付きパーカーを着ていて、ズボンは黒、スニーカーは灰色という、まあ身の丈にあった冴えない服装だ。

俺のは適当に安い服を買ったため、これ一式で確か一万五千コルくらいだったが、女物の服となると皆目検討もつかない。

三万?五万?とどこか博打じみた思考をしていると、さすがに見すぎたのかアスナがこちらを見上げ、顔を逸らした。……ヤベ、見物料とか取られないだろうな……

 

「……なに見てるのよ」

 

「い、いえ、なんでもありましぇん!」

 

あれはヤバイ。なに見てんだよ、ああん?くらいの目付きだった……

弾かれるような勢いでメニューウインドウを開き、自分でも何がしたいのか解らないまま操作を始める。リア充が待ち合わせの時にいかにも用があるみたいにスマホをいじるのと一緒だ。

俺の対角線上に座る、俺とは違う野菜スープを飲んでいるキリト、正面に座ってなにやらシチューっぽいものをスプーンでかき混ぜているアスナを見ながら、少し二層の時のことを思い出していると、アスナが話し掛けてきた。

 

「わたし、昨夜ちょっと考えたんだけどね。あの黒い槍の《貫通継続ダメージ》だけど……」

 

その言葉に、俺はアイテムを整理していたシステム窓から目を離し、キリトは俺とは違う野菜スープを飲んでいた顔を向ける。

 

「例えば、圏外で貫通属性武器を刺されるじゃない?そのまま圏内に移動したら、継続ダメージってどうなるのか、知ってる?」

 

「うーん」

 

まあそれが普通の反応だろうな。そんなシチュエーション(稀有な事態)になることなんて、そうそうないだろう。今のところだが、モンスターは貫通継続ダメージがある攻撃をしてくる奴はいないしな。

 

「ごめん、知らない……。けど、毒や火傷による継続ダメージ(DOT)は、圏内に入った瞬間消えるから、貫通継続ダメージも同じじゃないかなあ……」

 

「でも、刺さってる武器はどうなるの?自動で抜けるの?」

 

「……所有権がある奴のストレージに自動収納されるんじゃないか?所有権がある奴がいないなら、武器が刺さってる奴の物になるとか」

 

「でも、イマイチ確証に欠けるよね……」

 

「……んじゃ、実験するしかないんじゃないか?」

 

「「実験!?」」

 

いや、実験と言ってもそこまで危険なものじゃないよ?どんなものを想像しているのか知らないけど。

そんなツッコミを心の中でしつつ、街区マップを開いて、ここから圏外に出られる門までの最短ルートを探した。

 




次回!『黄金林檎のいざこざ』です!

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