ソロアート・オフライン   作:I love ?

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うん、レインの口調難しい。ロスト・ソング編だけだと情報少ないからなぁ……えへへって笑うことくらいしか判らない。
誰か……教えてください……


何故だか、比企谷八幡は会いたくない人物と会ったこともない人物とエンカウントする。

俺の紅く光る剣尖が、闇に光跡を残し、敵を斬り裂き、塵へと還す。それと共に、レベルアップのファンファーレが鳴り響いた。

 

2024年6月20日。

アインクラッド攻略層は、ようやく六割を越えていた――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぁーっ、疲れたぁ……」

 

夜七時の夕飯時。俺は倦怠感に蝕まれ、布団の魔力に吸い寄せられるようにダイブした。しかし、少し喜ばしいこともあった。

 

「やっとレベル九十か……」

 

ゲームっていいよな、自分が努力した成果がちゃんと眼に見えて反映されてる。

襲ってくる眠気の中、なんとかウインドウを閉じ、微睡むような眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。……かと思ったら、もう十二時でした。実に十七時間睡眠である。昨日あと一レベで九十だから張り切りすぎちゃった☆

ふと眠気が覚めてくると、昨日晩飯を食べていないツケの空腹感がヤバくなってくる。何か食いもんはないか……とアイテムストレージを漁るも、何もない。

仕方なく今夜料理を作り溜めすることを決意し、眩しい朝(昼だけど)に苦笑いして、俺は街に繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つけたのは、NPC経営のカフェ。木造建築でおしゃれっぽい店で、且つ少し古さを思わせ静かな雰囲気を漂わせる。

心が落ち着きそうだ……と、俺はドアを引き、カランカランと音が鳴る。

これまたウェイターみたいな格好をしたNPCにハニトーと極甘コーヒーを注文し、受け取ってから席を探す。といっても、閑古鳥が鳴いている店なので、すぐに空いている席を見つけた。

そこにトレー(中世っぽい雰囲気のアインクラッドになぜあるか不明だが)を持っていき、座ろうとしたところで、あまり聞きたくない声が耳に入ってきた。

 

「オーイ、ハッチ!」

 

……無視だ、無視。なんか独特な喋り方の聞いたことある声が遠方から聞こえてきたが、無視だ、無視。

 

「ひどいヨ、ハッチ! オネーサンの言葉を無視するなんテ!」

 

「おわっ!」

 

眼を瞑ってコーヒーを啜っていたからか、急に目の前に現れた顔にびっくりしてしまう。見事にペインティングされている三本ヒゲは見間違えようがない、悪徳情報屋、通称《鼠》のアルゴだ。

 

「……何の様だ、《鼠》」

 

「人を認識した途端に嫌な顔をしないでくれヨ……いくらオネーサンでも傷つくゾ?」

 

黙りんす! ぬしがわっちの生活パターンをアスナに売ってからと言うもの、無理矢理攻略に付き合わされて大変なんだからねッ! ちなみにこれはツンデレなんかじゃないんだからねッ!

……いや、待てよ。レベルも九十になったことだし、スキルスロットも増えた。なら、《鼠》から新しいエクストラスキルについて訊いて、それを追加するのもアリだな……

 

「いや、《鼠》。いいところに来た。さすが情報屋の鑑!」

 

「なんか次はいきなり褒め出したヨ……」

 

いきなり態度を百八十度回転させた俺に対し、奇妙な宇宙人を見つけたかのような眼を向けてくる《鼠》。

 

「ま、と言うのも……情報を買いたい」

 

「ホゥ? 何の情報だ? オネーサンとハッチの仲だ、安くするゾ?」

 

両腕で頬付きをつき、ムフーと笑みを浮かべてくる。やめろ、なんかウザい。

 

「……新しいエクストラスキルの情報はなんかないか」

 

「ふぅン? 遂にハッチは九十レベになったんだナ?」

 

「ああ、まあな……で、どうだ?」

 

「ないこともなイ……が、誰もクリアしたことがないから、どんなエクストラスキルかは判らなイ」

 

「ほー、解った。じゃあその情報を売ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのエクストラスキルを取得できるクエストは、五十二層で受理できるらしい。情報料はクエスト内容と、取得できるスキルだけでいいらしい。

五十二層は、一言で表現するなら『和』である。

中世的な建物や雰囲気なアインクラッドで、今の所唯一和式の珍しい層だ。

街は日本家屋が建ち並び、NPCも和服、連なる店々も和菓子屋や緒茶所など、今の日本もここまで和じゃねーぞと思うほどの和尽くし。

さて、目的の場所は五十二層のポータルのすぐ左を流れている川を渡れる石造りのアーチ橋を通り、ずっと真っ直ぐ言った中の山にあるらしい。思わず「トトロいるもん! 八幡見たもん!」とか言っちゃいそうなくらい鬱蒼と木々が生い茂っている。れっきとしたフィールドで、ダメージの通る《圏外》である。

ふと、気配を感じた。否、感じていた。だが辺りをキョロキョロ見回すもプレイヤーは誰もいない。

はて、気のせいだろうかと思いながら《索敵》スキルを発動すると――いた。

 

「あぁー、やっぱ先に飯食っていこう」

 

嘘の独り言を言いながら来た道を戻り、じわじわ追跡者に近づいていく。しかし俺から見えないように多分焦って後退していってる――眼で見えないから索敵スキルでの推測だが――感じがする。

いっそ走って取っ捕まえようか……とも考えたが、相手が何者か……少なくとも、レッドかそうじゃないかを見極める必要があると思い、さっきハニトー食ったばかりの胃――正確には味覚野――に、食べ物(のデータ)を詰め込む。

食後の腹ごなしを装い、トップスピードで街中を駆け、目的地を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、撒くことはできなかった。まぁトップスピードと言っても、相手がどれくらいの速さまで着いてこれるかを確認して、そこからレベルを推測するのが目的だから、本当の全速力って訳じゃないが……

ちなみにこの追跡者、俺の全速力の70〜80%まで追随してきたから相当な手練れ……仮に筋力寄りビルドなら攻略組にも匹敵するレベルだ。敏捷寄りでも、まぁ七十レベくらいは行くだろう。

さて、油断しなければ俺一人でも十分倒せると判明したし、そろそろ詰問するか。

再び疾走。相手も慌てたように追いかけるが、同時に隠蔽(ハイド)した俺を見失った。俺は木々で身を隠しながら大きく左に回り、追跡者の後ろに回り込む。

そのまま身を隠しながら相手を目視していると、あることに気づく。

……なんだ、あいつ。スカートなんか穿きやがって。

SAOでは、男性プレイヤーが女性プレイヤーの服を着ることはできない。つまり、あの追尾者は女性、ということになる。

鞘から音もなく刃を抜き去り、まるで暗殺者(アサシン)か忍者のように忍び足(スニーキング)スキルを使い、無音で忍び寄る。

絵面は変質者が少女に襲いかかるそれだが、先に不敬なことをしたのはあっちだ。

右肩の上に剣を突きだし、動いたら斬ると牽制する。

 

「あー、動くな。手を挙げろ。そして目的を言え。尾けてたな」

 

後ろから見る限り、紙の色は赤。長さは背中くらいまであり、頭防具だろうか……カチューシャみたいな物を着けている。

俺の命令通りに手を挙げたまま回転し、前方を露にする。

まず眼には言ったのは、黒と白が主色のメイド服……みたいな防具。顔は驚きからか恐怖からか少し涙ぐんでいるので罪悪感を感じないでもないが、コイツの目的が判るまで気は抜かない。

前髪は多少長さの違いはあるもののおかっぱぽい。瞳は小さく黄色。全体の顔立ちを総合した言葉を一言で表現するなら、可愛らしいとか綺麗ではなく整っている、が適切な感じがする。

 

「……んじゃあ、まずなんで俺を尾けていたか……説明をしてもらおうか」

 

「え、えーとぉ……」

 

困惑した表情を浮かべたので、今は相手の左肩の上にある剣をカチャッと鳴らして威嚇する。

すると少女はまたも跳ねるようにビクッ! としながら体を震わせ、たどたどしく説明を開始した。

 

「ま、まず確認したいんだけど……エイト君もエクストラスキル、取りに行くんだよね?」

 

「おい、待て。何で俺の名前を知ってる?」

 

この少女と俺は今までで全く面識がない、それは断定できる。

 

「えッ、あ、そっか。そこから説明しないといけないんだね……」

 

いや独りで納得してないで、僕にも説明してくれません? 状況全く呑み込めないんですけど。

 

「はぁ……じゃあこれだけは取り敢えず訊いておく。お前はレッドか? 誰かに依頼されて俺を殺しに来たのか?」

 

「いやいや、違うよ! それは絶対にないよ!」

 

……なんか警戒するのもアホらしくなってきた。取り敢えずコイツが嘘を吐いていないのは、人間観察で培った経験で判る。コイツも剣をずっと突き付けられていたら話しにくいだろう。

一応剣を降ろすが、まだ抜き身のままにしておく。それから大股で三歩くらい後ろに下がり、説明をするように視線で促した。

その行動に安堵と歓喜の表情をし、また唇を上下に動かし始めた。

 

「えっと――――」


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