妹がVTuber……らしい。それどころじゃない 作:ズッカーニ
なんでか上手くいかないですね…原因なんなんでしょうか
あれよあれよと引きずられ、結局家まで連れてこられてしまった。
ったく。いいよな、ひとり暮らしの民は。
こういうとこの自由度マジで羨ましい。
親御さん気にする必要ないってことは、逆に言えば彼女も連れ込み放題ってことだからな。
本当に、羨ましいったらありゃしない。
「いなきゃなんも変わらん」
…ごめんて。
そんな虚無顔するなんて思わんやん…
「どうせ出会いないって知ってて言っただろお前」
「はい」
「こんにゃろッ!」
「ギニャァ!!」
こいつ本気で殴りやがった!
たんこぶできたらどうすんだよ!?
「男心傷つけやがったんだ、残当じゃ残当!」
「んなわけあるか!」
「あァ!?やんのかコラ!」
「上等だコラ!」
醜い争いをすること、約4分。
「んで、まだ考えは変わらないのか?」
「…当たり前だろ」
何度も言わせるなよ。俺に配信は無理なんだって。
「アーカイブも?」
「だってそれも長いんだろ?」
「基本的にはな。ま、そこは配信者によってマチマチってやつ」
「じゃあ無理じゃん」
「諦めなんなよ」
いや無理無理。
断言するぞ、絶対途中で飽きて脱落する。その光景もう目に見えてるから。
「そんなに配信見たくねぇのかよ…なんか無理やり理由付けしてねぇ?」
「逆に意味あるか?それ」
「おっ?そういうってことは、別に特に深い理由はないってことだよな?」
飽きるって言ってんだろ聞けよ。
「はいはいわかったわかった。食わず嫌いしてねぇでまず見ろ!」
マウスカチカチして、そのミィアって人の動画をクリック。
白い髪色に、同色の猫耳が付いた少女のイラストがサムネに表示されている。
初配信って書いてるし、これ見させられるんだろうな。
【初配信ฅ( ̳• ·̫ • ̳ฅ)にゃ】2期生トップバッターやることになりました【ネクステップ/猫亦ミィア】
@ Miiia CHᗢᘏᓗ 高評価3.2万 件 94万回視聴 3年前…その他
い う へ共有 る保存 くクリップ
チャンネル登録者数 86万人
「いやなんだこのタイトル」
「普通だって」
「これでか?」
「だってVTuberだぜ?もっとぶっ飛んだのだって色々あんだし、こんなのまだ序の口よ」
えぇ…(困惑)本当にそうかぁ…?
いや、でも…うーん。言われてみれば、なんか…そんな気がしてきた。
「もういいからはよ見ろ。はよ」
「見るから勝手に再生すな。ったく」
大人しく画面に目を向けてみれば、数分の待機時間の後、
『こんばんは。多分みんなはじめまして。わたし、ミィアっていうの』
眠たげなウィスパーボイスがスピーカーから響いてくる。
「初配信って書いてあんだし多分もくそもなくね?」
「そういうネタだっての。わかれよ」
「見てない勢に求めんな」
「なら見ろ」
バッサリ切られた。
『この配信に来てるってことは、もうみんなわかってると思うけど。ミィアはネクステップの2期生』
蒼い瞳のセーラー猫娘が、眠たげな声にマッチした絶妙な表情でユラユラ揺れている。
てか、これもタイトルに書いてると思うんだが。
「ネタ?」
「ネタ」
「…奥深いな」
「どこがだよ」
「いてっ」
叩かれた。
『今回は初配信。あいさつもそこそこに、色々決めたいと思うの』
あっ、しっぽ動いた。意外と凝ってるんたな。
「こっからタグとか決めていくんだよ」
「タグ?あぁ、配信のか」
一瞬考え、納得した。
一応これでもスマホ世代の現代っ子。
暇な時とかのネットサーフィンで、そういった情報もある程度仕入れてある。興味はないけど。
…けど、こいつにとっては意外だったみたいで。
「おま、知ってんのかよ」
「VTuber、たまにネットニュースで出てきたりするからな」
中身旧時代の人間としては、たかがイラストにあんな世界的に人気になる要素なんてあるんか?と思わざるを得ない。
俺としちゃあ、どうしても某ブンブンハローがチラつくんだが…でもこの人もこの人で登録者数86万人なんだよなぁ。
こいつの言うことが真実なら、1期生って人たちはもっと数稼いでるらしいし。
「てっきり欠片も興味ないのかと」
「最初は普通に気になってたからな。あっ無理って悟って離脱したけど」
動画なら、絶対
配信は良くも悪くもライブ。そうじゃないから困る。
「だから見るんだよ」
「……」
マウスポチーっ。
『みぃとるず…えっと?本当に、これでいいの…?』
みぃとるず草。
配信主も見るからに困惑されてて倍草。
「どっからきたよみぃとるず」
「コメントだな。ちょち貸してみな」
「お、おう」
キャットタワー
ミートゥー
ねこつむぎ
みぃとるず。ちなみにビートルズ好きです(隙自語り)
見守りカフェ
―規制済み―
ミィテル
隙あらば自語りする…俺でなきゃ見逃しちゃうね!
みぃとるず好きかも
「ほらこれ」
マジやん。
「由来ビートルズかよ…えっ、これいいのか?怒られん???」
「そういう話は聞いてないな」
「いいのか…」
「アーカイブだし、本当にダメなのはちゃんと削除されてるよ」
じゃああの規制済みってのはなんなんだ?
「ネタ」
…そすか。
「もちろん配信だからってアウトな言葉流しちゃダメだからな。即刻モデレーターに消されて通報かけられるぞ」
「誰がやるかよ」
ネット的に死ぬだろそんなん。
嫌だよ干されるの。
『じゃあ、決定で。みぃとるずのみんな、よろしく』
「こっから、猫亦ミィアとみぃとるずの伝説が始まったってわけよ」
「へぇ…」
感慨深そうにしてるけど…ごめんな、全然わからんのだ。
「なんでだよ」
そんな感じで、ことある事に挟まってくる横からの解説を聞きながら、初配信の過去動画を眺めていたんだが。
なんというか、まぁ?見てて苦ではなかったなと思う。
途中で実は…って形で配信初心者だって判明したのも驚いたしな。
「だよな。俺も絶対
前世。
たしか、現在のVTuberとして活動する前に、中の人がが別名義で行っていた過去の配信活動やその姿のこと…だったか。
「そうそう!覚えてんじゃん」
「やけに配信に慣れてる新人だと疑われやすいって言ってたな」
「まさしくその通り。ミィアちゃんも最後の最後にボロ出すまでは、それこそ典型的な前世持ちの挙動してたからな。めちゃめちゃ怪しまれてたんだよ」
あー、あれか。
『あ、あれ?おかしいな、閉じれない…な、なんで?』
「あれ、結局なんだったんだ?」
「ちょーザックリ言うなら、配信に使ってる外部ツールとマシュマロの干渉」
「外部ツール?」
勝手にソフトの問題だと思ってたんだが。まさかのハード側?
「そりゃ俺も詳しいことはわからんけどさ。マシュマロと配信ソフトが干渉し合うことは基本ありえないってことだけは知ってる」
でも、それだって基本ないってだけで、確実にありえないって訳じゃないんだろ?
「そうだな。けどな、経験ある配信者だと、まず真っ先に疑うのはツールが定説だ」
「でも猫亦ミィアは配信ソフトばっかり触ってたと。…オマケにめっちゃお粗末な手付きで」
何回も同じこと繰り返してたし、右と左のクリックも間違えまくってたよな。パソコン弱いんかね。
「今はそうでもないけどな」
「ってことは前は弱かったんか」
それでもたった3年で上達したってことだろ?えぐいな。
「配信者ってそんなに上達するもんなの?」
「知らんよ。俺配信やってねぇし」
「それもそうか…」
『は、はい…あっ、ありました!』
「この時のミィアちゃん、クッソ焦ってたしな。猛練習の成果なんじゃ、って説は結構ある」
「まぁ、二度とこんな経験はしたくないとは思うわな」
マネージャーと通話を繋ぎ、指示を貰いながらひとつずつ着実にこなしていく猫亦ミィア。
多分、内心ずっと気が気じゃなかったんじゃね?と思う。
たかが新人の初配信に、いきなり万規模の視聴者が付くなんて想像もしなかったろうし。
正直俺も驚いた。
VTuberそんな人気なんだなって。
猫亦ミィアも、1期生に憧れて自分から応募したって言ってたしな。
そりゃ自分なりにできるだけの準備はしたんだろうし、途中まではその努力も報われまくってた。…けど、最後の最後にアレが待ってたと。
俺がもしその立場だったら震えて布団に籠もるね。万人の前とか考えたくもない。
だから、この人が塞ぎ込まずに成長できたのは素直にすごいなぁって思った。手痛くなるまで拍手できるわ。
……そういえば、真白もYooTubeでなんかやってるんだよな。
また今度でもいいから、ちょっと聞いてみようかね。気持ちとか。
今度こそは…おねげぇしますよぉ〜