妹がVTuber……らしい。それどころじゃない 作:ズッカーニ
不可思議狩りを終え、いつも通りに窓から帰宅した俺。
今日は場所的にスーパー銭湯が近かったこともあって、ひとっぷろ浴びるついでにちょこちょこ遊んで寛いできた。
命懸けで戦うと考えるには少ないが、一応お金も貰っていることだし、こうして軽く遊ぶ分には問題ない。
普通の職場なら賃上げ要求とかする人も出てくるんだろうが、十二支同盟は事情が特殊すぎてそうもいかない。
というか、俺たちに払えるだけの現代通貨を所持しているだけで驚きである。
酉のケイに至ってはスマホまで持ってるからな。
てか、あれ通信料とかどうしてんのかね?めっちゃ使いまくってるの見るにちゃんと払ってるのは確定みたいだし。
他にはダットとムトン。あの二人も銀座行ったりして楽しんでると聞く。
…まぁ如何なる手段かは知らんけど、非合法な手段ではないことだけは確定だろう。
仮に、十二支同盟が
周りには言いふらしてないとはいえ、正義の組織を自称するくらいだから、んな事されてたら困るってもんよ。
俺とて一応は十二支同盟の一員。身内がどえらいことやって、崩壊しましたなんてなろうものなら終わりである。
不可思議狩りなんて他にできるわけないだろ!代わり効かないんだよ!
何度も戦ってるからこそわかる。あれただの人には無理だわ。
武器あればいける?いやいや警察とか軍隊でもキツイよあれは。運動性が違いすぎる。
加えて、華武利様が仰ってた通り、進化によってさらに強くなっている不可思議もポツポツ出始めているときた。
舐めてかかったらマジで死ぬ。
新人とはいえ、仮面ライダーの力を得た俺でさえそれなんだ。純人間が相手するには無理ゲーがすぎる。
…って、せっかく帰ってきたんだから考えるのやめよ……休日に仕事のこと考えてるみたいで悲しくなってきた。
気分転換にと、私物の小型冷蔵庫をパカりと開けてみたものの、お目当てのジュースは見当たらず。
そういえば、この前飲みきってから補充してなかったか。
あーあ、こうなるならコーヒー牛乳でも飲んだくればよかった…
もういいか、リビングでお茶でも飲んでとっとと寝よ。
ガックリと肩を下ろしながら部屋を出る。
2階の奥の方に自室がある関係上、階段までがちょっと遠く感じる。
普段から不可思議追っかけて、キレながらひたすら走らされまくってる身からすれば、微々たる差ではあるが。
…ん?
「真白、まだ起きてんのか」
今何時だと思ってんだ?もう寝る時間だろ。
自身に思いっきりブーメラン突き刺しながら、真白の行動を非難する俺。
おま言うって返されそうだが、こっちは仕事なんだね。理解されんけど。
……あかんやっぱり悲しくなってきた。
じんわり湧いてきた悲しみにしょんぼりしつつ、軽く拳を作ってノックを3回。
「おい、起きてるか?」
返事は……ない。
しゃーない、風邪ひかれちゃまずいし、起こしてやるとす――『起きてる』
って起きてんのかーい。
「起きてたか。まぁいい、俺も寝るからお前もとっとと寝ろよ?」
『わかった。おやすみ』
「おう、おやすみ」
会話終了。
顔も出さずになんて悲しい…なんちゃって。
普段割とべったりなところがあるから分かりにくいが、真白も真白で高校生。
思春期やらなんやらでそういう時もあるってことだろう。
さっ、お茶飲んではよ体休めよ。
ただでさえ疲れが溜まってんだからとっとと寝たいんだ。
階段降りて、リビング入って、冷蔵庫から麦茶入ったピッチャー取り出して、コップに注いでイッキ飲み。
ぷはっー!やっぱ冷たい飲み物が喉を通る感触ってのは気持ちがいいもんだなぁ!
さっ、いい気分になったし、寝るぞぉ〜
既に就寝中の両親を起こさぬよう、抜き足差し足忍び足で階段を登って、自分の部屋へと戻る。
って真白まだ起きてんのか。
ドアの隙間から明かりが漏れてる。
寝るって言ってたんだから、せめて豆球にするとかしたらいいと思うんだがね。
あと確かデスクライトも持ってただろ。最近真白の部屋入ってないからまだ残ってんか知らんけど。
…まぁいいか。そのうち寝るだろ。
俺はもう眠いんだ。寝させてもらおう。
はいおやすみーおはよう!
あぁァ…体いてぇ。
起きたあとすぐってなんでこんな体痛いんかね。寝相悪いんだろうね。
ちゃちゃっと着替えて、洗面所でうがいして顔も洗ってヒゲも剃る。
「おはよう。ん?真白はまだ寝てるのか」
「おはよう。そうね。昨日遅かったみたいだから」
「あー、そういや夜中も電気ついてたわ」
あんだけ夜更かししてたら流石に起きれんわな。
「学校大丈夫なの?」
「土曜よ、今日」
「あっ、そうか」
俺の頭も寝ぼけてるみたいです。
「そういうあんたこそ、勉強大丈夫なの?」
「平均は取れてるから心配はいらんよ」
人生二週目のくせして平均しか取れないのはどうかと思う。
でもむりなのぉ!!頭が、悪くってぇ…!
あと不可思議倒すので忙しいのもあって…*1
心の中の誰かさんへと言い訳をする俺。…んなもん知らねぇわ馬鹿野郎と激しく振動するスマホ。
ちぇっ、またかよ。
「おっと、いけね。出ねぇと」
「また手伝い?あんたも頑張るわね」
「一応金貰ってるからな。少ないけど」
休日くらいは大人しく休ませて欲しい、っていうのが本音。ガチガチのゴリゴリ本音。マジで休みたい。
でも後悔ってのは後でいくらでもできるとはいえ、してる時点で遅いからな。行かせてもらいますよっと。
チャリ漕いでギコギコ走り、ある程度家から離れたところで電話をかける。
『あっ、リド!聞こえているか!?』
「聞こえてますよ。ケイ」
スピーカーから響いてきたのは、まだ若さを感じる少年の声。
若くして任命された少年戦士だってことだし、多分歳もそんな変わらんくらいなんだろうな。…相手大正の人だけど。
「どの方角です?電話してきたってことは、近いのでしょう?」
『”ぐぅぐるまぁっぷ"とやらの情報によれば、そこから500メートル弱のところにいるらしい。場所を送る!』
1度スマホを耳から離し、画面を切り替えてみれば、ある地点にピンが刺され、目的地に設定されていた。
「流石です。教えた機能もう使いこなしてますね。成長が早い」
『それほどでもない!教えてくれたおかげだよ、ありがとう!』
あら素直にお礼言えるいい子。
なんでか他の十二支から怒られまくってるけど、俺としてだいぶ好感持ってんのよね。この人。
「それじゃあ、俺は現場に向かいます」
『うん!気をつけて!』
「えぇ」
通話を切り、運転に集中。
そして、辿り着いてみた現場では…
「はなっ…せぇ…」
「Uuuuuu」
男性の首元を掴み、ズルズルと引き摺る不可思議。
牙か。なんか最近多いな。
ってんなことはどうでもいい。まずはあの人だ!
「オラッ!」
「Gyy!?」
「うわぁっ!?」
待ち伏せからの奇襲!
蹴り技を目にあたる感覚器官目掛けてぶちかませば、不可思議はたちまち悲鳴をあげて男性を掴む手を離した。
解放成功!
「早く逃げて!」
「あ、ありがとうございますっ!」
転びながら逃げ出していく男性。
腰抜けちゃ上手く走れないか。
まぁでも死ぬよりはマシだろ。逃げる道中の怪我までは面倒見きれん。
「こっちどうにかしなきゃ、だからな」
「Grurururururrrrr…!」
おーおー怒ってら。
…でーも、俺も俺でめぇっちゃ怒ってんですよねぇ…!
せっかくの休日を、許さねぇッ!!
カバンから取り出したドライバーを腰に装着。
赤い制御装置、ハンマーボーンバックルをドライバーに装着する。
ドライバーの仕様上、これらの制御バックルがなければ、俺たちは仮面ライダーに変身できない。
ドライバーの形状とか見るに、多分ドライバー単体での変身も可能ではあるはずなんだが…試す勇気はないですねぇ。
気を取り直して、ライドエグズを懐から取り出し、一言。
あとは卵をドライバーに装填して、ハンマーで叩き割る…ッ!
変身ポーズ?…ないよ!思いつかんもん!
割られた卵から、猫の絵柄が出現。
同時に、溢れた光が俺の体をも包み込む程の巨大な卵を形成、絵柄の猫が瞳を輝かせながら卵に衝突する。
砕けた殻が俺の体に纏わりついていき…角張ったデザインの鎧が形成される。
最後にトレードマークのヒゲがピンと伸びて、変身完了。鐘の音がいいアクセントになってるっしょ?
「仮面ライダーリド、見参」
お前はここで、ブチ転がす―――!
成長枠さを存分に感じる達臣氏、これからが楽しみですね!