10秒で泣ける天才子役は2周目の人生では泣かない   作:M1tarash1

15 / 15
14.狂信者の残影

カミキヒカルの逮捕という衝撃的なニュースは、芸能界だけでなく日本中を震撼させた。

だが、世間がどれだけ騒ごうとも、私とアクアの間の空気は、驚くほど穏やかで、そして確実に『特別』なものへと変わり始めていた。すべてに筋を通してB小町を引退し、役者一本で生きていくと決めた私。

そんな私を「一生をかけて支える」と誓い、ついに恋人として隣に並ぶことになったアクア。

私たちは、ようやく手に入れた「ただの男女」としての幸せな時間を噛み締めていた。

だが――1周目のすべての悲劇を知っている私の脳裏には、まだ消えていない『最後の火種』が残っていた。

 

「……新野冬子」

 

苺プロの事務所のソファーで、私は手元の資料を見つめながら呟いた。

カミキヒカルが手を下した一連の事件の裏には、いつもあの女の影があった。

旧B小町のメンバーであり、星野アイへの歪んだ羨望と憎悪を抱え、カミキの熱狂的な信者として動いていた狂信者。カミキが冷たい檻の中にぶち込まれた今、あの女が大人しく引き下がるとは到底思えなかった。

「やっぱり、お前もそこを懸念していたか、有馬」

資料を覗き込むようにして、アクアが私の隣に腰を下ろした。その表情は、かつての復讐鬼のそれではない。

大切なものを守るための、冷徹で、けれど確かな光を宿した『役者』の目だ。

「俺の調べでも、カミキの神木プロダクションの残務処理の裏で、新野冬子が不審な動きを見せている。カミキをハメた『裏切り者』を探しているらしい。……ターゲットは、警察に極秘資料を流せる立場にあった、芸能界の人脈を持つ人間だ」

「つまり、私ね」

私はフッと自嘲気味に笑った。怖くはなかった。

私が10年間泥をすすって集めたカードだ。

狂信者一人の悪あがきに、今更遅れを取るつもりはない。

何より、今の私の隣には、世界で一番頼もしい男がいる。

「新野冬子はアイの過去の亡霊だ。カミキが逮捕されて、あいつの信仰は完全に狂いかけてる。何をしてくるか分からない」

アクアは私の手をしっかりと握りしめた。

「だけど、今度は一人で背負い込むなよ。お前が俺を救ってくれたみたいに、今度は俺が、お前の盾になる。……これから先、お前と結婚して、本当の家族になるその日まで、俺はお前を何があっても守り抜く」

「っ……け、結婚だなんて、気が早すぎるわよバカ!」

付き合いたての初々しさのなかで、突然飛び出した「結婚」という言葉に、私は10秒で顔を真っ赤にした。

だけど、アクアの目はどこまでも本気だった。

カミキの公判、そしてニノとの15年目の決着。

私たちは手を取り合い、本当の『家族』という最高のゴールへ向かって、新たな一歩を踏み出す。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

禪院の式神姫(作者:いかいしんしょうまこーら)(原作:呪術廻戦)

禪院家分家に生まれた十種影法術使いの話。▼※露骨にアンチ・ヘイトな描写があるかもしれません。▼※低評価つける人に限って自分で創作も投稿していない人なので、その評価は参考にもクソにもならない汚れです。書く気が失せるだけの邪魔者です。勝手に読んで低評価つけるくらいなら、読まずに失せて一人で飯食ってシコってテクノブレイクして寝てください。せめて悪いところを感想で書…


総合評価:419/評価:6.37/連載:17話/更新日時:2026年08月27日(木) 00:00 小説情報

一番星は消えない(作者:ディバル)(原作:推しの子)

▼表示絵▼【挿絵表示】▼児童養護施設で暮らす少年・天城彼方は、推しの星野アイと出会い、この世界が【推しの子】の物語だと知る。彼女に待つ残酷な未来を変えるため、彼は“運命”に抗う………一番星は、消えない。▼アニメ勢の方はネタバレ有りなので注意。▼新作▼「あかねちゃん………煙草買ってきてくれない?」▼:https://syosetu.org/novel/4132…


総合評価:4089/評価:8.41/連載:114話/更新日時:2026年09月14日(月) 19:20 小説情報

【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜(作者:ペンギンって可愛いですよね)(原作:推しの子)

表紙イラスト↓▼【挿絵表示】▼世界的な名声を得た天才外科医は、数え切れない命を救った末、過労によりその生涯を終えた。▼――しかし、目を覚ますと彼は記憶を持ったまま、日本で赤ん坊として転生していた。▼二度目の人生でも迷うことなく外科医の道を選び、再び天才と呼ばれるまでに成長した彼は、都内の大学病院へ勤務することになる。▼病院の近くへ引っ越し、新たな生活を始めた…


総合評価:5372/評価:5.8/連載:61話/更新日時:2026年09月20日(日) 21:00 小説情報

鬼滅の刃異伝〜鋼の心、血の楽園〜 もしも明治時代に最強の「鳴柱」が存在し、無惨を懐柔して人間を家畜に変える「管理社会」を築いていたら(作者:斉宮 柴野)(原作:鬼滅の刃)

「綺麗だ……私と同じくらいに」▼吉原遊廓に売られてきた美少女・颯(はやて)が出会ったのは、美しくも残酷な鬼・堕姫だった。▼彼女は恐れない。むしろその圧倒的な「美」と「力」に魅入られ、自ら鬼となる道を選ぶ。▼源氏名は「風音」▼無惨の呪いも、日の光の理(ことわり)さえも、彼女の天才的な頭脳と、常軌を逸したポジティブ思考の前では意味を成さない。▼昼は陽の下を歩くあ…


総合評価:588/評価:8.17/連載:49話/更新日時:2026年08月14日(金) 14:40 小説情報

有馬かなのホラー怪奇譚(作者:ちいさな魔女)(原作:推しの子)

階段で転んで頭を打ち、前世の記憶を思い出した有馬かな。自らの未来を変える為に、ホラーユーチューバーへの道を歩み始める。


総合評価:248/評価:6.82/連載:3話/更新日時:2026年08月22日(土) 08:11 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>