10秒で泣ける天才子役は2周目の人生では泣かない   作:M1tarash1

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色々すっ飛ばしてます


03.見えない手

陽東高校に入学し、私は1周目とまったく同じルートを辿って、ルビーから苺プロダクションのアイドル枠へと勧誘された。もちろん、断る理由なんてない。

「私、やるわ。新生アイドルグループ、引き受けてあげる!」

私の快諾に、ルビーは目をキラキラと輝かせて喜んだ。

その純粋無垢な笑顔を見つめながら、私は胸の内で、静かに黒い決意を固めていた。

(ルビー。あんたは、そのままでいなさい。復讐だの、目の黒い星だの、そんなものは全部私がこの手で叩き潰してあげるから)

1周目のルビーは、ある事件をきっかけに「純白のアイドル」から「復讐に狂った黒い星」へと変貌してしまった。

その引き金となったのが、のちの宮崎でのミュージックビデオ撮影――そこでルビーが見つけてしまう、雨宮ゴローの遺体だ。

それを発見したことで、ルビーの精神は崩壊し、復讐の鬼と化してしまった。

(あんな凄惨なもの、絶対にルビーに見せるわけにいかない。……なら、答えは一つよ。あいつらが宮崎に行く前に、私が先回りして遺体を『片付ける』)

アイドルとしてのレッスンに励む傍ら、私は10年間で築き上げた「大人のカード」を一枚、静かに切ることにした。

相手は、子役時代にサスペンスドラマの監修で知り合い、今ではすっかり偉くなった宮崎県警のベテラン刑事。

私の演技を「本物の役者だ」と昔から高く評価してくれて、今でもたまに連絡をくれる、数少ない信頼できる大人だ。私は公衆電話から、ボイスチェンジャーを使って彼に一本のタレコミを入れた。

宮崎の山奥、あの猟奇的な事件の容疑者が遺体を遺棄したとされる、正確な座標。

『……もしもし。宮崎の山中に、数年前から行方不明になっている医師の遺体が遺棄されています。場所は――』

一般人の私には、死体遺棄の証拠を自分で掘り返す力なんてない。

けれど、「警察」という国家権力を、未来の知識を使って合法的に動かすことならできる。

数日後。私のスマホに、宮崎のニュースの速報が入った。

【宮崎の山中にて、数年前から行方不明だった医師・雨宮吾郎さんの遺体を発見。警察は事件性を視野に――】

「よし……!」

私は楽屋の片隅で、小さくガッツポーズをした。

これでルビーが死体を発見する最悪の未来は消滅した。

ゴローは「突然見つかった過去の事件」として、警察の手できちんと弔われることになる。

「ねえ、ロリ先輩! ニュース見た!? お兄ちゃんのスマホに、なんか宮崎の警察から連絡が来たらしくて……お兄ちゃん、今すごい変な顔して部屋にこもってるの!」

楽屋に飛び込んできたルビーが、不思議そうにそんなことを言った。

当然だ。

アクアにしてみれば、前世の遺体が、なぜか突然、ただの「警察の捜索」によってあっけなく発見されたのだから。

アクアの計算は、私の見えない手によって、すでに大きく狂い始めている。

(ざまあみろ、星野アクア。アンタが一人で世界の闇と戦ってると思ったら大間違いよ)

私は手鏡を覗き込み、リップを塗り直す。

鏡の中の有馬かなは、1周目の時よりも、ずっと不敵で、ずっと頼もしい顔をしていた。

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