10秒で泣ける天才子役は2周目の人生では泣かない   作:M1tarash1

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09.チェックメイトの告発

アクアの部屋でのあの夜から、世界は目まぐるしいスピードで変わり始めた。

私の告白を受け入れたアクアは、それまで一人で背負い込んでいた「復讐」の義務から、ようやく解放されたようだった。あいつの瞳から昏い毒が抜け、年相応の、けれど少し頼もしい少年の目が戻ってきたのを見て、私は心の底から安堵した。だけど、これで終わりじゃない。

真の黒幕――カミキヒカルに、これまでのすべての罪の代償を支払わせる時間が来た。

「有馬。これが、俺が調べたカミキのアリバイの隙間と、被害者たちの共通点だ」

「ありがと。これで、私が10年かけて集めた警察の内部資料と『完全に繋がった』わ」

苺プロの事務所のデスクで、私とアクアは並んで資料を広げていた。1周目のアクアは、映画『15年の嘘』を使って世間に黒幕の罪を告発し、カミキを追い詰める手段を選んだ。

でも、それはあまりにも回りくどく、多くの人を傷つけ、何よりアクア自身の命を奪う結果になった。

2周目の私たちは違う。アクアの持つ天才的な分析力と、私が10年間で築き上げた

「業界の人脈」が手を組んだのだ。1周目の未来で明かされた、カミキが手を下した凄惨な事件の数々。

その正確な日時、場所、そしてカミキの関与を示す隠蔽された物証。

それらを、私のツテを通じて宮崎県警のベテラン刑事、そして警視庁の捜査一課へと、匿名ではなく「信頼できる芸能関係者からの極秘情報」として正式に提出した。

一般人の私が10年間、生意気な態度を捨て、泥をすすりながら大人たちに媚を売って築いてきた『信用』。

そのすべてが、この瞬間のためにあった。

 

そして、その日は突然訪れた。劇団ララライの元在籍者であり、現在は神木プロダクションの代表を務めるカミキヒカルが、複数の殺人容疑、および死体遺棄の容疑で逮捕されたのだ。

「――終わった、な」

テレビのニュース速報で、手錠をかけられ、フードで顔を隠しながら警察車両に押し込まれるカミキの姿を見つめながら、アクアが静かに呟いた。その声は、震えていた。

10数年間、あいつの心を縛り付け、狂わせ続けていた「復讐」という名の呪いが、今、完全に解け去った瞬間だった。「言ったでしょ。あんたの手を汚す必要なんてないって」

私はニュースの流れるテレビをリモコンで消し、アクアを振り返った。

「カミキはもう二度と表舞台には戻れない。あいつはこれから死ぬまで、自分が奪ってきた命の重さに怯えながら、冷たい檻の中で過ごすのよ。……これで、あんたの勝ち。ううん、私たちの勝ちね」

アクアはゆっくりと立ち上がり、私の前に歩み寄ってきた。そして、今度は1周目のあいつが決して見せなかった、本当に、本当に優しい笑顔で、私の頭を乱暴に撫で回した。

「……ああ。お前のおかげだ、有馬」

「ちょっと、髪が崩れるじゃない! バカ!」

私が顔を真っ赤にして怒ると、隣で一部始終を見ていたルビーとMEMちょが、くすくすと笑いながら私たちの背中に飛びついてきた。

「もうっ! お兄ちゃんもロリ先輩も、二人でコソコソ何の話してたのよー! ほら、それより大変なんだから! カミキのニュースの裏で、私たちのドーム公演のチケット、即日完売したんだよ!?」

ルビーがスマホを掲げて大騒ぎする。

そこには、かつて星野アイが立つはずだった、あの約束のステージの座席表が、満員御礼の赤色で埋め尽くされている画面が映っていた。

 

未来は変わった。

 

最悪の悲劇は、私たちの知略と執念によって、今度こそ最高のハッピーエンドへと書き換えられたのだ。「よし……行くわよ、B小町! 私たちの、最初の、そして最高のラストステージへ!」




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