騎士団を追放になったので、やる事を探します   作:fumiy

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第四話②『尋問(じんもん)』

「邪魔するぞ」

 

 捕まえた騎士を縄で引き、騎士団詰所(つめしょ)の扉を開き中に入る。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!貴方誰なんですか!」

 

 奥の部屋に向かおうとした所を、書類仕事をしていた女騎士に止められる。

 

「雇(やと)われた尋問官(じんもんかん)だ、部屋を借りるからよろしく」

 

「じ、尋問官……?」

 

「ラルバとブライトを連れてきてくれ」

 

「分かった」

 

 人呼びと女騎士の対応を騎士達に任せ、部屋の扉を開く。

 

「中に入りな」

 

「ぐっ……なにをしても無駄だ!」

 

「はいはい、無駄かはこれから試すから待ってろ」

 

 縛(しば)った騎士の背中を押して部屋に入らせる。

 

「おーいそこの」

 

 遠くに見えた数人の青い薄鎧(うすよろい)達に声を掛けると、目の前に走って来て綺麗な二列に並んだ。

 

「なんでありましょうか!」

 

 傷の少ない鎧と、喋り方からして新米騎士ってところだろう。

 

「今からこいつらを順番に取り調べをするから見張ってて欲しい、できるか?」

 

「了解しました!」

 

「よろしくな、あと家名ちらつかせて脅そうとしたらすぐに俺を呼べよ」

 

 魔封じの枷(かせ)を着けているとはいえ口は自由なままだ、俺がいる以上無駄な事だが一応は告げておく。

 

「はい!」

 

「良い返事だ」

 

 部屋の中に入り真ん中に置かれた机をどかし、椅子に騎士を座らせて目の前に立つ。

 

「じゃあ始めるか」

 

「……」

 

 騎士は苦い表情をしながらこっちを睨みつけてくるが、この状況になってもまだ反抗的な態度が取れるってのは、逆に感心してしまう。

 

「お前の名前と所属部隊は」

 

「……名前はウズベル、レイテ隊所属」

 

「じゃあ一個づつ聞いてくぞ、ちなみに全員に同じこと聞くから嘘は付かない方がいい」

 

 保身(ほしん)に走って証言(しょうげん)を騙(かた)ろうとも必ず矛盾(むじゅん)が出る、自身の今後を考えるなら正直に全てを話す方が賢明(けんめい)だ。

 

『リュート、僕だ』

 

 早速尋問(じんもん)に入ろうとした所、扉を叩く音の後にブライトの声が聞こえてきた。

 扉を開けると、ブライトと長髪の男が一緒に入って来た。

 

「速いな、近くに居たのか?」

 

「うん、相変わらず強引(ごういん)だね君は」

 

「まあな、そっちは何か掴(つか)めたか?」

 

「いくつかね」

 

 ブライトは若干の呆(あき)れ顔だが、いい加減慣れて欲しい。

 

「あんたがラルバ隊長、で良いんだよな?」

 

「そうだ、君は騎士アルテアだな、騎士団を排(はい)されたと聞いているが何故ここにいる」

 

 離れた街とはいえさすがに隊長格には知られているか、新米なら勢(いきお)いで誤魔化(ごまか)せるがどう返したもんか。

 

「彼には僕から協力を要請(ようせい)したんです」

 

「君が?」

 

「はい、彼の実力は信頼に値(あたい)します、それに今回の件(けん)ですと彼のような立場が居た方が安心できます」

 

「……そうか、私を呼び付けた事とそこの者が捕らえられているのは、近頃起きている事件と関連していると考えて良いんだな」

 

 意外と柔軟(じゅうなん)な人間なのか、第一印象からしてもっと貴族的な人間かと思ってたがそうでもないらしい。

 

「理解が早くて助かる、ここに染まってないアンタがいないと難航(なんこう)するだろうからな」

 

「ふん、世辞(せじ)はいい。さっさと始めろ」

 

 試しに持ち上げてみたが、軽く流す所からして煽(おだ)てて高い所に登る正確では無さそうだ。

 信頼には足りないが信用は出来る、まあこれはお互い様か。

 

「さてウズベル、騎士の行方不明にはお前達が関わってるってのは間違いないな」

 

「――っ」

 

 どうやら素直に喋ってはくれないらしい。

 剣の柄(つか)に手を掛ける。

 

「ま、待ってくれ!間違いない!」

 

「聞きたい事は山程(やまほど)あるんだ、いちいち詰(つ)まられちゃ困るな」

 

 後四人控(ひか)えてるってのに、毎回これじゃ先が思いやられるな。

 

「行方不明になった騎士達はお前等が殺して証拠隠滅(しょうこいんめつ)の為に死の水、いやスライムの餌(えさ)にした、間違いないな」

 

「間違い……ない」

 

「下衆(げす)が……!」

 

 騎士の証言にラルバが言葉を吐き捨てる。

 

「なんで殺した?やましい事でも嗅(か)ぎまわられたか?」

 

「警告はした!何度もだ!俺だって殺したく無かったんだ!」

 

 少なくともこいつらが自主的にやったのではなく、誰かに指示されたって事なんだろう。

 

「んな事は今聞いて無いんだよ。ブライト、そっちの調査はどうだった」

 

「ああ、うん。まず騎士団内の行方不明(ゆくえふめい)についてだけど、どうやら数年前から起きているようなんだ」

 

 とすると、長い間情報を秘匿(ひとく)できる力がありそうだ。

 単純な武力、権力、資金力はかなりの物があると考えていいだろう。

 

「そして行方不明の捜索(そうさく)の予算申請がされてるんだ、騎士トレントも含(ふく)めてね」

 

「今も続いてるんだよな」

 

「……そうだね」

 

 既(すで)に殺された騎士の捜索(そうさく)が、白々(しらじら)しくも現在まで続けられている。

 

「行方不明者のご家族についても色々と調べてみたけど。通常の資金援助に重(かさ)ねて、捜索費(そうさくひ)の支援金も計上(けいじょう)されていたよ」

 

 そして、無事を願って支払われた金は何か別の事に使われているという訳だ。なんとも不愉快(ふゆかい)な話だ。

 

「卑劣(ひれつ)な……」

 

「ウズベル、お前らに指示を出してるのは誰だ?」

 

「そ、それは言えない!これだけは無理だ!」

 

 隊長のラルバ、名家(めいけ)のブライトが居ても話せない相手と言うことか。

 もしくは別の理由があるのか。

 

「殺した理由はなんだ」

 

「それも言えない……!」

 

 溜息しか出ないな、これ以上の話は意味が無さそうだ。

 恐らく他の面子も情報を吐きはしないだろう。

 

「ウズベル、俺の目を見ろ」

 

 ある魔術を無詠唱で起動すると、足元から湧き出た純粋な黒が広がっていき部屋一面を呑み込んでいく。

 

「な、なんだこれ!」

 

「騎士アルテア!君は一体何をしている!」

 

「ラルバ隊長、彼は無意味な行動をする相手ではありません」

 

 ウズベルの足から闇が這(は)い上がり、その身体を包んでいく。

 

「嫌だああああ!死にたくない!」

 

「殺しはしねえから安心しろ」

 

 とはいえ喧(やかま)しいので闇で口元を多い、声が響(ひび)かないようにしておく。

 ウズベルの頭を掴みこちらに向かせ目線を合わせる。

 

「お前らに指示を出したのは騎士団長、それとも副団長か?」

 

『————!』

 

 ウズベルの心臓付近から魔力の鼓動を感知した。

 

「お前契約したんだな、そいつと」

 

 ウズベルの目が大きく見開き、表情が驚愕(きょうがく)に染まる。

 

「契約だと……?人を縛(しば)り付けるような魔術は騎士団内では禁じられているはずだ」

 

「スライムに人食わすような奴らは従わないだろ、ブライト魔力貸せ」

 

「もちろん」

 

 ブライトが手の平を俺の背中に当てる。

 

「魔術契約の内容は情報の秘匿(ひとく)に行動の制限、反故(ほご)の代償(だいしょう)は命って所か」

 

「待て、何をしようとしている」

 

「こいつに仕掛けられた魔術を破壊する、集中するから後はブライトに聞いてくれ」

 

 精神を集中し身体中の魔力を練り上げながら、ブライトの手から送り込まれてくる魔力を変換し自分の物に合わせていく。

 

『魔術を破壊だと?そんなことをしてこの者の身に何かがあれば、情報が途絶(とだ)えてしまうぞ』

 

『そんな事は起こり得ませんよ、彼は僕が知る中でも一番の魔術精度を持っていますから』

 

 ウズベルの体内に闇の魔力を浸透(しんとう)させ、心臓まで到達させる。

 

「案の定防護術仕掛けてやがんな、『追跡』『感知』『遠隔操作』『加熱』か」

 

 対象の位置を把握(はあく)し発言を感知、それに反応して心臓を焼き焦がし口を封じるって訳か。

 

 しかも、いざとなったら遠くからでも魔術を起動して殺すことも出来ると。

 さらには魔法陣を見つけられてもいいように、触れた相手に攻撃をする術式を刻む徹底(てってい)ぶりだ。

 

「解析完了」

 

 ブライトから引っ張り闇属性に変換した大量の魔力で魔術の起動を封じている間、左手の上で緑に光る魔法陣を展開し新たな魔術を組み上げていく。

 

「『目覚めよ、逆巻(さかま)く円環(えんかん)よ』」

 

 完成させた魔術を纏(まと)わせた拳をウズベルの胸に打ち込むと、その背中側から赤い魔法陣が飛び出し砕け散った。

 

「よし解除成功っと、ブライト、ここの騎士団施設(しせつ)は何個ある?」

 

「騎士団本部を含めて九ヶ所(きゅうかしょ)、街中に一定の距離で建てられているよ」

 

「了解」

 

 ウズベルから手を離し両手を天井に向け、再び魔法陣を組み上げていく。

 

「これから街全体に魔術を掛けるから、もし上に何か言われたら弁護(べんご)宜(よろ)しくな隊長さん」

 

「何を言って――」

 

 ブライトから魔力をさらに引っ張り出し魔法陣へ流し込んでいき、気付かれる前に素早く完成させる。

 

「よしできた、『目覚めよ、逆巻く円環よ』」

 

 部屋を満たしていた闇の魔力を消し去り、窓の外に向け魔術を起動する。

 

 魔法陣は窓の外へ飛び出すとその向きを変え、高速で街の上空にまで浮かび上がると。眩い緑光(りょくこう)を放ち、街全体を覆(おお)い尽くす程の大きさになった。

 

「なっ……!」

 

「ウズベル、お前らに指示を出したのは誰だ」

 

「……カルドリク副団長だ、彼に邪魔をする者を殺せと命じられていた」

 

「馬鹿な……!」

 

 事件の全貌(ぜんぼう)も分かって来た事だし、驚いてばかりのラルバ隊長殿にも働いてもらうとしよう。

 

「後は魔法陣(アレ)に任せて副団長の所に行くか、アンタは他の隊長達を集めるのよろしくな」

 

「……良いだろう」

 

 いまいち納得がいっていないという様子だが、呑み込んでくれたようだ。

 

「あ、額に緑の十字が付いてる奴以外な」

 

「どういう事だ?」

 

「副団長と契約魔術を交わしてた証だからな」

 

 さっき作り上げた魔術に少し付け足した効果だが、まあ役に立つだろう。

 部屋の外に並んでいる騎士達の額にも緑の印が浮かび上がっている。

 

「こんな感じで分かりやすい目印付けといたから、拘束(こうそく)とか諸々(もろもろ)よろしく」

 

「分かった、君達はどこに」

 

「副団長殿に挨拶してくるよ」

 

「あ、あの……」

 

 声の方に目をやると新米騎士達が困惑した様子で待機していた。

 

「我々はどうしたら……」

 

「取り敢えずこいつらを牢屋(ろうや)に入れたら、後はラルバ隊長の指示に従ってくれ」

 

「わ、分かりました!」

 

 ラルバ達と別れ、詰所(つめしょ)を出てブライトと騎士団本部を目指し走る。

 

「ブライト、お前に探して欲しい場所がある」

 

「分かった」

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