強大な竜を一撃で屠り、邪悪な魔王を跪つかせる。神の呪いを歯牙にも掛けず、一国の王でさえ顔色を窺う。
そんな力を一個の人間が振るう。
一度の依頼で国際情勢を変え、様々な奇跡で民衆を救いその羨望を独占する。一騎当千、万夫不当。古今東西、焼肉定食。
名実ともに世界最強な救世主。
それがこの私、大英雄ガガンボさ。
「キギャァァァァア!!!!!」
「・・・うーーん。結晶竜、こんなもんか。こんなのに壊滅させられる騎士団なんて意味あるのかな」
尻尾まで含めれば百メートルちょい、全身を虹色の結晶で覆われている。私の一撃を受けて断末魔を上げるだけの耐久力は凄いけど、逆に言うとそれだけ。これならあのマヌケ面にやらせればよかったや。
「っとっと、角も持ってかなきゃだっけ。あのゴブリン、自分とこの男爵が被害受けてる時にコレクター欲出すとか信じらんないわー、あっやべ」
愚痴りながらなのが良くなかったのか、結晶竜の額に生えていた角が、パキンッと小気味いい音を立てて砕け散る。あーあ。
まいっか、もう一本あるし。
「英雄様が戻ったぞー」
「うおぉーー!俺等の英雄、ガガンボ様のご帰還だぁ!!」
「・・・あの人が依頼受けたの今日の朝だよな・・・?」
「ああ、しかも相手は伝説の武器でしか傷つかないって言うあの結晶竜だってよ」
「魔法も大して効かないんだろ?俺、伝説上の生物だと思ってたわ・・・」
「よっしゃあぁ!!銀貨三枚勝ちィ!」
「俺の飲み代がぁ・・・!!」
騒がしい奴らだなあ、人の帰還速度で賭け事するなよ。一応冒険者ギルド内だよ?
「やあ、マンドリル。これ討伐証明の逆鱗と、追加依頼の角ね。手続きよろしく」
「マリアンヌです、ガガンボ様。・・・あの、ガガンボ様。角が一本足りない様なのですが・・・」
「ああ、何か特殊な個体だったみたいでね。最初から一本しか生えてなかったんだ。突然変異ってやつかな?」
「・・・依頼主に報告するのは、我々ギルドなのですが」
「無い物は仕方ないよ。文句があるなら自分で取りに行け、ってあのゴブリンに言っといて」
色々と言いたい事を我慢しているのだろう。此方を睨みながら黙々と手続きを進めて行くマリアンヌ。あはは、本当に猿みたい。
「さーて、野蛮で下品な冒険者の諸君。今日は私の奢りだ、結晶竜の討伐報酬は三流貴族が泡を吹いて倒れる位はある。好きなだけ騒いでくれ」
「キタキタキタァァァア!!!」「流石大英雄!俺等の救世主ゥ!!」「ガガンボ様ァ!抱いてぇ!」「良かった・・・、これで酒が飲める・・・!」「ウホ、良い尻」「俺ビール!」「俺も!」
本当に欲望に忠実だね、これぞ冒険者。そんなんだから万年金欠なんだぞ?野蛮が移たったら嫌だからね、今日は早く帰ろう。
「何だ、主役がもう帰っちまうのかよ。つれねえな」
「あれ、居たんだロミオ。相変わらずマヌケ面だねえ」
「うるせえ、っいうかお前が気付かねえわけねぇだろ。他の凡百の冒険者ならともかく、同じ
このドヤ顔をかましてる男の名はロミオ。短く刈られた髪と髭、その上からでもわかる顔中に走る傷跡。切れ長の目は潜った修羅場を思わせる眼力を持つ、らしい。よくその顔でロミオとか名乗れるよね、ヤンガスとかの方がいいんじゃ無いかな、どう見ても盗賊だもの。
だけどそんな男でも今この空間においては私に次ぐ力を持つ。私にとっては恥ずかしい話だけど、此奴は立場だけは私と同じS級冒険者に到達している。恥ずかしい話だけどね?
「どんだけ恥ずかしいんだよ!!・・・ったく、相変わらず失礼な奴だな、お前は」
「流石腐ってもS級。いつの間に読心なんて覚えたの?失礼な奴め」
「読まれたくなかったら隠せよ。俺の読心なんてお前なら弾けるだろ」
口は悪いけど、私の能力は認めてくれてる・・・、これがツンデレ?オエッ
「このッ・・・、はぁもう良い。・・・実はお前に用があって待ってたんだ。陛下からの伝言だ。明日の正午に王宮に参上せよ、だとよ。伝えたぞ」
「またあのゴブリンのパシリやってるの?君も暇だねえ」
「そういうな。あの爺さん、中々金払いが良いんだ」
「よく言うよ。忠誠心バリバリの癖に。・・・本当にツンデレじゃないか。気持ち悪い、本当に気持ち悪い」
「二回もッ・・・。いいか!伝えたからな!あとツンデレじゃ無いからな!!」
ロミオ改め盗賊、改めツンデレとの会話を終えてギルドを出る。漸く屋敷に帰れる、何で依頼より変態との会話の方が疲れるのさ。これなら結晶竜千本組み手の方が楽じゃないか。