私は大英雄ガガンボである   作:逆ギレ伯爵

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私は大英雄ガガンボである

少し暴れるか。なんて言ってみたはいいものの、今すぐに戦争を起こすわけでは無い、というか起こせないって言った方が正しいかな。

 

今、この瞬間に連合軍や、連合軍を構成する国々を滅ぼす事は容易だ。でもその場合、無関係な民衆まで巻き添えにする事になる。それは出来れば避けたい。一応、私は英雄なんだ。

 

「やはり、昨夜の天変地異は貴殿の仕業であったか。ガガンボ殿」

「当然。私以外にあんなこと出来る生物がいるわけないじゃ無いか」

 

明朝、朝と呼ぶにも早すぎる時間。日も上らない暗闇で、それでも王宮だけは魔法の光で爛々と輝いていた。いかにフィーリア王国が内陸国とはいえ、あれだけの災害だ。政務を仕切る王宮や宮廷が眠りこけているわけにもいかないのだろう。

 

「しかし、驚いた。人間同士の争いに、貴殿が進んで参戦するとは・・・。私はてっきり、転生者と神々を殺害したのち、いつもの様に我関せずを貫くと思っていたのだが」

「最初はそのつもりだったさ、私もね。でもちょっと不味そうなのが向こうにいてね。あれは私が出なければ、あまり良く無い結果を招きそうだ」

「・・・貴殿がそれ程警戒するとは。どうやら本気の様だな、まさか、彼の大魔王メディアまで連れてくるとは」

「・・・何か問題でも有るのかしら?ガガンボ様の命とは言え、人間風情の為にわざわざ妾が出張っているというのに」

「あははは、変な喋り方」

 

あははは、痛い痛い、殴らないでくれよ。

 

「それで、宣戦布告をするという話であったな。・・・一応聞いておこう、何故だ?何故わざわざ連合軍に準備する時間を与える」

「勿論、民衆が逃げる時間を与える為さ。転生者達は各地の国々に散らばっている、連中を皆殺しにしようと思えば周辺の人間達も悉くが死んじゃうだろう?そうなれば、もはや国家間のいざこざではなく、人類全体に対する打撃になりうる」

「では、宣戦布告をしてからこちらが攻め込むまでに、連合軍が攻め込んできたらどうする」

「それは()()()()()()民衆には人類の膿を切り取るための犠牲になってもらおう。コラテラルコラテラル」

 

私は決して全能では無いんだ。例の心臓を喰らう存在が何処にいるか分からない以上、犠牲のない勝利なんて、最初から諦めているさ。

 

「転生者に対抗できる戦力は、今どれくらいいるんだい?」

「ふむ、・・・精々が二十人程だろうな、敵がただのS級冒険者であればもう少し増えるだろうが、異能を考慮すればこの辺りが限界だ」

 

元々の転生者の数は三十一、そこから、ロミオが殺した一人、メディアが消した二人、あとはサツキちゃんと心臓を喰らう者を除いて、二十六人。やっぱりフィーリア王国だけでは少し分が悪いね。

 

ただ、そこにメディアが加われば形勢は逆転する。サツキちゃんは参加しないだろうけど、十分勝てる見込みはあるかなあ。転生者も全員が全員戦闘向き、というわけではないだろうしね。

 

「うん、十分だ。それだけの戦力があれば、私が連中を殲滅する時間位は稼げるでしょ。・・・ああ、一応王宮には次元魔法を弾く結界を貼っておくから、戦力は騎士団の詰所か冒険者ギルドを使うといいよ」

「至れり尽くせりだな。貴殿が味方で本当に良かった」

「当然よ、妾とガガンボ様が味方するのだから。寧ろこの状況から負ける方が難しいわ」

「ああ、メディア殿。貴殿の助力にも感謝しよう。貴殿が居てくれれば我等の勝利は確実だ」

 

あははは、喜んでる喜んでる。ゴブリンのあんな適当な感謝で喜ぶなんて本当にチョロいね、メディアは。

 

 

 

「いよいよ戦争が始まるんだってね、ガガンボさん」

「おや、バレてしまったみたいだね。誰から聞いたの?私の正体」

「ロミオさん。あの人、聞いたこと何でも教えてくれるんだ」

 

やっぱりあいつかあ。いや、確かに口止めはしてなかったけどね?味方と決まったわけでも無い相手にそんなペラペラ喋るかなあ、普通。

 

「まあ、もういいんだけどね。別に君も私達に敵対する気はないんだろうし。今更力を隠す必要もないから」

「うん、やっぱり私には戦いは合わないみたい。・・・・・・本当にガガンボさんなんだね。ピエロの人が言ってた、世界最強の英雄って」

「ピエロ・・・?ああまあ、そうだね。私こそが救世の大英雄ガガンボだよ。幾度も世界を救ったスーパーヒーローさ」

 

そういえば、あの道化師もエレウスの人間だったっけ。意外な所で縁があるもんだね。

 

「この世界で、最も全知全能に近い存在。鬼や竜どころか、神さえ恐れない救世の大英雄。あはは!本当に物語の主人公みたい!」

「残念だけど、私はここ、現世にいる現実の英雄さ。・・・流石に全知全能ではないけどね?」

「凄いなぁ、ガガンボさんは。・・・・・・もしかしてさぁ、ガガンボさんなら私達を元の世界に戻せるんじゃないの?」

「うん?勿論。それくらい簡単だとも」

 

まあ、彼女のいう元の世界がどこか分からないから、次元魔法で片っ端から異世界を覗く必要はあるけどね。時間を掛ければいつかは繋がるだろうさ。

 

「!やっぱり!!じゃあ戦争なんてしなくていいじゃん!!みんなに教えてあげようよ、そしたら転生者、っていう戦力が居なくなるんだ。クロリアスの奴等も戦う気なんて無くなるよ!」

「はいはい。大丈夫だよ、この後ちゃんと君の友人達にも伝えるさ。・・・それで戦争が止まるとも思えないけどね」

 

喜ぶサツキちゃんを尻目に星見台に向かう。うーん、なんか悪いことしてる気分。この後の彼女の絶望を考えると、胸が・・・、いや別に痛まないんだけどね?

 

 

 

「やあ、お待たせ。メディア」

「いえ、たった今準備が終わった所です」

 

王宮に付随した星見台で、メディアと合流する。彼女には、私がサツキちゃんと話してる間に少し準備をしてもらってたんだ。

 

「うん、魔法陣も問題なさそうだね。流石はメディア。私は破壊特化の魔法ばっか得意でこういうのは苦手でね。君が居てくれて良かった」

「うへへへへ。ガガンボ様のお役に立てて光栄ですぅぅ」

 

周りに人が居ないからかな?メディアがまた気持ち悪くなってる。こんなのに人類は滅ぼされかけたのかあ。虚しいね。

 

「じゃあ、始めようか。少し下がってて」

「はいぃ」

 

メディアが離れたのを確認し、魔法陣に魔力を流す。本来は宮廷魔導士が数人がかりで行う魔法を、更に強大にしたものだ。普通の人間が使えば一瞬で干からびるだろうけど、生憎私は普通ではないんだ。

 

魔法陣に流した魔力が八又に分かれ、方々へ魔力の道標を紡ぐ。

 

今頃、連合軍を構成する各国の上空に、巨大な魔法陣が浮かんでいる筈だ。・・・慌てふためく連中の顔が見えないのが残念だね、さぞ面白い顔をしているだろうに。

 

「ガガンボ様!繋がりましたぁ!!」

 

魔力の奔流に飛ばされない様、耐えていたメディアが声を張り上げる。

・・・何か急に緊張してきたなあ。これまで人前で喋る機会は幾度もあったけど、流石に国八つ分の人間の前で喋ったことはないや。カンペとか用意しとけば良かった・・・。

 

「ガガンボ様ぁ!?まだですかぁ!!」

 

・・・よーし、覚悟はできた。後は噛まないだけだ。

 

「『あー、テスト、テスト、1、2。1、2。聞こえますか〜?聞こえたら返事下さ〜い』・・・ふう」

「ガガンボ様ぁ!!!!一方通行なので返事はきませぇぇえん!!」

「あ、そっか。『あー、対フィーリア王国の為に組まれた連合軍。及びその連合軍を構成する八つの周辺国に住まう知性を持つ皆さん、こんにちは。私は大英雄ガガンボである。昨夜のデモンストレーションは楽しんでもらえたかな?』」

 

さてと、噛まずに言えた。まずは第一関門突破だね。

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