私は大英雄ガガンボである   作:逆ギレ伯爵

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賢王ゴブリン

明朝、屋敷を出る。

今日は正午に王宮に出向かなければならない、この国で生活している以上国王の命令は拒めない。例えそれが敵対する派閥の大物貴族だとしても公的に出された物であれば避けようがないのだ。・・・だがあえて聞こう。

 

何故世界最強の私が、たかが一国の国王ごときの命令に従わなければならないのか。

 

 

 

という訳で私は今、フィーリア王国内にある賭博都市カテレイブに来ている。理由は言わなくてもわかるよね?

 

「責任者呼んでくれる?このスロット、裏から操作してるよね?」

「しししししてません!!?!ホントに!ほんとうに!!!」

「え?てことは私の運が悪いってこと?世界最強なのに?私が何回世界を救ったかなんて君みたいな木っ端でもしってるよね?それとも知らないのかな?今の君達の生存が私の尽力のおかげな事を。ああ、もしかして君死の信奉者?生きてるのが苦痛なんだ。そうかそうか、なら悪い事をしたね。今、殺してあげるよ」

「イヤァァァァァァアアア!!!!!!!!」

 

次元魔法を使い異空間からハルペーを呼び出す。生きるのが辛いなら最初に言ってくれれば良いのに。しょうがないから救世の大英雄として彼をタルタロスの底に送ってあげよう、そうしよう。

 

あと白金貨十四枚の怨み。

 

「貴様の罪をか「ストォォオプゥ!!!!何してんだガガンボォ!!!」

「・・・なんだ、また君か。本当に暇なんだね。ここから王都って結構離れてるよ?」

「暇じゃねぇ!陛下がどうせお前の事だからサボってギャンブルしに行くだろう、つってお前を探しに来させたんだ!!」

「へー、大変だね」

「ああ大変だよ!ホントにな!!・・・そこの給仕、もう行って良いぞ。あとはやっとく」

「はいぃぃ!!ありがとうございますぅ!!」

 

あーあ、行っちゃった。せっかく救ってあげようと思ったのに。

 

「嘘つけ!白金貨十四枚とか考えてただろ!・・・良いから行くぞ、外に転移魔法の準備をさせてある」

「あ〜れ〜」

 

こうして哀れな英雄ガガンボは、白金貨十四枚を盗まれ、それを取り返す事なく今度は愚王ゴブリンの配下に誘拐されて行くのであった。

 

 

「終わんねぇよ!?」

 

 

 

「お帰りなさいませ、ロミオ様」

「ああ、陛下は?」

「謁見の前でお待ちです」

 

転移魔法陣を抜けるとそこは調度品が並ぶやけに豪華な部屋であったとさ。

 

まあ、王宮の客間だろうね。本来なら安全上、こんな所に転移魔法陣を設置することは無いだろうけど、私の気を損ねない様に特例的に拵えたんだろう。

 

それなら最初から謁見の間に飛ばしてほしいけどね。

 

「贅沢言うな、今回は陛下だけじゃ無くて他の貴族達もいるんだ。儀礼を無視する訳にもいかねぇよ」

「残念でした、考えただけで言ってないよ。早とちりのマヌケ面〜」

「・・・ふぅ、良いか?貴族達の前で陛下に恥をかかせるなよ。陛下の代になって減ったとはいえ、まだ貴族派も消えた訳じゃ無い。ここで変な隙を見せれば国政が悪化しかねない、それはお前も望んでねえだろ」

「・・・振り?」

「違う!!」

 

心配性だなあ、ロミオは。そもそも私は別にあのゴブリンを嫌っていない。寧ろあっちが一々突っかかって来るんだ、前に一度王妃を口説いただけなのに。小っちゃいのは身長だけにして欲しいな。

 

「普通は極刑だぞ・・・。まあ良い、いや良くは無いけども!取り敢えず行くぞ、これ以上待たせる訳にはいかねぇ」

「はいはい。我儘だなあ、君は」

 

あはは、すっごいブチギレてる。

 

 

 

「遅い、ロミオ・ルージュ。国王陛下は正午、と仰った。冒険者でしか無い貴殿をと「もう良い」はっ」

「気にするな、ロミオ・ルージュ。良くぞガガンボ殿を連れ戻してくれた。他の誰にも成せまい、これは偉業だ。感謝する」

「勿体なきお言葉、恐悦至極です」

 

いつ見てもこう言う場面のロミオは面白いなあ、あの盗賊面で「恐悦至極です」だってさ。笑える。

 

「そして。久しぶりだな、ガガンボ殿。元気そうで何よりだ」

「やあ、久しぶり王妃。相変わらず君は美しいね」

 

空気が凍る。王や宰相、国王派の貴族達は勿論、敵対している貴族派の連中さえ何が起こったのか分からない、と言う顔して固まっている。

 

動いてるのは二人。此方を射殺さんばかりに睨みつけてくるロミオと、顔を赤くして身悶えしている王妃だけだ。彼女の初恋は私だからね、しょうがないね。

 

「な、な、な、何と言う無礼な!!いくら英雄ガガンボ殿とはいえ国王陛「黙れ宰相」ぐぅっ」

「私とガガンボ殿の仲だ、これくらいの冗談は気にする必要は無い」

 

流石に貴族達の前だと王さま然としてるね。前に非公式に会った時は顔真っ赤にして掴みかかって来たのに。つまんないの。

 

「そう言う訳にも行きますまい。我々貴族にとって、仕えるべき国王陛下に対する無礼は我々に対する無礼です。それを冗談と流すのは如何なものかと、それも公の場で」

「公爵の言う通りです。国王陛下の発言を無視するばかりか、人前で王妃様への甘言。これを無礼と言わず何と言うのか。そも、今回我々が集まったのは国王陛下とガガンボ殿が懇意にしていると伺ったからです。それもこれでは怪しいですなぁ」

「その通り!これ「君達さあ、いつ私が喋って良いよって言った?」え?」

 

せっかくゴブリンをおちょくって遊ぼうと思ったのに周りがうるさいや、私を呼ぶなら勢力争い位終わらせておいて欲しいな。

 

「躾がなって無いねえ、メガロス。やっぱりその身長がいけないんだよ、ミニロスに改名したら?それとも代わりに私が躾けようか」

「それには及ばない、ガガンボ殿。彼等はまだ()()、もう少し()()になればきっと理解してくれるさ」

「私から見れば君も十分若いけどね」

「はは、それを言われると弱いな」

 

あのはな垂れ小僧が、随分と大人の振りが上手くなった。

 

 

 

「少し雑談が過ぎた、話を戻そうか」

 

漸く本題か、私の時間は高いんだ。簡潔に話してほしいね、全く。

 

「近頃近隣の国家がやけに強気でね、此方の要求を悉く拒絶する。そこで忍ばせた間者に探らせた所、面白い情報が見つかった」

「へー、メガロスの性癖まとめ本とか?」

「元々隣接している国々が我々フィーリア王国へ対抗する為、同盟を組み連合軍を創り上げ様としていたのは知っていたが、その中に一つ特殊な組織が存在する事が判明したんだ」

 

無視するなよ、酷いなあ。

 

「数は三十人程、しかし一人一人が我が国の騎士団長やS級冒険者に匹敵する実力を持つらしい。何より奴等は個々に特異な能力を扱う。少なくとも、物体の透過と物理攻撃の完全反射、そして他者の寿命を見る事が出来る存在がいる」

「ふーん、今のところ大した事なさそうだけど。全部私も出来るし」

「出来るのか・・・。そして先日、そこにいるロミオ・ルージュを斥候に出したところ、偶然その内の一人と接敵してしまってな。ロミオ・ルージュよあとは貴殿の口から」

「承りました、陛下。・・・俺がやり合ったのは恐らく魔法の完全遮断だ。俺は魔法より槍の方が得意だからあんまり関係無かったんだが、それでも恐ろしく強かった。生きて帰れたのが不思議なくらいにはな」

「へー、確かにロミオ弱いもんね。S級の恥って感じ」

「黙って聞け。・・・でだ、勝つには勝ったんだが、そいつが死に際に変な事言っててよ。俺はテンセイシャだぞ、とかこんな筈じゃあ、とか何とか。その上、そいつの心臓が止まった瞬間これまで受けた事のねぇ様な呪いを掛けられたんだ」

「うん?呪いがかかってる様には見えないけど・・・。ああ、解呪したのか。君達は一々呪いを解かないと死んじゃうんだっけ?大変だねえ」

 

僕位になると一々解呪するの面倒くさいから掛かったまま放置してるもんね。どうせ効かないし。

 

「教会の連中が必死こいて解呪してくれたんだが、それがどうやら神呪の類だったらしい。お前その辺詳しいだろ?何かしらねぇか?」

「神呪、神の呪いねえ。御子・・・だとしても態々神が人に呪いを掛けに出張ってくるとは考え難いし」

「・・・やはりガガンボ殿もそう思うか」

 

ゴブリンも同意見らしいね。

御子っていうのは別に神の血を引いている訳じゃ無い、いや偶にそういうのもいるけど。

大体は神に気に入られた人間の事を御子って呼ぶ。そしてこの御子、結構いる。十人集めれば一人位はいる。そもそも神自体かなりの数居るからね。

 

そして別に御子が死んだからと言って、本体の神に何か不都合がある訳でも無い、神にとって御子は信仰を集める為の安い宣伝塔みたいな物なんだ。

 

けど、テンセイシャねえ。何か聞き覚えがある様な・・・。

 

「神呪もテンセイシャも特に心当たりはないかな。で?私を呼んだのはそいつらを皆殺しにしてほしいって事?それなりの報酬払うならやってあげるけど」

「・・・いや、今回は情報が欲しかっただけだ。今のところは貴殿の力を借りずともどうにかなるだろう。だが場合によっては力を借りることもあるかも知れない。その時はよろしく頼む」

「それだけの為に私を呼んだの?私の時間もタダじゃ無いんだけどなあ」

「それもそうだな。では、結晶竜の角一本でどうだ?」

 

・・・ちぇ、ケチ臭いゴブリンだ。

 

「ふむ、問題はない様だな。では今日はご苦労であった。下がって良いぞ」

 

 

 

「お前でも知らねぇ事があるんだな。陛下が態々呼び出したくらいだから心当たりがあるのかと思ってたわ」

「そりゃ知らない事なんていっぱいあるさ。それにゴブリンも僕が情報を持ってない事は分かっていたと思うよ」

「そうなのか?なら何でお前を呼びつけたんだよ、それも貴族派の奴等まで集めた上で」

「僕とアイツの関係を見せつけたかったんだろうさ、あれだけ見せつければ貴族派の連中も敵国につく事はないだろう?少なくともあの場にいた連中は思った筈さ。王家を敵に回す事は僕を敵に回す事に等しい、ってね」

「成る程なぁ。貴族の奴等に釘を刺したって訳か」

 

全く、狡賢い所までゴブリンそっくりじゃないか。もしかしてゴブリンじゃ無くてホブゴブリンだったのかな。いや、それなら身長が足りないか。

 

それにしても、神呪にテンセイシャかあ。何か面倒くさい事になりそうだ。僕に飛び火しなければ良いんだけど。

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