私は大英雄ガガンボである   作:逆ギレ伯爵

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英雄の威光

「それにしてもフィーリア王国は随分と人手不足みたいだね。あれだけの騎士が殺されたのにその救援にたった二人しか送らないなんてさ、いやそもそも捨て駒なのかな。君達も、あの騎士も」

「みたいですね。大方、配下の騎士達の溜飲を下げる為の見せしめでしょう、勇敢な騎士の為救援は送ったが手遅れであった。みたいなね」

「・・・さっきからあの騎士、あの騎士と何のことだ?俺達はただの警備だ。何処ぞの馬鹿が間違って国境を越えねぇ為のな」

 

それは無理がない?さっき、あんな良い奴がこんな所でくたばる訳ねぇ。とか言ってたじゃん、バッチリ聞かれてたじゃん。

 

「それは無理があるのでは?さっき、あんな良い奴がこんな所でくたばる訳ねぇ。と言ってたではありませんか」

 

ほら、突っ込まれた。マヌケは顔だけにしときなよ。

 

「どっちでも良いよ、そんなの。殺す事に変わりは無い」

「・・・ならその境界線を越えてみろよ。そうすりゃ気兼ねなくぶっ殺せる」

「すごい自信だこと。名のある騎士の顔は大体記憶してるけど格好からして冒険者かしら、お名前を伺っても?」

「・・・ロミオ・ルージュ、ただのS級冒険者だよ」

「なーんで素直に教えちゃうのお?情報って大事だよ?」

 

馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、此処までとは思わないじゃ無いか、あのゴブリン何でこんな大事な仕事をこんなのに任せたのさ。

 

「ほほお!ロミオ・ルージュ!少しでも戦力を削れればと発案した作戦でしたが、これ程の大物が掛かるとは!重畳重畳ゥゥ!!!」

「・・・成程ね、その自信はハッタリじゃあないって事か」

 

あははは、ロミオが大物だってさ。頭おかしいんじゃないの。

 

「それでも私達には勝てなくてよ?幾ら個で勝ろうとも数の差はひっくり返せないもの」

「はっ、たった四人ぽっちで何言ってんだよ。俺達を殺したけりゃその十倍は連れてこい」

「じゃあそうしましょう。《起きなさい》!」

 

女の一声を合図に地面から死体が這い出て来る。ネクロマンサーかあ、珍しいねえ。それも触媒を用意せずに四十体以上。良い腕してるよ。

 

「ちっ、趣味が悪ぃ奴だ」

「あら、失礼ね。貴方が理解できないだけでしょう?」

「いえ、ワタクシも悪趣味だとは思いますよ。気持ち悪くないですか?動く死体って」

「・・・貴方は黙ってなさい」

「さて、お望み通りの数を用意したよ。これでもまだ威勢を保っていられるかな?」

 

そう口にしながら男は剣を抜く。ネクロマンサーはいやらしく笑みを浮かべ、道化師はパントマイムを始めた、何だアイツ。

 

問題は一度も喋らない少女だ。最初はただのヒーラーかと思ったけど、この状況で杖すら構えない。それにあの目、何か嫌な感じがするなあ。

 

「はっ、頭数増やしただけで調子乗りやがって。御託並べてねぇでさっさと掛かってこいよ」

「おお!流石は誇り高きロミオ!!この状況で一切闘志が鈍らないとは!」

 

・・・駄目だ、ロミオが持ち上げられるのが面白すぎて頭が回らない。誰さ、誇り高きロミオって。私そんな人知らないよ?

 

「そっちの君は戦わないのかい?武器を抜く時間位はあげるよ」

「あー、そうだね。ロミオだけだと何も出来ずに殺されちゃうだろうし、少し手伝おうか」

 

次元魔法を使い異空間から直剣を呼び出す。見た目は平凡だけど一応は魔剣だ、雑魚処理には十分だろう。

 

「・・・空間魔法。貴方も中々名の通った冒険者のようね。お名前は?」

「言う訳ないだろう?そこのマヌケ面と一緒にしないでくれよ」

「おい」

 

いや、これが普通だよ。名前言ったらバレるじゃん戦い方とか、弱点とかさ。

 

「まあ良いさ、どうせ此処で死ぬんだからね。それじゃあ始めようか」

「いいえ、そこまでです。引きますよ、皆さん」

 

やっぱり()()()()かあ。

 

「・・・何故ですか」

「我々の目的は領土に侵入した賊の仲間を討つ事です。決して他国の方を傷付ける事ではありません」

「・・・成程。確かにそうですね!!彼等が此処にいると言う事は賊の仲間は此方には来ていないと言う事!なら別の場所を探しましょう!!」

「こんな好機をみすみす見逃すなんて、納得出来ません」

「同感だ。ここまできて、はいそうですか。つって逃す訳ねぇだろ」

「私達の居場所は常に都市部の教会で監視されています。もし此処で誰か一人でも命を落とせば、それこそ外交問題になりますよ?」

「・・・ちっ、汚ねぇな」

「ご理解頂きありがとうございます。・・・それと、お初にお目にかかれて光栄です。ガガンボ様」

 

やっぱりそう言う事だよねえ。ずーっと私の事を観察してたもんね。次元魔法辺りで確信に変わったのかな?

 

「ガガンボって・・・、まさかコイツが!?」

「失礼ですよエフロス。・・・貴方様の逸話は聞き及んでおります。混沌や終末の討伐にタルタロスの再封印。その他にも幾度も世界を救った救世の大英雄、貴方様が居なければ人類は何度も滅んでいたのでしょう、ありがとうございます」

「うん、もっと感謝して良いよ」

「ホンモノ・・・なのか。・・・なら尚更ここで!!」

「辞めなさい!ガガンボ様の相手は使者様のお役目です。身の程をわきまえなさい」

 

ふーん。

 

「この度は此方の勘違いでご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。どうか此処は一つ見逃してはいただけないでしょうか」

「うん、良いよ。人を殺すのはあんまり好きじゃないからねえ」

「おい!ガガンボ!」

 

冷静になりなよ、此処で彼等を殺しても君の友達は戻らない。それなら一つ貸しを作っておくのがメガロスの為になるんじゃない?

 

「・・・クソッ」

「お気遣い感謝します、ガガンボ様」

「うん、ただ代わりに一つ教えてよ。・・・君達は()()()()()()?」

「!・・・いいえ、違います。彼等については私にも良くわかりません。ただ神々に愛された方々としか・・・。曖昧な情報で申し訳ありません」

「いや、十分だよ。じゃ、行っていいよ」

 

少なくとも、テンセイシャと使者は別物みたいだね。

 

「それでは失礼します。行きますよ、皆さん」

「ほほお!この状況でただの一滴も血を流さずに済むとは!!これも!神の!!愛!!!」

「・・・うるさい、黙れ」

「それではご機嫌よう、御二方」

「ばいばーい」

 

うん、中々いい情報が手に入ったね。これならゴブリンも喜ぶだろう。

 

「気に食わねぇな。情報なんか集めずにぶっ殺しちまえば良かったんだ。アイツが報われねぇよ」

「それはどうかな、君のお友達はその情報の為に命を賭けてエレウス教国に潜入したんだろう?なら今回の結果は寧ろお友達の任務を遂行したとも言えるんじゃないかな」

「・・・そう言う難しいのは俺には向いてねぇ」

「ああ、君馬鹿だもんね」

 

ショートスピアを振り翳し追いかけて来るロミオから逃げつつ、次元魔法で王宮へゲートを開く。ゴブリンへの報告が大変そうだなあ。

 

 

 

「そうか・・・、やはりすでに死んでいたか」

「うん、完全に罠だったね。君達の通信魔法は既に解析されていると考えた方がいいと思うよ」

 

此処は王宮内の会議室。そこで私とロミオは騎士救援の報告をしていた。この場にいるのは、ゴブリン、騎士団長。そして僕とロミオの四人のみ。あんまり人に聞かせられない話とかもあるからね。

 

「教会による位置情報の捕捉、神に愛されたテンセイシャ。そして少女が口にした使者。口振からしてガガンボ殿に対抗できる可能性があるのか・・・?重大な情報ではあるが、今一つピースが足りんな・・・」

「ガガンボ様に対抗できる存在が?そんなまさか・・・・。ロミオ、貴様の読心で何かわからなかったのか?」

「道化師と少女には読心を弾かれました。読み取れた剣士の男とネクロマンサーに関しては既出の情報しか持ってなく・・・」

 

うーん、私も読心使っとけば良かったかなあ?私の読心なら特殊な道具でも使ってない限りあの少女と道化師の思考も読み取れたと思うけど・・・。でも苦手なんだよなあ、人の心を覗き見るの。何か変態みたいじゃない?

 

「・・・いや、良くこの情報を持ち帰ってくれた。これで部下も報われるだろう、感謝する」

「騎士団長・・・、此方こそありがとうございます・・・」

「ガガンボ様も、かたじけない。我等騎士団の後始末を任せてしまった」

「気にしなくていいよ。報酬はたんまりと貰うからね」

 

正当な労働には正当な報酬を、当然の権利だよ。それを渋るなら宝物庫の中から何個か拝借していくだけさ。

 

「じゃあ私はこの辺で失礼するよ。この後会わなきゃいけない奴がいてね」

「そうか、・・・今回は助かった。貴殿が居なければ得られない情報だっただろう。報酬は色を付けておく」

「君はいいゴブリンだね、宝物庫を荒らすのは勘弁してあげよう」

「貴殿、そんな事を考えていたのか・・・」

 

 

 

私は世界最強だ。実際これまで人類に牙を剥いた鬼やら竜やら精霊やら、果ては神まで討ち果たしてきた。でもそれは無敵である事と同意義じゃあない、私は別に全知全能という訳では無いからね。だから件の使者っていうのが私に対抗する手段を持っていてもおかしく無いんだ。

 

私は生まれてこの方負けた事はない、でも数度、それを予感した事はある。・・・だから会いに行こう、私を最も敗北に近付けた存在に。彼女ならテンセイシャや使者とは何なのか、そのヒント位は持ってるかもしれない。

 

何せ、人の身でありながら魔導を極め、神さえ恐れさせた存在なのだから。

 

 

 

 

 

「という訳で会いにきたよ、魔王ちゃん」

「ギイィィイイヤァァァァァァアアア!!?!!!?!!!!!?!!」

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