「酷いなあ、人の顔を見るなり叫ぶなんて。もしかして喧嘩売ってる?」
「いやあ、へへへへへ。急に現れるからビックリしちゃっただけですよぉ」
「へー、私が悪いんだ?そうかあ、君も随分偉くなったんだねえ、メディア。私を次元の狭間に落として殺しかけた事、忘れた訳じゃないんだけどなあ」
「あぁぁああ!違いますぅ!!全部妾が悪いんですぅぅ!!!すいませんでしたぁあ!!」
ここはフィーリア王国が存在するデロンド大陸から数千キロ程南下した場所にある魔大陸と呼ばれる場所だ。昔は別の名前で呼ばれてたらしいけど数千年前に当時の魔王が拠点を構える様になってからは今の名前が使われているらしい。
そんな魔大陸の中心には当代最強の魔王が居を構える城砦がある。ここが今私がいるところね。
「それにしてもここ十五年、殆ど領土広がってないじゃないか。僕の
「いやいやいや!覚えていますとも。・・・ただ最近、東の竜王がやけに勢いついてましてぇ、他の魔王やら獣王やらの対処と同時進行となると中々厳しいものが・・・」
「その竜王ってそんなに強いの?群れたり王を名乗ったりする竜ってただの馬鹿なイメージがあるけど」
「いえ、竜王自体は雑魚です。妾の配下の中にすら、あのトカゲより強いのが何人かいるくらいですから。ですが最近奴に入れ知恵をしている輩が居るらしく、配下だけでは攻めきれない状況が続いてましてぇ・・・」
「そんなの君が直接出向けば済む話だろう」
「いやぁ、妾は研究者タイプと言いますか・・・、直接戦闘は苦手でぇ」
「・・・・」
「はい!やります!直接行って皆殺しにしてきます!!」
魔王メディア、褐色の肌と処女雪の様に白い髪。女性らしさを強調した様な体型にエルフ同様尖った耳を持ち恐ろしさと美しさを兼ね備えた容姿をしている。・・・が、実はこれ全部魔法による整形らしい。本人曰くこっちの方が魔王っぽいとか何とか。そもそも元はただの人間だしね。
「何でもいいけど早く魔大陸を統一してよね。こっちの生物はそこらの雑魚でもデロンド大陸にとっては脅威なんだ。魔大陸から魔物が飛来する度に呼びつけられる私の身にもなってくれよ」
「わかってますよぉ。・・・・・・何で魔王になった後に人間の為に働かなきゃいけないんだよぉ」
「聞こえてるけど、大丈夫そう?何か不満があるのかな、首刎ねようか?」
「びゃぁああ!!すみませんすみません!何でもありません!!すみません!!!!」
・・・そういえば。彼女が魔道に堕ちたのは、婚約者の王子様に浮気された挙句、国から追放されたのが原因だっけ?・・・可哀想に、あははは。
「まあそれは後でやってもらうとして、実は君に聞きたいことがあって来たんだ」
「?聞きたい事ですか」
「・・・
メディアは、人の身でありながら既に五百年以上生きている。その上、魔法の探究の為に古今東西、あらゆる知識を蓄えているんだ。実際私の知識も半分くらいはメディアに教わったものだからね、彼女なら何か知っていてもおかしくない。
「いや、知らないですね」
そっかあ。
「・・・じゃあ、使者は?」
「使者?ってあれですか、指令とかを届けさせるあの・・・」
「ああもういいや、役立たずめ」
「ひどい!?」
うーん、メディアが知らないとなると結構手詰まりだなあ。モルフィもある程度の知識はあるだろうけど、あの引き篭もりがゴブリンも把握していない人間の情報を持ってるとも思えない。
どうしたもんかなあ。
「何か情報ないの?神々に愛された人間だとか、私に勝てる存在だとか何でもいいんだけど」
「そんなこと言われましてもぉ、妾この八十年魔大陸出てないですし・・・。そもそも妾でも無理だったんですから、ガガンボ様を倒せる存在なんていないと思いますよ?」
やっぱりそうだよねえ、だとするといよいよ連合軍の狙いが分からない。私が戦争に介入しない事に賭けてるとか?だとするとあの少女の発言と辻褄が合わない・・・。なんか考えるの面倒くさくなってきたなあ。
「・・・あっ、伝説上のお話で良ければ一つ心当たりがあります」
「へー、一応聞いとこうかな」
「はい、・・・ガガンボ様も神々はご存知でしょう?」
「うん、大した力もないくせに踏ん反り返ってる奴らでしょ。嫌いなんだよね、ああいうの」
「あれらを大したこともない、なんて言えるのは世界でも一握りでしょうけどね。・・・しかしそんな神々をも創り上げた存在が世界各地の遺跡に記されているのです。・・・旧き神、天地を創造した真なる神々。その存在が事実であればもしかしたらガガンボ様をも超えるかもしれませんね」
旧き神・・・。
「・・・ああ、あいつらか。何回か戦った事あるけどいうほど強くなかったよ」
「何なんだよこの化け物」
だからただの人間だって、ちょっと世界最強なだけのね。
「成程な、それで結局何の情報も得られずにトンボ帰りって訳だ」
「そういう事。でも逆に言うと彼女が知らないって事は、新しい魔法やら儀式やらで作られた前例の無い何かなんだと思うよ。テンセイシャっていうのは」
実際、私は彼女以上に知識を蓄えている存在を知らない。いや、神々の中にはいるだろうけど連中見ると殺したくなっちゃうから質問どころじゃなくなるんだよなあ。
「・・・お前、それ絶対教会の連中の前で言うなよ?石投げられても文句言えねぇぞ」
「そしたらそいつらの崇めてる神を殺しに行くさ。神の生首見せれば黙るでしょ」
「発想が怖ぇよ・・・」
神々はねえ、本当に反りが合わないんだなあ。これは私が一方的に嫌っている訳ではなく、神々も私を嫌っている。その証拠に、今現在私の身体には百を超える神呪が掛けられている。
『一生剣を抜けない』とか『子供を作れない』とか『死後絶対に地獄に行く』とかね。
まあどれも私には効かないんだけどね。剣は抜き身のまま異空間から呼び出せば良いし、子供が欲しければ錬金術を使えばいい。地獄に至っては生きている今でさえ往復出来るんだから一々解呪する必要もないんだ。
こう言うところも神々のプライドを傷付けているんだろうね。・・・逆恨みだよねこれ?弱い自分たちを恨みなよ、全く。
「スゲェな・・・、何をしたらそんなに神々に恨まれんだよ・・・」
「フッ、大した事はしてないさ。ちょっと双子神の片割れをもう片方の目の前で切り刻んだり、教国の聖女と神殿のど真ん中で致したりしただけさ」
「全然逆恨みじゃねぇじゃねぇか!!?百パーお前が悪いだろそれ!!」
でもなあ、先にちょっかいかけて来たのは双子神だし、教会でしようって誘って来たのも聖女だよ?私わるくない。
「いや、言い訳になってねぇって・・・。因みに、地獄行きの呪いをかけられた理由は・・・?」
「それは確か・・・、そうだ。何処ぞのカルト教団が生贄の儀式やってたから止めたんだ。その時に受けた奴だね」
「おぉ、意外とまとも。それは確かに理不尽かもな」
「だろう?その時一緒にいたメディアに、祭壇の上にうんちする様命じたりはしたけど、そもそも生贄を求めてる時点で向こうが悪いんだ」
「何やってんだお前ェェエエ!!!?!何でそう言う事しちゃう訳!?っていうか大魔王メディアに何させてんの!?寧ろ大魔王じゃなくてお前に呪いをかけてる時点で大分まともだろ!その神!!」
何だよ、ロミオは生贄賛成派なの?酷いわー、人の心とか無いの?
「絶対に、絶っっ対に!お前だけには言われたく無い!!というか良くやったな!?大魔王メディア!」
いやあ、あの時のメディアは可愛かった。顔真っ赤で涙目だったもん。お腹抱えて転げ回っちゃった、今思い出しても笑えるや。あははは。
「信じられねぇ・・・、何でこんなのが救世の大英雄なんて呼ばれてんだよ・・・。破滅の大魔神の間違いだろ」
「まあ結局出なかったんだけどね、うんち。緊張してたのかな?」
「そういう問題じゃねぇだろ・・・」
まあ、あの時はメディア贖罪旅行の最中だったからね。魔王として無関係な人間を殺して来たんだ、あれくらいは当然の罰さ。
「いや、確かに大魔王メディアの名前を聞けば世界中の人間が震え上がる様な存在ではあるけどよぉ・・・、何かちょっとお前の趣味入ってねぇか?」
「む、それは失礼じゃ無いか、ロミオ。私はそんなゴブリンと同じ様な趣味は持ってないよ。あくまでもメディアの更生の為さ」
「・・・聞きたくなかったぜ・・・、陛下ぁ」
ロミオの忠誠心が1下がった。
全く、こんな忠義の徒を失望させるなんて悪い王様だね。そんなんだから娘に気持ち悪がられるんだよ、あはははは。