早朝、今日も今日とてギルドに向かう。最近は暇を持て余す事が多いけど、いつ指名依頼が来るかわからないからね。私の下に来る指名依頼は二、三日放置するだけでワンチャン国が滅ぶから出来るだけ毎日ギルドには顔を出さなきゃいけないんだ。
最強って大変なのよね。
「おはよー。英雄様の出勤だよお」
「ガガンボ様!!丁度良いところに、たった今指名依頼が届きました!」
ほらね、大変でしょ?
「腸喰らいの大量発生?なにそれ、初めて聞いたけど」
「ギルドとしても観測史上初めての事です。中には数匹掛かりとは言え竜種を捕食した個体も確認されています」
「あー、そう。それは急いだ方が良さそうだね、近隣の村に被害は?」
「今の所はありません。ですが商隊が幾つか被害に遭っています」
「ふーん。場所は・・・、またゴニモス平原か。おっけー、いってくるね」
「どうか、お気を付けて!」
なーんか、面倒臭そうな予感がするなあ。嫌な予感っていつも当たるんだよなあ、ああやだやだ。
「ああ、これは酷いや」
次元魔法を使いゴニモス平原に飛んできた私の目に映ったのは、まさしく地獄絵図だった。いや、これなら地獄の方が幾分か綺麗か。
雄大な平原を覆い尽くす魔物の、死体、死骸、遺骸。ゴブリンやオークは勿論、ミノタウロスや腸喰らい自身。情報通り竜の残骸まである。・・・あれは馬車か、手遅れだね。可哀想に。
何が酷いってこれだけの死体があるのに、それでも殺し合っている魔物がまだまだいる。何をどうしたらこんなに魔物が一箇所に集まるのさ、百パーセント人為的でしょ、これ。
「取り敢えず、殲滅するかあ・・・、ん?」
魔法を起動し、平原に転がる死体諸共魔物達を焼き払おうとした時、私の魔力感知に人間の物に近い魔力が反応した。何だろこの魔力、生き残り?この状況で?
「しょうがないなあ」
魔法の起動を中断し、反応があった場所へ飛び立つ。こんなグロテスクな地面歩きたくないからね、飛行魔法開発しといてよかったー。
「ぐっ、もう!鬱陶しいなぁ!!」
平原の真ん中で、一人の少女が戦っていた。かなり長時間戦っていたのだろう、彼女の周りには腸喰らいの死体が山のように積み上がっている。・・・中々やるねえ、もしかしたらモルフィより強いかも。・・・でも、あれじゃあジリ貧かなあ。
しょうがない。
「やあ、大丈夫かい?」
「え!?・・・ッキャア!!」
あ、モロに食らっちゃった。・・・いや、私のせいじゃないよね。助けてあげようとしただけだし、向こうが勝手に驚いただけだもん。うん、私は悪くない。戦場で油断したあの子が悪い。
「ぐ・・ぅ・・・。逃げ・・・て・・・」
「あら優しい、こんな状況で他人の心配なんだ。じゃあちょっとお身体に触りますねえ」
倒れた少女を抱き抱えて上空へ避難する。うぇぇ、臓物塗れでばっちぃよぉ。
腸喰らいの繰り出す魔法を避けながら、平原全体が見渡せる高さまで昇る。うーん、魔法を扱えるくらい成長してるのか、早起きしてなかったら危なかったかもね。
それにやっぱり変だ。明らかに魔物が一箇所に集まっている、一箇所というかこの少女がいた場所に密集している。今も魔物の何割かは争わずに上空を、つまり私達を見上げている。
さっきの様子からこの子がわざと起こしたとは考え難い。となると原因は・・・。
「おーい、起きてる?起きてないなら起きてー」
「・・・・」
「起きてって言ってるじゃん」
「ガハッ・・・!っあぁ・・・?何が・・・」
よしよし、何とか一撃で起きてくれた。起きない時は何発いっても起きないからね、よかったあ。
「・・・えっ、あぁ・・・空ぁあ!?」
「はいはい、慌てないでね。私の目を見てごらん」
「ふぅふぅ、・・・貴方は?」
うーん、あ。
「やっぱり、呪われてるね。それも神呪かな、これは」
「ッ・・・、分かるの?これが」
成程ね、どうやら魔物達は彼女を追ってここに集まってきているらしい。こんな呪いを掛けられるなんて、かなり恨まれてるみたいだね。神獣である腸喰らいが多いのも納得だ。
「あのー、聞こえてますぅ?」
それに、彼女の魔力も少し気になる。人間に近いんだけど、少し違う。違和感程度のものだけどね。少し、神々の魔力に似てる気がする。うーーん。
「もしもーし!あのぉ!」
「うるさいなあ」
「ガハッ・・・」
さて、取り敢えず魔物を処理しようか。死体も燃やさないと二次災害が起きそうだしね。
焼け野原となったゴニモス平原に少女を寝かす。ここまで焼き払えば魔物の骨一本残らないでしょ。当分は生物が生息できないだろうけど。
まあ、私には関係ないか。そんな事よりまずはこの子に話を聞かないとね。
「おーい、起きてー」
「・・・・・」
「・・・起きないとまた殴るよ?」
「はい!起きてる、起きてます!!」
良かったあ、無抵抗の相手を殴るのは少しだけ心が痛いからね。平和に解決できるならそれに越したことはないのさ。
「それで、君は誰だい?見た感じフィーリア王国の人間には見えないけど」
「・・・・」
「・・・」
「・・」
「英雄パンチ」
「痛い!?」
何だ、喋れるじゃないか。急に言語能力を失ったのかと思って焦っちゃった。
「質問に答えてね、私も暇じゃないんだ。この後カテレイブに行かなきゃいけないんだから」
「ただのギャンブルじゃん!!そんな理由で女の子殴らないでよ!?」
一応、カテレイブが賭博都市ってことは知ってるんだ。
「じゃあ質問に答えてね。君は誰だい?」
「・・・」
「・・・英雄パ「あああ!!!サツキです!冬空サツキ!!!一応冒険者やってます!!」やれば出来るじゃないか」
珍しい名前だね、雰囲気的にサツキがファーストネームなのかな?
「成程ね。それで、その冒険者サツキはここで何をやっていたのかな。神に呪いを掛けられた、S級クラスの戦闘力を持つ異国の人間。かなり怪しいけど」
「・・・私は。・・・逃げてきたんだ」
「何から?」
「・・・エレウスの教会から」
「何故?」
「・・・・・」
また黙っちゃった。けどこれは言葉を選んでる感じかな。厄ネタっぽいよなあ、面倒くさいなあ。
「・・・信じてもらえないかも知れないけど、・・・・・私は、私達は異世界から来たの」
ああ、本当に面倒くさい。
「そう、君達はコウコウセイっていう学生をやっていたんだ」
「うん、それなのに気付いたらクラス全員でクロリアスの大聖堂にいたの。訳のわからない格好をした人達に囲まれて、転生者様、転生者様って」
クロリアスっていうのは連合軍を組織している国の一つね。クロリアス帝国。フィーリア王国が台頭するまでは周辺国で最強だったんだ。
それにしてもテンセイシャ、転生者って事なのね。生まれ変わった者、生まれ変わりねえ。
「その生まれ変わりって、君たちの世界では普通の事なのかな?」
「まさか!私達の世界には魔法も魔物もいないよ。概念はあるけど、それも物語上の存在だし・・・」
「そっかあ。・・・それで君は、戦争の道具にされるのが嫌で逃げて来たと、中々思い切りがいいね」
サツキ曰く呼び出されたのは三十一人。最初は動揺していたらしいけどクロリアス帝国の厚遇で気分高揚、あれよあれよと大半がやる気になってしまったらしい。馬鹿かな?
「勿論嫌がる人もいたよ?でもそういう人達もフィーリア王国を打ち倒せば元の世界に戻る方法が手に入るって言われて、結局は皆んな戦争に参加する事にしたの。でも私は無理だった、魔物を殺すのさえ嫌なのに人間なんて無理だよ」
「へー」
「・・・今のすっごいむかついたんだけど。・・・それで全部嫌になって逃げ出して来たの。その時にこの呪いを押し付けられたんだ、そのせいで一箇所に止まる事が出来なくてずーっと旅を続けてたの」
「良く旅を続けられたね。話を聞く限り、元の世界ではそういうのはあんまりやらないんだろう?」
「まあね、でもこっちの世界に来てからやけに身体が丈夫になったんだ。それこそドラゴンとかゴーレムとかも倒せるくらいにね」
そうかあ、最近指名依頼が空振りで終わることが多かったのはサツキが原因みたいだね。いやあ、スッキリスッキリ。何気に気になってたんだよね、謎の女冒険者。
「私のことは話したよ、次は貴方の事を教えて。さっきの炎魔法とか、只者じゃないでしょ」
「やだね、私の事はまだ教えられないよ。・・・取り敢えず王都に行こうか、ゴブリンと情報共有した方が良さそうだ」
「何でゴブリン・・・?」
今の会話で魔力の違和感も、転生者が呼ばれた理由も、大体分かった。そこまで警戒する様な内容じゃないし対策の必要も無さそうだ。後は、
それにしても異世界人て馬鹿しかいないのかなあ、これだけ証拠が揃ってるのに何で元の世界に
ホント、可哀想だね。