どうも、常夏鳳梨です。
今回はベレリアンド戦争から七年後の時代にて、ようやく逮捕された秘密収容所の関係者に纏わる話です。
あと、今回はオルクセン王国史の根幹を担うネタバレが少しだけあるかも?
星歴八八四年の夏。
男のエルフ達が保護され、オルクセン国内のヴァッサービッテの地に移住してから七年が経ち──エルフィンドが完全に統合された頃、男のエルフを迫害を扇動したと思われるエルフ達が、各秘密収容所の所長達を含めた関係者が逮捕された。
彼女達の大半は旧エルフィンドに潜伏しており、一部がオルクセンへと逃亡しようとした際、オルクセン軍に逮捕されるという末路を辿っていた。
また、そのエルフ達の中には他人になりすましている輩も居たため、オルクセン軍の捜査が難航したのは言うまでもない。
この頃になると、エルフィンドが隠し通していた男のエルフ達の存在は周辺諸国にも伝わっており、多くの国々は彼らの存在に驚いていた。
と言うのも、男のエルフはその存在自体が疑われていたため、キャメロットを含めた周辺諸国はそのことも含めた上で、エルフィンドの所業に震撼していたのである。
幸いなことに、男のエルフ達には白だの闇だのと言った差別偏見は無かった。
それどころか、同じ男のエルフとして括られていたこともあってか、今のところは諍いや争いを起こす気配がなかったため、保護したオーク達が安堵したのは言うまでもない。
ただ、そんなことなど知らない秘密収容所の所長達はオルクセン軍の尋問に対し、こう答えるばかりであった。
「我らは偉大なる支配者の命によって動いていた。故に、深い理由などは無い」
それを聞いたオルクセン軍の上層部は、また偉大なる支配者が関わっているかと頭を悩ませていた一方、それを聞いたグスタフは彼らとは別にこう思った。
あぁ、転生者達が残した負の遺産がここでも芽吹いていたのかと。
彼自身はいわゆる転生者だったものの、ヴェラールとは何の関係のないイレギュラーな存在であった。
そのため、ヴェラールとこの世界に纏わる事実を知った時の衝撃は計り知れないものであったが、それと同時に今回の一件について違和感を覚えたようで、エルフィンドに居るシュヴェーリンに向けて手紙経由でこう命じた。
出来る限り、その偉大なる支配者からの具体的な命令の内容を引き出して欲しい──と。
それを聞いたシュヴェーリンは、すぐさま了承する形でその命令を受け取った後、早速グスタフからの指示を実行していた。
エルフィンド最大の秘密収容所にして、その界隈では絶大な影響力を持っていたエルフ──アドミレイユ秘密収容所の初代所長こと、カリア・ティンクティオを尋問するという形で。
「──お前さんがカリア・ティンクティオか」
ティンクティオが所長を務めていたアドミレイユ秘密収容所は、エルフィンド国内では最大と称されていた収容所であった。
そのため、そこには多くの男のエルフ達が収容されていたが──環境自体は非常に劣悪だったがために、星歴八八四年時点では史上最悪の秘密収容所として名を馳せていた。
その秘密収容所の初代所長であったティンクティオは、元々は高名なエルフの一族出身であったがために、秘密収容所の原案となるアイデアを提案した当時の有権者に従う形にて、一人のエルフとしてその考えを指示。
結果的に言えば、そのこともあってかアドミレイユ秘密収容所の所長の座に就任し、その二一〇年後に心臓関係の持病の悪化による退職するまでの間、多くの男のエルフ達に対する虐殺に加担していた。
つまり、ティンクティオは秘密収容所の根幹を知るエルフだったのだ。
そのため、シュヴェーリン自身が尋問に出ていたのである。
「お前は──あぁ、ここのオーク達の親玉というわけね」
「そうだ、そう言うお前は秘密収容所の親玉だったのだろう?」
彼がそう言った瞬間、静かに発言した張本人であるシュヴェーリンを見つめるティンクティオ。
そして、そのまま彼を誘惑──することはなく、そこまで調べていたのかという反応になっていた。
だからなのか、シュヴェーリンの言葉が正しいとばかりににこう言った。
「否定はしないわ。そう、否定はね」
否定はしない、けれども肯定もしない。
そんな姿勢を見せつけるかのようにそう言うティンクティオに対し、当たり前だが疑問を抱いていた。
事実を否定しない割には、何故その事実を肯定しないのだろうと。
彼がその事実に気がついた途端、続々と疑問が湧いてきたようで──いつの間にか彼女に対してこう尋ねていた。
「──何故そう言い切る」
「だって、男のエルフは需要は無いのが必然でしょ?」
男のエルフには需要が無い。
彼女がハッキリと言い放った言葉に対し、シュヴェーリンは思わずこう思った。
彼女は──カリア・ティンクティオは男のエルフのことを同じエルフではなく、全く別の何かとして見ている。
それは男性嫌悪、キャメロット語でミサンドリーと呼ばれるソレと似ているようで、どこかそう言い切るには違った方向性だったため、彼の疑問はますます深まっていった。
そんな彼を尻目に、ティンクティオは目の前に居るシュヴェーリンに向け、こんなことを言った。
「そもそも──男のエルフの人気なんて、女のエルフと比べたら大したことないでしょ?だから」
「──だからこそ、ああなるのは必然と言いたいのか」
シュヴェーリンがそう言った瞬間、分かっているじゃないとばかりにニチャアと笑うティンクティオ。
その笑顔を見た彼は何とも言えない不気味さを感じたのか、ゾッとするような感覚に陥っていた。
そんなことなど知らない彼女は、徐々にその舌が温まってきたようで──饒舌にこう喋り始めていた。
「そう、だから男のエルフが生まれないようにしたらしいんだけど──バグか何かで男のエルフ達がたまに生まれるようになった時は、流石に私でも驚いたけどね」
「仮にも、彼らはお前達と同じエルフだろう?何故そんな言い方が出来る」
彼がそう言った瞬間、その言葉が彼女の地雷を一気に踏み抜いたようで──ティンクティオは一気にその顔色が変わったかと思えば、まるで冷めるかの言い方でこう言った。
「──は?」
それはまるで心外だと言わんばかりであったため、シュヴェーリンは再びゾクッとするような感覚に襲われていた。
そんな彼を知ってか知らずか、ティンクティオはさっきの余裕そうな様子とは裏腹に、自ら美しい髪をクシャクシャと乱しては何かをブツブツと呟いていた。
その数秒後、ティンクティオ自身は彼に向けて一言
「まぁ、オーク推しのアンタには分からないでしょうね──女エルフの造形美と神秘さってやつがねぇ!!」
と忌々しげに言っていた。
それから彼女はシュヴェーリンに向け、吐き捨てるかのようにこうも言った。
「そもそも!!私達の介入のどこがいけないのよ!!運営側の目は腐ってるわ──!!」
「お、オイ、何を言って」
「現に何年か前に男のエルフが根絶された時だって、何も言わなかったのに──!!後出しは卑怯すぎるんだけど!!」
壊れたかのようにそう呟き始めるティンクティオに対し、正気じゃないとばかりの反応になるシュヴェーリン。
それはこの世界に住まう者として当然な反応であったのだが、そんなことなど知らないティンクティオは更にブツブツと呟いていた。
──今現在のこの状況が気に入らないとばかりに。
「それに!!何で私達が負けてるのよ!!エルフは完璧で最強の種族なのにぃぃぃぃぃ!!」
不満を爆発させるようにそう叫んだ瞬間──突然心臓の辺りを抑えたかと思えば、そのまま倒れ込むティンクティオ。
それを見たシュヴェーリンは、彼女の持病が悪化したのだとすぐさま察したようで、その部屋に入ってきた部下達に対して治療するように命じた。
その結果、ティンクティオの命は何とか助かったものの、彼女の発言はもはや常軌を逸したモノだったため、その報告書を読んだグスタフは言葉を失っていた。
──まさか、彼女はヴェラールのプレイヤーなのか?
だとしたら、自分と同じくこの世界に真の意味で転生した存在なのだろうか?
グスタフは悶々とそう考えつつも、正気に戻らなかったティンクティオがそっちの病院に入ったこともあってか、結局そのことは最後まで分からずじまいであった。
その後、これ以上は追求しても何も出てこないと判断したオルクセン側は、彼女達に対する尋問や追求を辞めた反面、その秘密収容所に関わったエルフ達に極刑が課されたのはまた別の話である。
はい、と言うわけで──ちょっとだけ男のエルフ達が迫害された理由が分かった回でした。
うんまぁ、いつの間にやらシリアス寄りと言うよりかはガチシリアスになってしまった件。
だって──偉大なる支配者とエルカスだものねぇ?(遠い目)
ちなみに、ティンクティオさんの正体はプレイヤー→エルフにガチ転生したゲーマーだとか。