男を破滅させるタイプの小悪魔系ギャルが八十稲羽に転がっていますがソイツ男です 作:rikka
「夏祭りの売り上げ、そんなに出てたのか……」
「凄かったよ。ウチは酒屋だから、いつも通り焼き鳥やりながら缶とか瓶のビール適当に冷やして飲める席用意してただけなんだけど、昼からこんなに客が来るなんてって慌てて肉とか串とか追加発注出して……。食い物系の屋台はどこも大変だったんだろうさ。イカとか、飴とか」
「マジかぁ……」
「それでも廃棄の愚痴とか耳に入ってこないし……多分、どこも売り上げ相当よかったんじゃねぇかな」
謎の女装少年こと『俺』探しでごった返した夏祭りを終えて、騒ぎに便乗してカツアゲやら騒動を起こそうとしていた族やチンピラを完二とこっそり潰して、クラスの連中集めて夏の終わりの花火を楽しんでからの二学期開始。
もはや馴染みのクラスメートたちの話題は、異様に盛り上がった夏祭りについてだった。
「まぁ、実際凄かったもんなぁ……ゴミ」
あと釣銭の催促。
何かと小銭集まりやすいウチに色んな屋台の人間が千円札の束持って来ての両替要請多くてクッソ忙しかったし緊張した。
マジで今年は初めて尽くしだったな。
「お前、翌日どころかその日の夜から速攻で掃除入ってたんだってな。異例のお巡り同伴で神社周りだけじゃなく商店街とかも」
同伴ってか一緒にやってくれたんだけど……。
交番勤務の婦警さんらには本当に申し訳ないけど助かった。
あそこの神社が荒れてると、どこからかキツネがやってきて俺の服咥えて連行しようとするんだよなぁ。
せっかくの服に穴開けたくないし、キツネはグルグルしつこいしでやるしかないという……。
「……俺のおかげで金入ったろ? っていう気持ちも正直ある。だけど、色々荒らしてしまって申し訳ありませんでしたっていう気持ちも確かにあるんだ。いやマジで……」
「分かってるって。じゃなきゃ千影がわざわざ神社だけじゃなく商店街まで掃除なんてしねぇだろ」
祭りの後の空き缶からタバコのポイ捨て、菓子袋やコンビニ弁当の成れの果てまで……今年はマジで酷かったからなぁ。
久々にゴミ袋複数を一杯にするほど頑張った。
単純にゴミ拾いの範囲と時間増やしたってのもあるけど。
久々に普通の学ランに袖通してアチコチ頭下げて回ったわ。
大抵は笑って「稼がせてもらったよ」って許してくれた。
小西の親父さんには「これだからお前みたいな
そのあとお袋さん出てきて夫婦喧嘩になってしまって……尚紀と早紀先輩に「こうなると長くなる」って手を引かれて『愛家』に避難したけど……。
顔出さないと逆に引き摺ると思って覚悟決めて行ったんだが……どうにもコニシ酒店のおじさんとは相性悪い。
姉弟とはそれなりに良好な関係を築いている……と、思いたいんだが。
今度惣菜大学で改めて奢らせてくれ。
早紀先輩も合わせて。
「ってか、今大変なのは千影の方じゃん。始業式終わってもこうして教室に残って
「……正直、タイミング見失っちまった感はあるなぁ……」
窓の脇に束ねて留められているカーテンを盾に体を隠しながら、こっそり校門の方を確認する。
いる。
見慣れない大きな車数台に、出待ちしているカメラマン連中。
――この夏、SNSで突如話題になった噂の女装少年。その彼が通っているという学校まで来ています!
――熱心なファンもすでに存在しており、ネットには彼女――いえ、彼の日常の一幕を切り取った写真が多数拡散しており……。
「女装してる奴なんて都会じゃ珍しくねぇだろ、そっち行けよ」
「いや……中学でそのレベルの奴はまずいねぇって、千影」
日頃こっそり撮らせてやってるのとは別に、ガチの盗撮……って言っていいのかな……まぁ、一応隠し撮りか。
そっちが拡散した結果、メディアに嫌なバズり方をしてしまっている。
「そもそもなんで今なんだよ。俺ずっと前から女装してたじゃん。去年の方がきわどいの着てたじゃん。……セーラー服が解禁になったからか?」
「千影が河川でゴミ拾いしてる動画だよ。アレがすげぇ広がってるってパソコン持ってる連中が言ってた」
「ゴミ拾いって……嘘だろホント……。色んなところに無理言っての女装の代償としてのちょっとしたボランティアじゃん。ゴミ拾いの時は服装決まってるからいいデジカメ持ってるいつもの奴最初以外来てないし、となるとどうせガラケーの画質悪いカメラでの動画だろう? なんでそんな広まるのさ」
「メイド服着てたからだろ」
「それか」
しかしどうしたもんか。
朝からいたなら察して万が一の変装用に学ランとメイク道具持って来ていたけど、アイツら始業式やってる真っ最中に集まりやがったからな……。
まっすぐ突っ切るしかねぇのか?
クソ、さすがにそれは面倒だ。面倒くさい。
有名になってしまった代価っつってもコレはあんまりだろ。
今メイク普通なんだぞ。
「……しょうがねぇ、車持ってる人に電話で頼んで迎えに来てもらうか」
「? 誰かいるのか? お前の所の親父さんは今仕事中だろう? お袋さんがいても車がないんじゃ……」
「この時期のこの時間なら、ワンチャン天城屋旅館の人に助けてもらえるかも。送迎の金田さん」
「あぁ……。そうか、そういえばお前、シーズン時に数多い団体客来た時は荷物の運搬手伝ってるんだっけ。今年も数回」
「指導込みの賄いチャンス+入浴券&ちょっとした『お駄賃』と引き換えにな。それがなくても週一日帰りで温泉入りに行ってるし、なんなら天城屋旅館の従業員全員の名前と顔覚えてるわ」
金田さん手ェ空いてるかな。
送迎あるとしたら駅までの御見送りだけど……昨日温泉入りにいった時点でもうシーズン客は大分掃けてる感じだったし、実際雪子先輩――ユキ先輩に聞いたら今残ってるのは三組だけって言っていた。
たしかどれも休みってよりは遠方からの仕事関連での宿みたいだし……。
帰宅というごく普通の行為のために頭を悩ませていると、ガラガラと教室の扉を開けて見知ったダチが入って来る。
「チカ、駄目だ。裏門側にも数人いやがったぞ」
「……マジかぁ」
「お前の知り合いの……え、エビ? 先輩が話を聞いてくれて、そっちから出てみて様子を見てくれたんだがよぉ……。こっちはカメラこそ持ってねぇが、お前だったら足止めする気満々って感じで声掛けてたぜ。」
ワンチャン掛けてたけどやっぱ駄目か。
すまん完二、無駄手間かけさせた。
海老パイセンもすんません。
「クソ……ムカつくぜアイツら。大勢でワラワラ踏み込んでヘラヘラしやがって……」
「先に帰った姉ちゃんからもメール来ましたけど、商店街で色んな人に千影の事聞き回ってるって。……これもう警察に電話した方が早いかも……」
いや、そもそも学校に警察来てないって事は校長らが黙認してるってことだろ。
思わぬ機会が来たから俺を看板にするつもりか。
女装以外は問題児と言われないように気ぃ張って来たってのに、だからこそ表に出すのに問題ないと取られたか。
「? 何言ってんだ尚紀、俺とチカが揃ってんならぶっ飛ばした方がはえーだろ?」
「……いや」
「巽、お前……」
そしてなんでお前はやる気満々なんだよ。
俺と尚紀は顔を見合わせてため息を吐く。
――如月く~ん、如月千影君、残ってる~?
「……あ?
「放送で呼び出すんじゃなくて自分で足を運ぶなんて珍しい」
「そりゃ、今校内放送で俺の名前出したら面倒だからな」
さすがにテレビには出てないけど、ネットにはもう流されてるからな。
外にいる連中も把握しているだろう。
……まさか家の周り固めてないだろうな?
幸いこの時間は人いないハズだけど……。
「わり、二人とも。ちょっくら行ってくるわ。てか、このままだとアレだから先に帰っといてくれ」
「いや、無理矢理帰る時の壁役は必要だろ」
「っつか、なんから今のうちに追っ払って来るぜ! 族に比べりゃなんでもねぇ!!」
「「お前は止まれよ」」
尚紀、ごめん、悪いけど完二のストッパー頼む。
「すいません教頭先生、ここにいます」
「あらぁ、如月君、やっぱり残ってたのね」
報道陣が引いてないし騒いでないから当然分かっていただろうにこの狸……っ。
「……騒動を起こしてしまってすいません。どうにか騒ぎがこれ以上大きくならないように帰宅しますので」
「あぁ、いいわよいいわよ。君の存在で少しここいらも賑わい始めたしねぇ……。あぁ、いや、それはいいの。悪いけど職員室まで一緒に来てくれないかしら?」
「職員室、ですか?」
「うんうん。実は東京のある私立校から電話が来ていてねぇ。君にとって、いい話が出て来たのよ~」
……東京の私立校。
…………来た、か?
「月光館学院という有名な私立校からね、地方の優秀な学生を一時的に集める、いわば特殊な国内留学プログラムのお誘いが君を対象に来たのよ」
来たか。
祭りの時から俺の情報がネットに出回っているって話聞いてからずっと覚悟してたけど。
「うんうん。君は定期考査のみならず、全国模試の成績でも我が校上位の成績を出してくれているからねぇ。一つ上の天城さんを越えられる子がこんなすぐに出てくるとは思ってなかったわぁ」
「……であれば、急いで向こうとお話させてもらったほうが良さそうですね」
このオバハン、話が長くなり出すと段々他の人間下げて目の前の人間持ち上げる悪癖あるから好きじゃねぇんだよな。
さっさと切り上げて本題に入った方が吉だ。
「あぁ、ええ、そうねぇ。電話番号はメモしているからここから――長くなりそうならお家まで送るわ。車の中ならマスコミも手出しできないでしょう?」
まず規制してくれ。
電話の事がなかったら、アンタこのまま俺をダシに学校の知名度上げるつもりだったんだろう?
俺が面倒避けて残る事を読んで、タイミングを見計らって邪魔を入れずにマスコミの前に引き摺り出すつもりだったんだろう?
で、校長もそれに乗ったんだろう?
俺が生きて帰れたら覚えていろよ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「桐条先輩、全員集まりました」
「理事長まで来るなんて、なんか進展あったんスか?」
9月3日。木曜日。
東京都港区、月光館学院巌戸台分寮。
満月の度に現れる大型シャドウの討伐成功を繰り返しながら謎の塔、タルタロスの攻略・調査を進めている特別課外活動部は、そのメンバーも大きく増えていた。
ペルソナ能力を扱う犬、コロマル。
対シャドウ特別制圧兵装のアイギス。
初等部という幼さでありながら『ペルソナ』能力に目覚めた天田乾。
長く離脱していた初期メンバーの一人、荒垣真二郎の復帰を迎えて更なる活動を進めていた。
次の満月は二日後に迫っている。
更なる――そして倒さなければならない強敵に備えてタルタロスでの実戦訓練を重ね、あるいは体を休めて万全の体調を整えるべき段階で緊急の集合が入っていた。
「…………」
夏の間に入った様々な新情報により、元よりあった桐条グループへの不信感……もとい、嫌悪に加えて気まずさを含めた様々な感情がある岳羽は一瞬だけ桐条美鶴と顔を合わせ、すぐに目線を逸らしてしまう。
同じ二年生である山岸風花はその様子を見て、何か声をかけようとして何もできず俯いてしまう。
また、先に集まっていた三年生組の男子勢は何かの書類や写真のコピーの山を前に、頭の痛そうな顔をしていた。
「いやぁ集まってもらって申し訳ない。今日は荒垣君の復帰に続いて朗報があってね」
「……朗報?」
リーダーである
「先の6月。私と岳羽が大型シャドウに襲われた時、加勢してくれた謎のペルソナ使いがいた。有里達は覚えているな?」
美鶴の言葉に湊は頷く。
急造のコンビを組んで戦った存在だけあって、彼は
シャドウ絡みではないがその顔を知っていた荒垣は頷き、まったく知らない天田は風花に「誰です?」と小さな声で訊ね、風花は彼に「前に協力してくれたすっごく強い女の子」と答えた。
「おぉ! ってことは、あの可愛いヤンキーッ
一方湊らと同じく、その顔立ち――目元は鋭く、顔も背丈も小さく、しかし武器を使わず拳と蹴り、そして頭突きを駆使してシャドウに立ち向かう姿を覚えていた順平が歓喜の声を上げる。
ただ、その喜びの声は純粋なモノというよりは、意識して張り上げたような部分がある。
「あぁ、うん。その……」
だが、その順平の言葉とは逆に理事である幾月は、いつもと同じ柔和な笑みを浮かべながらも少々言葉に詰まっている。
「名前は
「八十稲羽って……どこだっけ。聞き覚えはあるんだけどなぁ……」
「……俺ッチもちょーっち自信ないけど……確か……鈍行でギリギリ行ける終点の田舎じゃあ……なかったっけ?」
路地裏で助けてもらった際、ゆかりの軽率な言葉によって潰れたが言葉だけで上手く立ち回って助けようとしてくれたのを覚えている順平は、その慣れた様子から少女は都会の出身かと思っていたので酷く驚いている。
「校内の部活動には参加していないけど、隣町である沖奈市のカポエイラクラブに所属。前ここに来たのはこのクラブでの活動のためだったんだねぇ。あぁ、アイギス。悪いがこの資料を皆に」
「了解であります」
二年生組に、今三年生組が見ているのと同じ物が配られる。
学生証のコピーと共に記載されている情報は間違いなくあの時共闘した少女の物であった。
「カポエイラ。なるほど……蹴り主体の立ち回りなのにも納得だ」
「幼い頃から通って今ではクラブの主力の一人。6月の大会でも入賞を果たしている」
「……コイツ、あン時路地裏にたむろってる奴を気絶させた奴か。そういや、あン時も蹴りで綺麗に顎揺らしてたな」
そこに並ぶ情報はどれも、彼女が優秀な事を示している。
学業成績から町の清掃を始めとするボランティア活動への参加。
「成績優秀、かつ数々の地域貢献の実績があって人柄も問題ナシ。警察官も含めた協力体制を敷けるほどの人脈。いやぁ、こちらの学院に呼び寄せる理由に事欠かなくて非常に楽だったよ」
「……あの……理事長……」
「? なにかな、伊織君?」
「なんか、備考欄の所に『暴走族との抗争あり。なお正当防衛と認められている』って書かれているんスけど……」
「ああ、ご友人と一緒にやっちゃったみたいだね」
「やっちゃったんスか!? ボーソーゾクを!?」
「うん。チーム一つが丸々壊滅。未確認のためここには載ってないけど先月も一つ。凄いよねぇ」
よく見ると備考欄までギッシリ埋まっている。
一人暮らしの高齢者を狙った数々の詐欺の察知、並びに未然の阻止。
地元小学校の通学路と重なる危険車道に関するレポートの作成提出、ならびに直接交渉による速度制限地帯の陳情成功。
かなり地元に貢献している事が分かる。
「如月君ご本人と電話で話した所、詳しい説明や我々の活動への参加はともかく、とりあえず三学期までのこちらの一時編入には大変前向きでねぇ。ご両親からもすんなり了承をもらえたので、多少の調整をして9月下旬から10月上旬にはこちらに来られる。残念ながら明後日の満月には間に合わないけど、説得次第ではまた一人強力なペルソナ使いが――」
「……あのぅ」
そこで、同じように資料を見ていた山岸風花が、おずおずと口を開く。
「この資料、ちょっと間違っていませんか?」
山岸の発言に、三年生組の内二人が小さく肩を揺らす。
「風花、どうしたの?」
「えっとね、ゆかりちゃん。この子、よく見たら……性別の所が全部『男』になってるの」
「うええ?」
風花の指摘に、順平が目を細めて資料を見る。
「ありゃ、本当だ。学生証のところ男になってる。セーラー服着てんのに」
「クラブの会員証も男に〇がついてる……どうなってんの?」
資料の中には、なぜか隠し撮り風の写真の数々がある。
なぜか髪の長さが写真によっては大きく違い、服装の種類も多種多様だが顔は間違いなく本人だ。
「こ~んなどう見ても可愛い子を、男だと間違うかぁ? 確かに髪短めだけど……なぁ?」
「……その、伊織」
桐条美鶴が、言いづらそうに口を開く。
「それで合っているんだ」
「…………は?」
「如月千影の性別は、正真正銘……『男性』だ」
会議室の時間が、止まった。
「いやぁ、女生徒を虱潰しに探して見つからないわけだよ。彼女――いや、彼は地元じゃ有名な子らしくてね」
理事長の幾月が、本当に困っているのか判別の付かない苦笑を上げている。
「いわゆる『女装少年』という奴なんだ。ハッハッハ、またもや驚きだよねぇ、ハッハッハ――」
「ハアアアアアアアアア!!!???」
「お、お、男ぉぉぉぉぉぉぉ!!??」
岳羽ゆかりと伊織順平は、膨大な隠し撮り写真を見て絶叫する。
「いや、いやいやいや! これどう見ても女の子でしょ!? こんな深いスリット入ったチャイナ服わざわざ着る男います!?」
いるんです。
「肩出してるパンクな恰好だって、大きくはないけどちゃんと胸ありますよね!?」
パッドなんです。
あとヌーブラ。
「如月千影の写真は全て精査したが……記憶に残る顔とも一致する。……私もまだまだ世間を知らないな。世界は広いと改めて実感する。……勉強になるな」
なっちゃダメなんです。
「結構本格的にやる子みたいでねぇ。これらの写真は最近ネットに上げられた物なんだけど、どうにも去年から熱心なファンが複数いるようで、その人物らによって撮影・投稿された物だという事だ」
「……信じられねぇ……」
順平は未だにパラパラと写真のページとめくり男ではない証を無駄に探し求め、岳羽は逆に一枚一枚をじっくり観察して男の要素を必死に探している。
風花も同じように写真をめくる中で、手が止まる。
「あっ」
ある一枚の写真。
恰好そのものは普通の――普通の女装だ。
多分ポロニアンモールを歩いてても気付かれないだろう完璧な女装だが、風花の目を引いたのはそこではない。
「このジャケット……」
「そう。我々がこの写真に写る人間が、あの時の彼女――彼だと確信を持ったのはそれもある」
今も風花の部屋のクローゼットに納められている、ジャケット。
風花が能力を使った疲労で倒れた後に、かけてくれた物だった。
「地方の祭りの準備を伝えるローカルニュースのVTRに偶然映った彼女――どうしてもこう言ってしまうねぇ。ともかく、如月君がたまたま映ったのが切っ掛けだ」
祭り準備を取材したニュース特番。
その一瞬の間に移ったパンクライクのミニスカ少女――少女にしか見えない如月千影の映像の一瞬を切り取り、引き延ばした写真が資料として納められている。
「ネットの掲示板で「このニュースの美少女はどこの誰だ?」って騒ぎになっていた所にそれが女装した中学生であるというタレコミが多数発生。さらには君達の手元にあるような写真が多数ネットに流れて……偶然それが目に入った美鶴君が気付いたのさ。あの時のペルソナ使いだと」
「すでにワイドショーなんかでもちょっとした騒ぎになっている。学校にまで押しかける局が出る程にな」
「……変わっていて目立つというのは分かりますけど……なんか、酷いですねソレ」
理事長の後に続く真田の説明を受けたゆかりの言葉に、幾月は「そうだねぇ」と言いながら頷く。
「如月君本人もそれが気になっているみたいだねぇ。だからか、『メディアを正面からねじ伏せるので半月猶予下さい』……なんて言われちゃってね。編入が下旬から来月上旬予定なのはそういう事もあるのさ」
なにするつもりだこの男。
一瞬、作戦室にいる学生たちのバラバラだった心が一つになった。
「まぁ、というわけさ。本人はペルソナを用いた戦闘は経験済み。ひょっとしたらその蓄積は美鶴君らと並ぶかもしれない。……研究者としても実に興味深いねぇ。召喚器どころか投薬も必要としないほど安定したペルソナ使い。いやぁ、会うのが楽しみだ」
湊は何を考えているか分からない顔で、延々と彼の写真を見ている。
順平は「嘘だろ……。あの口調怖いけど優しかった子が……」とブツブツつぶやく中。
「……あのぅ……」
最年少の天田が、ざわめく作戦室の喧噪を断ち切るように、でも弱弱しく腕を上げる。
「どうしたの? 天田君」
「えぇと、ペルソナを使える仲間が増えるかもしれない。……てことは分かったんですけど」
パラパラと、「如月千影」の資料――一部読めない漢字があるので写真を眺めるのが主だったが、それでも分かる事がある。
「えと、結局、男の人……なん、ですよね?」
「…………多分」
写真を見てメイクや服のチョイス、着こなしから男であるという確信を掴もうとして――むしろ自分の自信を失くしかけていた。
「どうして女の人の格好なんてしてるんですか?」
ラウンジの空気が、一瞬にして緊張で固まった。
どことなく、気まずい空気が漂う。
(どうして女の服を着るか、か)
その空気をものともせず、有里湊は資料の写真をまためくる。
えらく映える上等な着物を身に着け、袖を紐でくくって接客している如月千影の、最近撮られたと思われる写真を。
その向こう側にも彼にレンズを向ける多数の人間が写り込んでおり、その人気――というより、話題性の高さをうかがわせる。
だが、有里湊にとっては――
(どうでもいい)