男を破滅させるタイプの小悪魔系ギャルが八十稲羽に転がっていますがソイツ男です   作:rikka

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無茶あるかなと思ったけど、ド深夜に五歳前後の子供連れてやよい軒に来た親子見た事あるし問題ないだろう(多分)


009:10月4日

「少年、君……目的地が辰巳ポートアイランドとは結構離れてるねぇ。アタシいなかったらどうしてたのさ?」

「え? 普通にモノレールに乗って行きましたけど。前にも行ったことありますし」

「……お巡りはもうちょい仕事しろよ。田舎も都会もソコは変わんねぇな。……いや、こっちは広くて人多いから数足りてねぇだけか」

 

 巌戸台の駅まで出会った、通りすがりを自称する変なお姉さんは、モノレールに乗る切符を買う間も、モノレールに乗っても、降りても、こうして歩いている時も、ずっと僕の手を握っている。

 

「あの、いい加減、手を放しませんか? もう人目もほとんどありませんし」

「んー? ギリギリまで待ってってば。分かるだろう、少年?」

「? 分かるって……なにをですか?」

「あの……あれだよ。小汚いオッサンが犬連れてるだけで『散歩中の近所のおじさん』に見えるのと同じだよ」

「……はぁ……」

 

 飴が好きなのか、また新しい棒付きの丸いキャンディを口にしたままお姉さんは僕の手を取って、ずっと横にいる。

 

「手を握って近くにいるから百歩譲って帰宅途中の姉弟(きょうだい)に見られるけど、ここでアタシ達が余所余所しかったら、こんな時間にうろついてる小学生に張り付いてる怪しい女のハッピーセットになっちゃうっしょ?」

「……響きが全然ハッピーじゃない組み合わせですね」

「ね? それこそお巡りに声通り越して手錠掛けられちゃうよ。時間が時間だし。これならお巡りに声掛けられても『喧嘩して家飛び出した弟連れ戻しに来ました』で多分通せるっしょ。あながち嘘じゃないんだし」

 

 一番怖かった、荷物について聞かれる事はなかった。

 アイツを殺すために寮の作戦室から持ち出した、僕の槍について。

 

 影時間になってモノレールが動かなくなるギリギリにポートアイランドに……『あの場所』に行ってア(・)イ(・)ツ(・)を待つ。

 

(路地裏の前で影時間になるのを待つしかないか……。実際、怪しまれずにこっちまで来れたのはお姉さんと一緒だったおかげで……)

 

 最初見た時は化粧が濃いように感じたけど、似たような化粧の人に比べてあんまりキツい匂いがしない。

 ほんの少しだけお化粧品か、あるいは香水か何かの仄かな甘い匂いがするけどそれだけだ。

 

 モノレールに乗ってから、何かが鼻を刺激したのかくしゃみをしたら自然と薄手の上着を掛けてくれたけど、それからも不快な匂いはしなかった。

 

「……本当に、すみません。巌戸台の方に用事があったんですよね?」

「あぁ、気にしないでいいよ。どうせ今日は荷物運んで荷解きするだけだったし。それで、行先ってのは――」

「はい。僕の家があった近くです。……一応、顔を出しておきたくて」

 

 嘘じゃない。本当だ。

 顔を出す。

 そしてア(・)イ(・)ツ(・)に思い出させてやる。

 思い出したくないなんて言っていたヤツに、自分があの場所で何をしたのか。

 

「……少年」

「はい、どうしました? あ、目的地までもうすぐですけど」

「……その、さ」

 

 そう考えていると、お姉さんが握っている手に力を込めてくる。

 

「本当に偶然通りすがっただけの不審者に、大層な事は言えないんだけどさ」

「??」

「大丈夫? めっちゃっくちゃ思い詰めてますって顔してるよ?」

 

 とっさに、返す言葉が思いつかなかった。

 

「その……なんつーか……少年、マジで怖い事あんなら言いなよ? アレだったら保護者さんトコ行って一緒に頭下げてやるさ。怒鳴られるのも慣れてるし。それに、万が一ホントにヤバかった時の警察への頼み方は良く知ってるからさ」

「……どうして心配してくれるんですか? 会ったばかりで、関わる理由もなかったのに」

 

 ずっと、このお姉さんは心配してくれている。

 大きなスーツケースを転がしてまでの用事があるなら、そっちを大切にしていいのに。

 

「アタシのためだよ、少年。気になった事ほったらかしておくと、長く引き摺るタチなのさ。ま、そーゆーわけでもう少し少年の家出に付き合わせてよ」

 

 こうして、優しい言葉をくれる。

 時々、それが素なのか言葉遣いが乱れる瞬間があるけど、本人なりに丁寧に接しようとしてくれているのだろう。

 

「はい。まぁ、もうすぐそこなんですけど……」

「……そこ?」

 

 怪訝な顔をされるのは分かっていた。

 だって、ここはもう、家が建つような場所じゃないから。

 

「……二年前まで、この辺りに住んでたんです」

 

 トボトボと歩きながら、当時を思い返す。

 母さんと二人で、暮らしていた頃だ。

 

「ここに?」

「はい。二年前に大きな……『交通事故』があって……それでここら一帯大きく様変わりしちゃいましたけど」

「…………ひょっとして、お母さん」

「はい、その時に。……それからはずっと親戚の援助を受けて……色々あって今は、寮暮らしなんです」

「……日付は二年前の、今日だったりする?」

「…………はい」

「時間も?」

「……深夜零時でした」

 

 時計を見る。

 もうすぐだ。

 もうすぐ影時間が来る。

 今日は満月。

 あの大型が出て、寮の皆はそれを倒すために出撃する。

 

 だから、邪魔されない。

 

「そっか。……そういうことか……」

「ええ。あ、ここです。……あの、すみませんお姉さん、この路地の入口を見張っていてくれませんか?」

「ん?」

「……二人になりたいので」

 

 嘘は言っていない。

 象徴化するとはいえ、アイツを殺す場所にこの人を巻き込みたくない。

 アイツを殺して、そして――

 

「今は幸い誰もいないようですけど、変な人達が普段たまり場にしてるかもしれないじゃないですか」

「……ん~~~~。まぁ、アタシは普通の女じゃないから別にいいけど……ここ以外にも入れる場所あるんじゃない?」

「きっと大丈夫ですよ。だって、一番目立つのはここでしょう?」

「……まぁ、たしかに」

「歩いていて体も温まりましたし、ジャケット、お返ししますね」

「ん? おう」

 

 大丈夫。

 影時間に起こった事は、現実では自然な事に変換される。

 

「なにかあったら、すぐに大声上げるんだよ? 少年」

「はい」

「なにかあったらっていうのは、危ない目にあってからじゃなくて誰かいた時点も含めるからね? 少年」

「……はい」

「声が届かなくなるくらい遠い場所じゃないんだよね? 少年」

「……あの、はい」

「ちゃんと約束できるかい、少年?」

「あの、ホント大丈夫ですから」

「いいから」

 

 やけにしつこいお姉さんは、やっと手を放してくれたかと思えばこんな汚いコンクリートにわざわざ膝を付いてまで目線を合わせて、さっきまでつないでいた手を握りしめて、小指を立てて見せている。

 

「約束だよ? 少年」

「……」

 

 咄嗟に、目を逸らしてしまった。

 目を逸らしながら、お姉さんの小指に僕の小指を軽く絡ませる。

 

「はい」

「……ん、よし。それじゃ会って来な」

 

 お姉さんが少し強く、絡ませた小指の力を強めて、離す。

 

「じゃあ、行ってきます」

「あいよ」

「……覗かないでくださいね?」

「プール授業直前の女子みたいなことを言うね、少年。分かったから行っておいで」

 

 目指す路地裏の広場に続く細道に足を入れる。

 振り返ると、お姉さんは覗き込んだりせず、多分入口の壁に背を預けているのだろう。

 

 時計を見ると、秒針がもう『11』の文字盤を越えていた。

 カチ、カチと音を立てて、今日のために念入りに合わせた腕時計に目をやる。

 

 午前、零時。

 

 

――ゾァァァ………

 

 

 世界が薄気味悪い緑の輝きに覆われ、丸い月の輝きを怪しく際立たせる。

 

 物影のお姉さんも、あの棺桶の象徴と化しているだろう。

 

 

「あの、お姉さん。ここまでありがとうございました」

 

 

 振り返って、路地の入口に向かって頭を下げる。

 

 

「……守る気のない約束をして、ごめんなさい」

 

 

「…………さようなら」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 裏の時間が訪れ、まばらに見えていた人が全て棺桶の中に納められる。

 ずっと舐めていたため、もう棒の部分に薄く残るだけの飴を噛み砕き、棒に残った甘味を噛んで締め出す。

 

「……深夜零時の事故ってのが引っ掛かりはしたが」

 

 たまたま出会った小学生が姿を消した路地裏から、遠のく足音が聞こえる。

 普通の人間ならば棺桶の中にブチ込まれるこの時間に。

 

「……ったく、この時間を利用して先回りして安全確認してやろうと思ってたら……」

 

 完全に味がしなくなった紙製の棒を口から取り出し、取っておいた包みの袋に差し込んで適当にグチャグチャにしてポケットの中に差し込む。

 

「な~るほどねぇ」

 

 ブーツの調子を確認する。

 なにせ前にここに来た時は激戦があった。

 服装は当然、戦いやすさを念頭に置いている。

 

 そして右手を胸の上で宙にかざして、集中する。

 カードが俺の胸から飛び出し、それを握りつぶして僅かに力を解放する。

 

(……ん。遠くの方で妙にデカい気配を二つ感じるけど、ここいらには怪物の気配なし。これなら少年も大丈夫か……。さて、裏の時間が終わるまで)

 

「……あれ、いや、待て。この感じは……」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「天田の母親が命を落としたのは、公には『事故』となっているが……本当は、過去の私達が原因なんだ」

 

 満月の夜に出現する大型シャドウ。

 影時間を消すために倒さなくてはならない存在の内二体を打ち倒した後も、作戦室は不穏な空気に包まれている。

 

「2年前、イレギュラーで街に出たシャドウを討ちに行った時の事だ……ペルソナを得たばかりの荒垣に、軽い『力の暴走』が起きた」

 

 作戦開始前から行方を晦ましていた二名が未だに戻らず、それを探しにいった真田も未だに戻っていないからだ。

 そして、それが意味する事にようやく気付けた桐条美鶴は、顔を蒼くしている。

 

「敵を追うのに気を取られていたとはいえ、民家が巻き込まれてしまってな。運悪く…1人だけ、犠牲者が出てしまった。……もう分かるな? 天田の母親だ」

「それが……二年前の今日に?」

「そうだ、岳羽。……クソッ、どうして天田と荒垣が不在と聞いた時点で思い出せなかった……っ」

 

 拳を握りしめて、美鶴は己の不甲斐なさを噛みしめて震えていた。

 

「見つかりました!」

 

 その重々しい空気を切り裂くように、自分の身体を包みこむ、巨大な女性型のペルソナを発動させていた髪の短い少女が叫ぶ。

 

「辰巳ポートアイランドです! 天田君と荒垣先輩、二人一緒です。それと…近くにもう一つ反応が……」

「先に向かっていた明彦か!?」

「いえ……ちがいます。この反応は……ストレガです!!」

 

 美鶴の顔が、更に歪む。

 ストレガ。

 美鶴たちと同じくペルソナ能力を持ち、それを行使できる影時間を守るために動いている三人組。

 うち一人、索敵と攪乱を担当していた少女は捕らえているが――いや捕らえているからこそ、どういう手に出てもおかしくない。

 

「くっ……最悪だ!」

 

 もはや美鶴に一刻の猶予もなかった。

 作戦室のドアを叩き開けて、飛び出す。

 

「あっ、先輩待って! ……皆、おっかけよう! 最悪奴らと戦いに――」

「待って……反応がもう一つ。これは……」

 

 

「6月の時の?」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「俺のやった事だ…報いは受けるさ」

 

 辰巳ポートアイランドのとある路地裏で、小柄な少年が槍の鋭い穂先を大柄な男に突き付けている。

 

 母の仇に向ける、復讐の刃を。

 

「だが…一つだけ、忠告がある」

 

 影時間の中で鈍く輝くそれを、男は平然と受け入れていた。

 

「忠告……?」

「……こんな俺の命でも、奪えばお前は、俺と同じ重みを背負う事になる」

 

「そいつだけは、覚悟してくれ……」

 

 貫かれる事を、覚悟していた。

 

「何だよそれ……命乞いってこと?」

「今は憎しみしか無くても、いつか必ず背負っちまう」

「ふざけるな! そんなの、背負うもんか!」

 

 

――ええ。まったくその通りですよ。

 

 

 その時、突如第三の男の声が混ざり込む。

 荒垣という大柄な男には聞き慣れた、天田という少年には聞き覚えのある声が。

 

「テメェ……、タカヤ」

 

 天田が来た路地とも、荒垣が通ってきた路地とも違う路地から、声の主が現れる。

 

「そんなもの背負う筈がない。必要もない。彼の行いは『復讐』なのです」

 

 歳に見合わない、すっかり色が抜け落ちた銀髪を肩まで伸ばした、上に何も身に付けず、不思議な入れ墨を入れた少年。

 

 本来敵である彼の言葉に、天田が頷く。

 

「……そ、そうさ……」

「何の用だ、テメェ」

「仲間が一人欠けてしまい、先回りしてシャドウを守る事が難しくなりました。ですが放置するわけにはいきません」

 

 大柄な男がタカヤと呼んだ男は、腰から得物を引き抜く。

 荒垣や天田の持つペルソナの召喚器に形はよく似た、だが違う用途の『武器』を。

 

「テメェ……ッ」

「恐れる必要はありません。これは通過点に過ぎない。あなた方は――」

 

「――救われるのです」

 

 それを目にした瞬間、荒垣は反射的に天田の前に立ち、その背に彼を庇う。

 

「おや。自分を殺そうとする少年をかばうのですか? ……ああ、いえ、そうでしたね。そもそも貴方は死が近い運命でしたね」

 

 ペルソナという特異な力を持っていても明確な脅威である鉛玉を、一発たりとも少年に届かせまいと荒垣は立つ。

 

 だが、その後ろに守られている復讐者は、その行動よりもタカヤの言葉に気を取られている。

 

「……どういう……事……?」

「言葉の通りです。彼はペルソナ能力を抑えるために我々と同じ薬を飲み続けている。もう随分と」

「やめろ、テメェ……」

 

 突き付けられた銃口から目を逸らさず、ゆえに動けない荒垣は荒い言葉でタカヤの言葉を遮ろうとする。

 だが、タカヤのペースは変わらない。

 

「彼の身体はもう長くない。死は間近でしょう」

「っ、テキトー言ってんじゃねぇ!!」

「? 自分の身体の事でしょう? 貴方が一番分かっているハズです」

 

 少年は、槍をずっと構え続けていた手から力が抜けるのを自覚せざるを得なかった。

 

「どういう……事だよ……」

 

 カラン、と。

 シャドウと戦うための、相応の重量がある槍が地面に力なく落ち、転がる。

 

「死んじゃうってのかよ。僕が……何もしなくても……勝手に!! そんなの!! だったらなんで僕は……今まで!!」

 

 天田乾という少年がシャドウとの戦いに志願したのは、復讐の為だった。

 最初は母の死の真実を知るために。

 そして相手を見つけてからは、その仇の命を奪うために。

 

「死が何によってもたされるかなど、どうでもいいでしょう。少年、君からは彼と別の意味で生きている匂いがしない。……そちらの彼を殺した後で、自分も死ぬおつもりですね?」

 

 そして、それを果たせばもう十分だと。

 生きる意味を使い尽くしたと、そう考えていた。

 

「天田、お前……」

 

 大柄な男は銃口から背後に庇う少年へと、初めて目線を移した。

 

 それが、失敗だった。

 

 日本という国ではほとんどの人間が耳にする事のない、重々しい炸裂音が硝煙の香りと共に響く。

 

「どのみち2人とも死ぬのですから、私が今確実に息の根を止めてあげましょう」

 

 タカヤの指は、手にしたリボルバー拳銃の引き金を引き絞っていた。

 

「あ…………」

 

 天田には何もできない。

 ただその場に崩れ落ちる、大きな背中を見つめる事しか出来ない。

 

「さて、本題に入りましょう。貴方方の中にもチドリと似た『知覚』に長けたペルソナ使いがいるはずです」

 

 大きな体から血が零れている小さな穴があるあたりを、タカヤはその痩せ細った足で蹴り飛ばし、踏みつける。

 

「ぐあああああああっ!!」

「ぁ……っ……」

「教えてください。名前は? 容姿は? 死ぬなら楽に死にたいでしょう?」

「だ……れが……っ」

 

 踏みにじられ、苦悶の声が男の口から零れる。

 それに背を押されたか、あるいは自分に優しくしてくれた『知覚』するペルソナ使いのためか。

 

「僕だよ!!」

 

 天田は立ち上がっていた。

 

「僕がそうだったんだ。……それが出来るから、子供の僕でも加われたんだ……。でも……もう……」

 

 無論、違う。

 

「なにを……っ、言って――ぐああああっ!!!」

 

 それを知っている荒垣は遮ろうとするが、タカヤによってさらに傷口を踏みにじられる。

 

「あなたには訊いていませんよ。それで、本当なのですか?」

「あぁ、本当だとも」

「だから先に殺せ、と?」

「……もう、どうだっていいさ。僕の復讐は終わったんだ。始まった時点でとっくに……」

「……なるほど」

 

 呻く荒垣を再び蹴り飛ばし、タカヤは銃を向ける。

 

「十分に生きた。そう言う事ですね?」

「……ああ」

「素晴らしい覚悟です」

 

 一度引いた引き金に再び指を乗せ、小さな顔に真っ直ぐ狙いを定める。

 

「その覚悟に敬意を。――楽におなりなさい」

 

 瞬間、倒れていた大きな体が跳ね上がる。

 

「なっ……!?」

 

 天田の小柄な体を抱きしめて、覆いかぶさる事で弾丸から守るために。

 

 再び、炸裂音がする。

 

 

――メギドォッ!!!!!!

 

 

 ただし、先ほどよりも大きく、周囲を吹き飛ばすような物が。

 三人だけの、血と硝煙に濡れたコンクリートに、上から飛んで来た何者かが降り立つ。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「声を上げろっつったろ少年! 地味に結構離れてるし!!!!」

「お……姉さん……?」

 

 ビックリした! 本当にビックリした!

 裏の時間になってるのに少年以外に動く変な反応あったから探ろうにも、この路地予想以上に入り組んでるし!

 ようやく近づいていると確信したら明らかにヤベェ音するし!

 

「くっ……ペルソナ使いですか。見覚えがありませんが、貴女は?」

「そこの少年の連れだよ、ヒッピー野郎」

 

 後ろで倒れている、いつぞやの兄さんは息は荒いけどまだ生きている。

 とはいえ地面を見るに出血がヤバイ。止血が必要だ。

 

 拳銃(チャカ)の一撃を防ぐためとはいえ、思いっきりランマルの攻撃の余波を当てちまったんだ。

 せめて安全圏にまで連れて行かないと不味い。

 

「少年、その人を引き摺って物影に隠れてな」

 

 地面には血だけじゃなくて、槍が転がっている。

 少年が持っていた不自然に長いバッグと大きさが合う。

 

(んなもん持ち運んでいたのかよ……っ。まぁ、理由はボソボソ伝わって来たけどさ……)

 

「で……でも! コイツは! ……っ、コイツは!!」

「――ケン坊!!」

 

 名前、そうだったよな。

 

「俺(・)のペルソナは怪物の気配を読むのは得意でも、人の気配を探るのは苦手だ。ましてや離れた場所での会話なんざ聞こえやしねぇ。だから事情も、微妙に漏れ聞こえた部分しか分からねぇ」

 

 

――……守る気のない約束をして、ごめんなさい

 

 

(なにを言っているかと思えば、マジで会う気がなかったとは)

 

 転がっている槍は足で退ける。

 ケンには悪いが、俺の戦い方――しかも銃なんて持ってる奴とやり合うには邪魔だ。

 

「だからその兄さんとの因縁も分からねぇが……確かな事が一つある」

 

 今すぐ後ろを振り返って様子を見てやりてぇ所だが、ニヤついているヒッピー野郎から目を離すわけにはいかない。

 

「今、その兄さんはお前を守ろうとした。身体張って、命張ってだ」

 

 鼻をすする音がした。

 よかった、少なくとも泣いてるのか。

 怒りに飲まれているんじゃ、ねぇんだな?

 

「だったら! 助けられたモンとしての筋は通せ!」

「……筋」

「そうだ。助けられて、命繋いだんだろうが!? だったらお前は生きなきゃなんねぇ!」

 

 蹴り飛ばした槍が、カランカランと音を立てる。

 アマダ ケンって男の得物で間違いないだろう。

 だからこそ――

 

「きっかけは何であれテメェ! 武器を手にして戦う事を選んだ……っ、男なんだろうが!!」

 

「シャキとしろぉっ!! ケン坊!!!」

 

 何が癇に障ったのか、ロン毛野郎が引き金を引く。

 だけど問題ない。銃口と引き金を意識していれば避けられる。

 たまに出るポリ公みたいな化け物はもっと予測しづらい動作で何度も銃弾叩き込んできて、それを四年は避け続けている。

 

 上体を後ろに思いっきり逸らして、弾丸を避ける。

 チリッ、とした空気と熱の線が俺の鼻先から10cmは上を通り過ぎる。

 

 その勢いを利用してのバク転。

 

 戦いの中で多用している俺流の間合い取りの最中、あの兄さんのクソ重いだろう体を引き摺って物影に隠れようとしてる少年の姿が見えた。

 

 そうだ、それでいい。

 

 あとは――っ

 

「……召喚器ではない? いえ、そのカード、その輝きは……」

 

 一回りさらに距離を取って立ち直した俺の右の掌の上で、カードが輝き回転している。

 

「テメェの相手は俺だ、ヒッピー野郎!」

 

 拳銃(チャカ)なんつーモン振り回す奴に手加減なんざ必要ねぇだろ!

 

 来い!

 

 

 

「ペルソナァ!!!!」




ペルソナ『ランマル』 Lv39 【月】
物理:耐 火:ー 氷:ー 雷:耐 風:弱 闇:ー 光:ー

力:32  ・ブレインシェイク ・バイラスウェイブ
魔:17  ・物理ブースタ   ・小治癒促進
耐:29  ・淀んだ空気    ・メギド
速:33  ・気絶耐性     ・マハスクカジャ
運:25




天田周りは特別野外活動部の運営サイド本当に迂闊すぎて……いやまぁ理事長は分かっててアレだったんだろうけど……

久々にP3Pを1から始めたらペルソナ全書が見当たらなくて滅茶苦茶焦った。
そして難易度高くてビビってる。
シャドウってこんなに強かったっけって思いながら恐る恐る進めてます。

状態異常魔法が神すぎる
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