無職転生 異世界行ったら妄想を本気で再現する!   作:ぐちロイド

1 / 2
思い付きでお試しに書いてみたがイマイチと思ったら消すかもしれない。星焔の創生宮について知りたいかたは「呪術廻戦 五条が認めたもう一人の最強」にある炎の術式をごらんぐださい。


第1話 転生

痛みが、ない。

 

全身を焼くような強烈な衝撃と、生温かい血が胸元から溢れ出す絶望感。路地裏の暗闇で、ナイフを握りしめて逃走した男の影。通りすがりで巻き込まれた刺殺事件という、あまりにも理不尽で呆気ない18年の生涯の終わり。

 

(俺、死んだんだよな……?)

 

前世の記憶——暁連(あかつき・れん)としての意識が、混濁した暗闇の中でぼんやりと浮上する。

 

最後に覚えているのは、冷たいコンクリートの感触と、視界が急速に黒く染まっていく恐怖だけだった。オタクで、アニメのカッコいい戦闘シーンに憧れて、形から入ろうと殺陣やアクションの練習をしたり、各種武器の扱いを独学で一通り覚えたりしていただけの、どこにでもいる普通の高校生。そんな俺の人生は、見知らぬ殺人鬼のナイフによって唐突に幕を下ろしたはずだった。

 

だが、今の自分には「感覚」がある。

五感がゆっくりと呼吸を取り戻していく。

 

「あぅ……ぁ……」

 

声を出そうとしたが、口から漏れ出たのは情けない、小さな喃語(なんご)だった。

重い瞼を必死に持ち上げる。視界はひどくぼやけており、焦点がうまく結ばない。だが、徐々に光が形を成していく。

 

天井が見えた。

コンクリートの天井でも、病院の白い蛍光灯でもない。荒削りだが温かみのある、木造の太い梁と天井板だ。

漂ってくるのは、焦がした薪の煙の匂いと、乾いた草、そして微かに甘い乳の匂い。

 

(木造建築……? 日本の家じゃない。病院でもない……)

 

混乱する頭を動かそうとしたが、体にまったく力が入らない。手元に視線を落とすと、そこに広がっていたのは驚くべき光景だった。

 

赤く、皺の寄った、ちんまりとした小さな手。

まるまるとして短い腕。

自分の体とは思えないほど小さく、脆弱な肉体。

 

(赤ん坊……? 俺が……?)

 

頭の理解が追いつかない。輪廻転生だの、異世界転生だの、前世で読んだライトノベルやアニメの設定が脳裏を駆け巡る。だが、実際に自分の身に起きると、恐怖と困惑で脳が麻痺しそうだった。

 

その時、視界の上空から二つの顔が覗き込んできた。

 

「あらあら、アレン。目が覚めたの? お利口さんねぇ」

 

柔らかく、鈴を転がすような優しい声。

そこにいたのは、信じられないほどの美人だった。太陽の光をそのまま糸にしたような美しい金髪を、高い位置でポニーテールに結っている。澄んだ瞳でこちらを見つめ、慈愛に満ちた笑顔を浮かべている女性。

 

ゼニスだ。

直感的に、なぜかその名前が頭に浮かんだ。あるいは、彼女が自分をそう呼ぶ声を聞いたのか。

 

「ほら、パウロ。アレンも起きたわよ。ルーデウスと二人揃って、なんてかわいいんでしょ」

 

ゼニスが優しく俺の体を抱き上げる。ふわりと包み込まれるような温もりと、母性溢れる香りが全身を包み込んだ。首が据わっていないため、視界が揺れる。

 

「おお、本当だ! アレン、パパだぞ〜! ルーデウスも見てみろ、お前の双子の弟だぞ」

 

横から顔を覗かせたのは、豪快な笑みを浮かべた茶髪の男だった。無精髭を生やし、粗野な雰囲気を漂わせているが、その整った顔立ちは紛れもない男前(イケメン)だ。

 

パウロ。

ゼニスが「パウロ」と呼んだその男は、俺の隣に転がっているもう一塊の温もりに視線を向けていた。

 

俺のすぐ横。同じベビーベッドの上に、もう一人、赤ん坊が寝かされていた。

薄い茶髪の赤ん坊。それが俺の双子の兄、「ルーデウス」らしい。

 

(ゼニス……パウロ……ルーデウス……)

 

抱き上げられながら、俺は必死に頭を回転させた。

中世ヨーロッパ風の素朴な木造住宅。

金髪ポニーテールの美人な母親、ゼニス。

茶髪でワイルドな男前の父親、パウロ。

そして、双子の兄であるルーデウス。

 

(間違いない……ここは、地球じゃない)

 

直感が確信へと変わる。異世界転生だ。

理由も原理もわからない。だが、地球で刺されて死んだ俺は、どういうわけかこの中世ヨーロッパ風の世界で、この夫婦の子供として生まれ変わったのだ。

 

ゼニスが俺の背中を優しくトントンと叩きながらあやしてくれる。パウロはもう一人の赤ん坊——ルーデウスを大きな手で抱き上げ、鼻の下を伸ばしてあやしている。ルーデウスはほうけて、どこか遠くを見るような目をしていた。あいつもあいつで何か考えているのだろうか。

 

ゼニスに抱かれながら、俺の頭の中は急速に興奮で満たされていった。

 

異世界。

もし、ここが剣や魔法が存在するようなファンタジーの世界だとしたら——。

 

(あいつが……再現できるかもしれない)

 

胸の奥が熱くなるのを感じた。

 

前世の俺は、典型的なオタクだった。放課後や休みのたびに、ノートにオリジナルの設定や術式を書き殴っていた黒歴史がある。アニメの戦闘シーンに憧れて体術や武器の捌き方を練習する一方で、脳内で最強の能力を妄想し、その発動条件や理屈を捏ね繰り回していた。

 

『星焔の創世宮(せいえんのそうせいきゅう)』。

 

前世の俺がノートに書き殴り、理想とした最強の術式名。

天上の星々の輝きを「炎」として引き落とし、周囲の物質(岩石や金属)を依り代にして強固な武装や眷属を生成する能力。

 

【星屑の錬成(スターダスト・フォージ)】。

周囲の岩や金属を核に、瞬時に炎の剣や矛、鎖を生成して自在に形を変えて戦う基本能力。

 

そして、それらを司る四種の星獣——「狼座(ルプス)の熾火」、「龍座(ドラコ)の劫火」、「虎座(ティグリス)の猛火」、「鷹座(アクラ)の瞬火」。

 

さらには、正転の「熱」とは対極をなす、絶対零度の冷気と再生を司る反転術式『月魄の静止宮(げっぱくのせいしきゅう)』。

その両者を激突させて空間ごと押し潰す虚式『星系崩壊・寂滅の特異点』。

さらには世界そのものを自らの宇宙へと書き換える領域展開『万象流転・無尽の星淵』——。

 

地球ではただの「イタい高校生の妄想」でしかなかった。どれだけ熱っぽくノートに書いても、現実の俺はただの生身の人間であり、せいぜい木刀を振るうことくらいしかできなかった。

 

だが、もしこの世界に「未知のエネルギー」——例えば『魔力』のようなものが存在するならば?

 

(できる……! もしこの世界に未知の力があるなら、あの術式を、俺の頭の中にある『星焔の創世宮』を、本気で一から再現できるんじゃないか……!?)

 

前世のアクション練習で身体に叩き込んだ体術や武器術の感覚。

それに加えて、前世で思い描いた完璧な術式理論。

これらを組み合わされば、俺はこの世界でいくらでも強くなれる。

 

ワクワクするような熱量が、小さな赤ん坊の胸の奥から湧き上がってくるのを感じた。

 

(やってやる。今度の人生は、ただ流されるだけのモブじゃない。前世で憧れたカッコいい戦闘シーンを、自分のこの手で、この能力で完璧に体現してみせる……!)

 

だが、決意を新たにしたのも束の間。

 

「あらあら、アレンったら。目がとろんとしてきたわね。かわいそうに、もう眠いのかしら」

 

ゼニスの優しい声が頭上から降ってきた。

彼女の手が、俺の背中を一定のリズムでトントンと心地よく叩く。

 

(あ……ヤバい……)

 

赤ん坊の肉体というのは、驚くほど体力がないらしい。

さっきまで胸の中で燃え上がっていた野望と情熱が、急速に生理的な欲求へと塗り替えられていく。脳の思考速度が急速に低下し、瞼が粘着テープで貼り付けられたかのように重くなっていく。

 

「パウロ、アレンをベッドに戻すわね。ルーデウスももう寝そうよ」

「おう、よしよし。二人ともよく寝て、でっかくなれよー」

 

パウロのガハハという豪快だが暖かな笑い声が、遠く聞こえる。

木漏れ日のさす部屋の温もりと、ゼニスの抱擁の暖かさ。

前世で感じたことのない、家族というものの温もりが、冷え切っていた俺の魂をゆっくりと解きほぐしていく。

 

(……くそ、抗えない……赤ん坊の体、弱すぎるだろ……)

 

前世の妄想術式『星焔の創世宮』。

これをどうやって魔力で形にしていくか。

まずは体を動かせるようになってから、魔力の感覚を確かめて……。

 

そんな思考も、波のように押し寄せる強烈な眠気の中に溶けて消えていく。

 

(……まあ、いいか。焦る必要はない。俺の新しい人生は……今、始まったばかりなんだから……)

 

ゼニスによって静かにベビーベッドへ横たえられた瞬間、俺の意識は深い、温かな闇の中へとゆっくりと落ちていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。