無職転生 異世界行ったら妄想を本気で再現する! 作:ぐちロイド
あれからさらに一年という月日が流れた。
季節は巡り、俺——アレン・グレイラットは9歳半を迎えていた。
この一年間、俺の生活は一変した。二週に一度のペースで『星焔の創世宮』における冒険者活動を続けつつ、ロアの街にあるボレアス家へと定期的に足を運び、狂犬と称されるエリスの相手をするという奇妙なルーティンが定着していた。エリスは会うたびに闘争心を剥き出しにして挑みかかってきたが、その度に俺が容赦なく叩きのめすことで、彼女の剣気と執念はさらに磨かれ、同時に不思議な絆のようなものが芽生えつつあった。
さらに、ボレアス家の奥深くでは、母・零月から厳命されていたヒルダ・ボレアスへの接触も密かに、しかし確実に重ねられており、彼女との距離も少しずつ縮まっていた。
だが、それらの社交や冒険者としての活動の裏で、俺の全精力は一貫して一つの巨大な目標に注がれていた。
——「魔核(コア)」の完成である。
月の女神である母から授かった特製の魔石に刻まれた神域の魔力循環術式を徹底的に解析し、自らの魔力回路へと落とし込むことで、数々の試行錯誤と紙一重の爆発事故の危機を乗り越え、俺はついに、守護獣を完全に自律稼働させるための「心臓」たる魔核をすべて創り上げること成し遂げたのだ。
そして今日。
いよいよ、長きにわたる修練の集大成を確認する時が来た。
グレイラット家の広大な庭園。その中央に陣取る俺の目の前には、これまでに創り上げてきた四体の守護獣の素体が、静かに、しかし圧倒的な存在感を放って並び立っている。
「ふう……っ」
俺は息を整え、両手の平を地面につけた。
体内の魔力回路を全開で接続し、新しく完成させた四つの魔核を、それぞれの素体の中心核へと正確無比に埋め込んでいく。
——『星焔の創世宮 星焔の守護獣』!
シュシュシュシュシュッ……!!
一瞬の静寂の後、四体の守護獣の瞳が一斉に眩い光を放った。
地響きのような唸りと共に、命を吹き込まれたかのようにそれぞれの巨体が動き始める。
まずは、一番手。
『狼座(ルプス)の熾火』。
ニルシィの『玉犬』をベースにして徹底的に磨き上げられた、純白の毛並みを思わせる土と熱の巨大な狼。その四肢は地をしっかりと捉え、周囲の空気を鋭く切り裂くような俊敏な気配を纏っている。
「よし、ルプス。問題ないな」
俺が念話の要領で意識をリンクさせると、狼座は低く咽喉を鳴らし、主人の命令に絶対服従を示すかのようにピタリと姿勢を正した。
続いて、二番手。
『鷹座(アクラ)の瞬火』。
大空を制するための軽量かつ強靭な骨格を持つ巨大な鷹。その背中には高密度の熱魔力が薄い膜となって張り巡らされ、いつでも大空へと飛び立てるほどの圧倒的な軽やかさと鋭い眼光を放っている。
「アクラ、上空へ」
俺が命じると、アクラはバサァッと強烈な風切り音を立てて数メートル上の空中にふわりと浮遊し、その高度を完璧に維持してみせた。全く、鳥類特有の中空構造の骨格が見事に機能している。
そして、三番手。
『虎座(ティグリス)の猛火』。
森の中で死闘を演じて得た生きたデータを完全に落とし込み、前足の荷重バランスと筋肉の結合部を極限まで強化した中型犬サイズを凌駕する巨獣。その一歩一歩が地面の石畳をわずかにひび割れさせるほどの重厚なパワーと、しなやかな猫科特有の跳躍力を秘めている。
「ティグリス、上々だ」
最後にして最大の難所。
『龍座(ドラコ)の劫火』。
全長50メートルに及ぶ東洋龍型の超大型守護獣。その長大な胴体には幾重もの精巧な鱗のモールドが刻まれ、全身を巡る魔力の循環はもはや芸術の域に達していた。龍座がわずかに首を持ち上げるだけで、庭全体の空気が圧倒的な熱量と重圧に震え上がる。
「……ふう。完璧だ」
俺は額の汗を拭い、小さく息をついた。
狼、鷹、虎、そして龍。
その四体のすべてが、俺の意志の延長として、魔核の自律制御によって一寸の狂いもなく完全に稼働したのだ。
前世のオタク的な妄想と、この世界で手に入れた最強の錬成術が融合し、ついに形となった瞬間だった。
少し離れた場所で、この一部始終を最初から最後まで見守っていたニルシィは、あまりの光景に言葉を失っていた。彼女は174cmの長身をわずかに震わせ、シアン色のポニーテールを揺らしながら、呆れたような、そして心底からの賛嘆が入り混じった笑みを浮かべて近づいてきた。
「……おいおい、アレン。本気でやり遂げちまったのかい……。これ、もうただのガキの作った術式ってレベルを超えてるぞ。立派な一つの『軍勢』じゃないか……」
ニルシィは、目の前に鎮座する全長50メートルの東洋龍や、獰猛な気配を放つ虎や狼の姿をトントンと軽く叩きながら、感心したように口笛を吹いた。
「あぁ。これで『星焔の創世宮 星焔の守護獣』の構築は、実戦投入可能なレベルに達した」
俺が満足そうに頷くと、ニルシィはふっと不敵な笑みを浮かべ、何かを思いついたようにパチンと両手を叩いた。
「ねえ、アレン。それだけの機動兵器が揃ったんだろ? ……だったらさっそく、その性能を試してみたくならないかい?」
「性能のテストか? まあ、次の冒険者活動の時にでも実戦で試そうとは思っていたが……」
俺がそう答えると、ニルシィは悪戯っ子のような笑みを深め、アレンの目の前へと一歩詰め寄った。
「それじゃもったいない! せっかくこれだけの相棒が揃ったんだ。……私と勝負しようじゃないか。条件はこうだ。あの『玉犬』を私が呼び出してそれに乗る。対して、お前は新しく完成したこの『狼座』に乗り込む。……つまり、『騎馬戦(きばせん)』だ!」
「……騎馬戦、だと?」
俺は思わず目を丸くした。
「そう! 互いに創世宮の守護獣と玉犬を駆り、この広大な平原(あるいは森の特設フィールド)で一騎打ちをするのさ! 元・上級冒険者の私と、あの剣王ギレーヌと相打ちまで演じたお前の実力を、この騎馬戦でガチンコで試してみようじゃないか!」
ニルシィの提案を聞いた瞬間、俺の胸の中でも熱いものがこみ上げてきた。
確かに、ただの魔術のテストだけでは分からない「機動力の連動性」や「高速移動中の魔術の精度」を試すには、これ以上ない絶好の機会だ。しかも相手は、自分の戦闘スタイルを誰よりも熟知している師匠のニルシィ。
俺は微塵の躊躇も見せず、口元に不敵な笑みを浮かべて即答した。
「……面白い。その挑戦、即座に乗ってやるよ」
「ははっ! その返事を待っていたんだ!」
ニルシィは嬉しそうに八重歯を覗かせると、すぐに準備を始めようと庭の端へと駆け出した。
俺もまた、心の中で『狼座(ルプス)』に意識を同調させ、いつでも騎乗して駆け出せるようにその巨体を低く構えさせた。
夕暮れが近づき、オレンジ色の光が庭を染め上げる中、師弟による前代未聞の「守護獣vs玉犬の騎馬戦」が、今まさに始まろうとしていた。
味方キャラ女の片方に持たせる能力について(イメージとしては赤血橾術)
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水
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血