無職転生 異世界行ったら妄想を本気で再現する! 作:ぐちロイド
夕暮れの黄金色の光がブエナ村の広大な草原を染め上げる中、アレン・グレイラットと師匠であるニルシィの「前代未聞の騎馬戦」の舞台が整いつつあった。
風が吹き抜け、草木がざわめく。
互いに愛馬ならぬ「魔獣」を駆るこの模擬戦は、ただの訓練の枠を超えて、お互いの実力と一年間の鍛錬の成果をすべてぶつけ合う最高峰の真剣勝負となろうとしていた。
「準備はいいかい、アレン!」
少し離れた位置で、ニルシィは自身の影から生み出された漆黒の巨獣『玉犬』の背に軽やかにまたがっていた。彼女はシアン色のポニーテールを風になびかせ、手元で愛用の木剣をクルクルと回しながら、挑戦的な笑みを浮かべる。174cmの長身としなやかな肉体が、玉犬の背の上で完璧な人馬一体のバランスを作り上げている。
「いつでもいけるぜ、ニルシィ」
対するアレンは、地面に鎮座していた『星焔の創世宮 星焔の守護獣:狼座(ルプス)の熾火』の背へと、軽快な身のこなしで飛び乗った。
純白の毛並みを模した土と熱の巨獣は、アレンの意志と完全に同調し、低く地を這うような唸り声を上げながら四肢を踏み締めている。核(コア)から供給される無限の魔力循環により、生きた魔物以上の圧倒的な躍動感と俊敏性を秘めていた。
二人の間には、緊張感がピンと張り詰める。
どちらからともなくカウントダウンをするわけでもなく、風の音が止んだその瞬間——。
「「行くぞっ!!」」
轟音と共に、二頭の巨獣が同時に大地を蹴り飛ばした。
ズドドドドドドッ!!
激しい地響きを立てながら、狼座と玉犬が凄まじいスピードで正面衝突の軌道を描いて駆け抜ける。
一瞬にして十数メートルの距離が縮まり、すれ違う瞬間にニルシィが容赦なく木剣を振り抜いた。
「まずは挨拶代わりさ、アレン!」
ガキィンッ!!!
鋭い金属音のような硬質な衝撃が草原の空気を切り裂く。
アレンは狼座の背で重心を低く落とし、自らの手に顕現させた『星焔の創世宮 星屑の錬成』の短刀でニルシィの一撃を受け止めた。腕が痺れるほどの重い衝撃。だが、狼座の魔核による自動重心制御がアレンの身体を完璧に支え、弾き飛ばされることはない。
「甘いな、ニルシィ!」
アレンは受け流すと同時に、狼座の首を巧みにコントロールし、すれ違いざまに真横へと大きく旋回させた。
ただ直進するだけの騎馬戦ではない。狼座の柔軟な四肢と、アレンの体術、そして魔術のコンビネーションが織りなす立体的な機動戦。
「おっ、やるねぇ! ならこれはどうだい!」
ニルシィは玉犬の背の上で軽業師のように身体をひねり、一瞬で体勢を立て直すと、今度は追撃の魔術弾を連射してきた。
無数の風の刃が、鋭い軌道を描いてアレンの背後へと殺到する。
(——来るっ!)
アレンは表情一つ変えず、右手で素早く空間をなぞった。
「——『星焔の創世宮 星焔の守護獣』!」
アレンの呼び声に応じ、上空で待機していた第二の守護獣——『鷹座(アクラ)の瞬火』が、まるで疾風のごとく急降下してきた。
アクラの翼から放たれた高熱の熱波膜が、ニルシィの放った風の刃を空中で見事に相殺し、激しい爆風となって周囲の草木を吹き飛ばす。
ドォォォンッ!!
「空からの援護付きとはね……! 相変わらず反則すれすれの連携じゃないか!」
ニルシィは楽しげに声を上げながらも、玉犬の圧倒的な俊足を活かして爆風の隙間を縫い、一瞬でアレンの死角へと回り込んだ。
玉犬の足音はまるで消えたかのように静かで、気づけばアレンの真横にまで肉薄していた。
「もらったよ、アレン!」
ニルシィの木剣が、アレンの側頭部めがけて鋭い軌道で薙ぎ払われる。
避ける暇はない。直撃すればただでは済まない一撃。
だが、アレンの瞳には焦りの色は一切なかった。むしろ、その唇には微かな笑みさえたたえられていた。
「——かかったな」
バシュッ!!
アレンが狙っていたのは、まさにその瞬間だった。
狼座が急停止すると同時に、アレンは地面へと飛び降りるのではなく、あえて狼座の背を蹴り台にして空中へと身を躍らせた。ニルシィの木剣はアレンの残像をかすめただけで、空を切る。
空中姿勢のまま、アレンの両手から高密度の熱魔力が一気に解放される。
「——『星焔の創世宮 星屑の錬成』!」
シュパッ!!
アレンの右手に顕現したのは、純白の輝きを放つ長大な投擲用の槍だった。
空中という無防備な位置から、アレンは全神経を集中させ、ニルシィの乗る玉犬の足元の地面めがけてその槍を思い切り投げ下ろした。
ドゴォォォンッ!!
槍が着弾した瞬間、凄まじい熱量と爆風が弾け飛び、玉犬の足元を一時的に完全に塞ぐ。
「っと……! やるねぇ!」
急な足場の変化と爆風に阻まれ、流石のニルシィも玉犬の突進を一度緩めざるを得なかった。
着地したアレンは、再びすばやく狼座の背へと飛び乗り、体制を立て直す。
息一つ乱していないアレンに対し、ニルシィは少しだけ息を弾ませながら、愛用の木剣を構え直した。二人の周りには、激しい機動戦によって巻き上げられた土煙と熱気が渦巻いている。
(——流石は師匠だ。こちらのあらゆる手札を読んで、的確に対応してきやがる。だが、ここからが本当の勝負だ……!)
アレンは心の中で、四体の守護獣とのリンクをさらに一段階引き上げた。
狼座の俊敏性、アクラの上空からの視界、そして隠し持ったティグリス(虎座)やドラコ(龍座)の気配を巧みにフェイクとして織り交ぜる。
「おいおい、どうしたアレン? その程度かい?」
ニルシィは挑発するように笑いながら、再び玉犬を加速させた。
二頭の巨獣が再び激突の軌道を描き、草原の真ん中へと猛然と突進していく。
風がうなり、魔力がぶつかり合う。
9歳半を迎えたアレン・グレイラットの総力を結集した騎馬戦は、さらなる激化の様相を呈しながら、夕暮れの平原を駆け抜けていくのだった。
味方キャラ女の片方に持たせる能力について(イメージとしては赤血橾術)
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水
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血