鏡女   作:たかむらあり

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化粧品

アレというのは、化粧品のこと。

手のひらサイズの小さなボトルに詰められたジェル状の液体だった。

一見何の変哲もないようだったが、塗ってみるとすぐに効果を実感するようになった。

どんどん顔が美しくなっていく。

アンバランスだった鼻も輪郭を整えるように使ってあげれば、目立たなくなった。

気になったところを細かく修正できるのは、便利だ。

指でそおっと皮膚をなぞってあげれば、理想の顔になっていく。

効果が即座に出てくれるので、楽しくて毎日使っていた。

そして、この化粧品、手に入りやすかった。

家を出て、五分歩けば着く近場のコンビニに売っている。

夜中に無性にガリガリ君を食べたくなって、コンビニに出陣した時に、見つけたのだ。

店に入って、すぐ目につく、白い網網のケージに山ほど積まれていた。

名前も知らないヨーロッパ人だと思われるモデルが背景の広告には、女性が自信をもてるようにというキャッチコピーが書かれていて、真ん中に化粧品の画像が置かれていた。

気になって、手に取ってみる。

製品の裏には、カタカナでいっぱいの成分表示が書かれていた。

味の素のような調味料は、塩化ナトリウムが人工物だから体に悪いとケチをつけられたりするのに、化粧品が、槍玉に挙げられにくいのはどうしてだろう。

こっちの方が胡散臭さでは上回ってそうなのに。

そんなことを思いながらも、せっかくだし買ってみようかなという思いが心の内に湧いてきた。

大学一年生のうちに、色々と試しておけば、後々役にたつかもしれない。

今だったら、大目に見てもらえるだろう。

価格は、八百円。

ガリガリ君八本ぶんだ。

赤城乳業の頑張りに敬意を払いながら、ガリガリ君十本ぶんのお会計を済ませて、コンビニを出た。

化粧品は明日試してみることにして、その日はガリガリ君を食べて、歯を磨いて寝た。

翌日、朝六時に起きた私は、早速使ってみた。

裏に書いてある注意書きを読むと、適量手のひらに出して使うこと、顔全体に使わないようにすることと書かれていた。

先に書いたように、効果は抜群だった。

ただ、どうもおかしい。

一週間程使い続けたが、湊にも友人にも全く気づかれることはなかった。

自分では、顔がかなり綺麗になってきていると思っていたが、客観的には、大して変わっていないようなのだ。

なぜだろうと考えた私は、一つの答えに辿り着いた。

化粧品を使う量が少ないのだ。

初めて使うので、心なしか量をセーブしてしまっていたのだ。

この一週間で使い勝手も分かってきたのだし、量を増やしてみてもいいのかもしれない。

結局のところ、美しさというのは、他人に評価されないと意味がないものだ。

それからは、量を少し多めに使うようになった。

本当は、豪快に使えたら良かったのだが、それなりのお値段も相まって、躊躇した。

 

 

 

 

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