まずは、私に今起こっていることを知ってもらわないと。
いきなり家に呼び出して、この姿を見せたら、いくら妥協のある彼女だって、気を失いかけない。
写真を撮って送ってみようかな。
文字で説明したとしても、意味不明なことになって、余計に混乱を招くだけだろうし。
スマホのカメラを起動する。
やっぱり、私の顔鏡になってる。
あまりにも現実離れしていることを体験すると、人は、逆に冷静になれるのかもしれない。
取り乱したりすることなく、異形の頭を受け入れられるようになった。
インカメラに映っている私の顔には、水滴がついている。
顔を拭かずにソファまでやってきてしまったことを思い出した。
手も濡れているはずのに、どうして乾いているんだろう。
そんな疑問も頭に浮かび上がったが、ここでは、スルーした。
もはや理屈は通じなくなっているのだ。
ジェルを手にベッタリとつけていたのだから、水が弾かれたのかもしれない。
インカメラで確認しかながら、水滴を机の上のティッシュで丁寧に拭いていく。
顔であれ、鏡であれ、ゴシゴシと拭くのは、抵抗がある。
それを済ませると、写真撮影に取り掛かった。
ふざけて加工した写真とは、思われないように、証明写真のような画角で撮ることにした。
こうすると、改まった感じが出ると思ったからだ。
スマホを片腕でがっちりと固定して、親指でボタンを押す。
ピカっとスマホから光が発せられた。
眩しくて、思わず目を逸らす。
取れた写真の出来栄えは、もちろん悪かった。
画面の中央部がピカピカと光っていて、撮影したものがよく分からない。
室内が暗いのもあるだろう。
薄いカーテンからわずかに日光が差すくらいの明るさだった。
部屋の電気を付けて、いざ再チャレンジ。
今度は、上手く撮れた。
これなら、美咲にも把握してもらえるだろう。
写真と、新しく買った化粧品を使ったら、顔が鏡になったとざっくり起きたことを説明するメッセージをまとめて、彼女に送信した。
返信はすぐに返ってきた。
「AIかなんか?気持ち悪い」
予想していたよりも辛辣だった。
「違うよ。本当に顔が鏡になったの。AIじゃなくて、正真正銘の私」
すぐに訂正?をする。
彼女の言っていることのほうが、まともに感じられる。
「へー」
短い返事が返ってくる。
つっこんだところで、どうにもならないと思ったのだろう。
「今日私の家来てくれない。相談したい」
「まぁ、いいけど」
この後も何回かやり取りして、一時間半もすれば、来てくれることになった。
やっぱり美咲は頼りになるなぁ。