「ほら、直接触って確認してみてよ。仮装してるわけじゃないから」
私は、美咲のほうに頭を傾ける。
「じゃあ、遠慮なく。壊れても責任取らないから」
やっぱり信じられてない。けど、クオリティの高さは認めているような言いかただ。まぁ、本当に鏡になってるからね。
美咲の手が私の顔に触れる。
結構力が強い。痛たた。
「ちょっと優しく触ってよ」
「えー、直接触ってるわけじゃないでしょ」
今度は、首元に手を伸ばしてくる。
「ここら辺で繋がってるんでしょ」
「ひゃひゃ、くすぐったい」
「動かないで、どこで繋がってるのか分からなくなっちゃうでしょ」
「そんなこと言われても、しょうがないじゃん。ひひ」
首元を細かく探ってくるので、くすぐったい。
「あれー、繋ぎ目が見つからない。おかしいな」
「だから、言ってるでしょ。本当に鏡になってるの」
これでもかと主張する。
「はぁ、わかったよ。降参するから、タネ教えてよ」
「タネなんかない。顔洗ってたら、勝手にこうなったんだから」
「どうすればこんなんなっちゃうかね」
「こっちが聞きたいわ」
思わず、美咲に八つ当たりをしてしまう。
「そういえば、新しく買った化粧品使ったらこうなったって、メッセージに書いてあったけど、それは、どこにあるの」
ドタバタしてる間に、彼女の頭の中で、整理がついたらしい。
洗面台に彼女と一緒に言って、例の品を取って渡す。
「これ?」
「そう」
「見たところ、普通の化粧品だけどな、どこで買ったの」
「近くのコンビニ。キャンペーンやってて、興味出たからつい」
「なら、怪しいものではなさそうだけど」
SNSで他に私みたいなことになった人がいないか調べてみるように、言われ、リビングにスマホを取りに行く。
「名前教えて」
聞こえるように、大声で言う。
「ミロワールだって」
よし、ミノワールね。検索。
調べてみても、私以外で、異常を感じた人はいないみたいだった。
私だけの特別なケースってことかな。
洗面台に戻ると、衝撃的な光景を目の当たりにした。
美咲が使っていたのだ。
「ちょっと、人の話聞いてた?」
「大丈夫だよ。残ってたのをちょっと使っただけだから」
私がさっきほとんど使いきっていたはずなので、心配することはないのだろう。
私だって、使う量が少なかったときは、何も起こらなかったわけだし。
そういえば、注意書きに量について書いてあったような。
「一旦貸して」、美咲から化粧品を受け取って裏の細かい文字に目を光らせる。
顔全体には使わないように。
一瞬伝えるか迷ったが、朝から呼び出しておいて、隠しごとをしておくのも気が引けるので、私の愚行を彼女にも共有することにした。
「あの」
「どうかした?」
私の話を聞いた彼女は、呆れたように言った。
「馬鹿じゃないの」