オーバーロード〜約束の指輪〜   作:愛飢夫

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プロローグ

 DMMORPG『ユグドラシル』

 

 かつては一世を風靡した体験型MMORPGである。

 

 そのユグドラシルも、遂にサービス終了となる日を迎えていた。

 

 そんなユグドラシル最後の日、プロゲーマーであり超有名ゲームプレイ動画配信者でもある彼もユグドラシルにログインしていた。

 

「ここも今日で最終日か……色々あったなぁ」

 

 エルフの特徴である長い耳を触りながら、一人丘の上から大きな街を眺めている。

 

 彼の名前はペニー。

 

 今や日本を代表するプロゲーマーの一人であり、カップルゲームプレイ動画配信者『ペニー&スー』としても知られているユグドラシルでも有数の超有名プレイヤーだ。

 

 彼が有名になったゲームこそがこのユグドラシルであり、彼こそがユグドラシルにおいて種族レベルの無いはずの人間種、森妖精(エルフ)を使用して唯一種族レベルを獲得した男なのだ。

 その獲得の瞬間を撮影した動画で大バズり。一気にゲームプレイ動画配信者としてのスター街道に躍り出た経緯を持っている。

 

 そんな超有名人である彼が、他の誰とも絡まずにただ一人丘の上で黄昏れる。

 

「スーちゃんと出会ったのもユグドラシルだったよな。懐かしい」

 

 左手の薬指に装備している指輪を眺める。

 

 アイテム名『エンゲージリング』

 

 対となる指輪を持っている者がログインしていると宝石の色が変わり、一定距離以内に互いが存在していると全ステータスが上昇する世界級(ワールド)アイテムだ。

 

 世界級(ワールド)アイテムにしては効果がしょぼいように感じられるが、その分ステータスの上昇率が高く、これを装備した二人組であれば100レベルの相手が20人居ても勝てると言われるほどの効果を発揮する。

 

 森妖精(エルフ)として唯一の『古代種(エルダー)』であり、かつワールドチャンピオン』の職業(クラス)を持つ『ユグドラシルでも最上位の前衛であるペニーと対となるプレーヤーは、同じくゲームプレイ動画配信者ペニー&スーのスーである。

 

 エルフ唯一のエルダーであり、ワールドチャンピオンでもあるペニーに対し、スーの種族は人間であり、職業(クラス)は『ワールドディザスター』である。

 

 つまり前衛職最強であるワールドチャンピオンと、後衛職最強のワールドディザスターのコンビ。

 その二人がエンゲージリングの効果により爆発的にステータスを上昇させるという相手からすれば悪夢のようなプレーヤーであった。

 

 現実世界(リアル)でも将来を誓いあっていた二人なのだが、今ペニーは一人で佇んでいる。

 

「スーちゃん……」

 

 全ての始まりは半年前、ペニーは突然スーから別れを告げられた。

 

 何故と問い詰めたのだが、スーは理由を明かさずペニーの前から姿を消した。

 

 それからのペニーは全てにやる気が起こらず、今までの蓄えを消費するだけの生活を送っていた。

 

 そして今日の朝、とんでもないニュースがペニーの目に飛び込んできた。

 

『人気ゲームプレイ動画配信者、ペニー&スーのスーが自宅で首を吊っているのを管理人が発見』

 

 ペニー最愛の人が、人知れず命を絶っていた。

 

 それを見たペニーは、生きる希望を無くして自らも命を絶とうかと考えた。

 考えたのだが、最後にスーとの思い出の詰まったユグドラシルにログインしようと考え現在に至る。

 

 奇しくも今日はユグドラシルの最終日、自分の原点であるユグドラシルと命日を同じくすることに不思議な一体感を感じながら交流欄を開くと、そこにスーからメールが届いていることに気がついた。

 

「スーちゃん……」

 

 慌ててメールを開き、内容を読む。

 

 そこには、ペニーに別れを切り出した理由と、自ら命を絶つ理由が書かれていた。

 

 どうやらスーはとある企業案件を受けた際、そこの企業の重役に目を付けられ自分の女になることを強要されたらしい。

 断われば相方であるペニーがどうなるかわかるよね? と脅されて……

 

 そんなことをペニーに相談できるはずもなく、スーはそれを泣く泣く了承。

 重役がほかの女に目を向け、スーは自由の身となったのだが、汚れた体でペニーの元に戻ることも出来ず、自ら命を絶つ決意を固めたらしい。

 

「そんな……」

 

 ペニーは絶望した。

 おそらくスーはユグドラシルに書き込めば俺が読むことは無いと思ったのだろう。

 別れる少し前からオワコン化していたユグドラシルはあまり真剣にプレイしていなかったから。

 

 俺に伝えたい、けれど知られたくない、そんな葛藤がありユグドラシルのメール機能を選択したものと思われた。

 

「確かスーちゃんに案件を打診してきた企業は……」

 

 記憶を辿り、スーに打診した企業を思い出す。

 いい噂を聞かない企業であったが、それに関してはどの企業も同じなので気にしても仕方がない。

 

「今の時間は15時過ぎ……この時間ならまだ間に合う」

 

 ペニーはユグドラシルからログアウトし、急いでとある知り合いに連絡を取った。

 

 そしてペニーがユグドラシルからログアウトして数時間後、『ペニー&スー最後の動画』と銘打たれた生配信、『自爆テロやってみた』が全世界に公開された。




復活しました。
理由は特にありません。思い付きです。
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