無事エ・ランテルに到着した俺は、名物となっている城壁に感動し、しばらく見惚れていた。
「アレスくん、感動しているところ悪いけど、順番が来たから行くよ」
「あ、はい!」
ベロテさんに呼ばれて我に返り、皆と一緒に検問を受ける。
検問とはいえ、俺が持っているのは出発前に父から貰った銀貨と銅貨が数枚入った袋だけなのですぐに終わる。
バレアレさんたちも軽く荷物のチェックを受けただけで終わりなようで、呼ばれてから数分で通行の許可が降りた。
「よし、じゃあ冒険者組合へ向かおうか」
ベロテさんたちの先導で冒険者組合へと向かう。
道中、大きな建物ばかり並んでいたのでついキョロキョロしてしまい、バレアレさんや天狼のメンバーたちに生暖かい目で見られてしまった。
田舎者丸出しでお恥ずかしい……
「着いたぞ、ここがエ・ランテルの冒険者組合だ」
「大きい……」
案内され到着したのは、周りの建物と比べてかなり大きくて立派な建物だった。
「ようこそ、冒険者の世界へ」
扉を開け、中に入るとベロテさんが振り返りそんなことを言ってきた。
「ふわぁぁ……」
組合の中に足を踏み入れると、そこには親の顔より見た光景、ゲームでよくある『冒険者ギルド』が広がっていた。
まぁ前世の親とか俺が小学校卒業すると同時に亡くなってしまったし、早朝から夜中まで働いてたからあまり顔合わせて無いんですけどね。
それに比べて今世の親……特に父は起きてる間ほぼ一緒に居たからなぁ……
やべ、ちょっと会いたくなってきた。
「俺たちは依頼完了の報告をしてくるから、アレスくんも一緒に来るといい。報告が終わったら登録しよう」
「はい!」
ベロテさんに促され、受付の列に並ぶ。
そこまで人の多い時間ではなかったのか、割とすぐに順番が回ってきた。
「『天狼』のベロテだ。バレアレさんからの指名依頼の完了報告に来た」
「はい、承りました。それでは……」
へぇ、ベロテさんたちのパーティって天狼ってパーティ名なのか……かっこいいな。
ベロテさんは受付のお姉さんと少しの間やり取りして、最後にお盆に載せられた硬貨を受け取って俺の方へと振り返った。
「じゃあ次の要件だ。この子の登録を頼みたい」
「承りました。組合規則は?」
「ああ、戻るまでに教えてある」
カルネ村からエ・ランテルに戻るまでの道中に色々教わったうちに冒険者組合規則もあった。
何でも人間同士の争いに首を突っ込まないだの、国家に関わっちゃいけないだの、無料で治療行為はするななどなど、案外縛りが多い気がする。
まぁ他人同士の争いとか巻き込まれなければ気にしないし、王国は腐敗してるという話だから国に関わるつもりもない。
武技に興味津々なので基本的に戦士として活動するつもりなので、治療行為もしないからあまり関係は無いのかもしれない。
「わかりました。それでは規則の説明は省きますね。それでは……」
それから名前、年齢、出身地などのいくつかの質問を受け、それに答えているとあっさりと登録は終わった。
「ではこちらがプレートです」
「おお……」
銅でできたプレートを受け取る。これで俺も冒険者だ。
「これから頑張ってくださいね」
「はい! ありがとうございました!」
受付のお姉さんにお礼を言ってカウンターから離れる。
さっさと退かないと次の人の邪魔にしかならないからね。
「よし、じゃあ依頼の受け方を教えてあげよう」
「お願いします!」
「とはいえ難しいことは何も無くてね、そこに貼られている依頼表から受けたいものを選んで……」
ベロテさんに説明してもらいながら依頼が張り出された掲示板を眺めるが、そこで俺は重大な事実に気がついてしまった。
「ベロテさん……」
「何かわからないことがあったかな?」
「字が……読めません……」
「え?」
言われてみれば5歳で記憶が戻ってから今日までこの世界の文字を見たことがなかった。
言葉は普通に通じているので普通に読み書き出来るものだろうと思っていたのだが、そうは問屋が卸さなかったようだ。
「それは……困ったね」
「読み書きなら家で教えるよ」
依頼票が貼られている掲示板の前で困っていると、バレアレさんが助け舟を出してくれた。
「エモットさんから頼まれてるしね。アレスくんはしばらく家に泊まる予定だから、その間に教えてあげるよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
非常に有難い。
いくら
ここはお言葉に甘えよう。
「どういたしまして。さて、登録も終えたことだし、早速行こうか」
「はい!」
天狼のメンバーに色々教えてもらったことと登録の付き添いまでしてもらったことに対してのお礼を言って、俺はバレアレさんと一緒にバレアレさんの自宅へと向かった。
「おかえりなさいあなた。それといらっしゃいアレスくん」
「こんにちは。お世話になります」
「ふふ、ご丁寧にありがとう。さぁ、どうぞ中に」
出迎えてくれたママーレア……フェイさんに促され家の中へと案内される。
一階は店舗と作業場になっているようで、二階の住居部分へと足を踏み入れた。
「アレスくん!」
「ンフィー!」
中に足を踏み入れると、ンフィーレアが笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。
なんだか久々の感動の再会のようなシチュエーションだが、今回パパーレア……ケヴィンさんの薬草採取に同行していなかっただけで、前回の採取には同行して来ている。
なので前回会ってから一ヶ月も経っていない。
ちょっと大袈裟な気がする。
「おやおやンフィーレア、お友達かい?」
「あ、おばあちゃん。うん、僕の友達のアレスくんだよ」
友達……そうかぁ、友達かぁ……
ンフィーレアはエンリを狙うケダモノだけど……そっか、友達かぁ……
妹狙われるのは腹立つけど、友達の恋路は応援したい。
俺はどうすれば?
「こんにちは、アレス・エモットです」
「礼儀正しい子だねぇ。ンフィーレアの祖母のリイジーだよ。ンフィーレアと仲良くしてくれてありがとうね」
ごめんなさいリイジーさん……一回ガチめに心臓にぎりつぶそうとしてました。
未遂なんで許してください。
「ンフィーレア、アレスくんはしばらくうちに泊まるから、文字の読み書きを教えてあげなさい」
「文字の読み書き?」
「ああ。帰ってくる前に冒険者組合に寄ったんだがね……」
そこで俺が読み書きが出来ないことが発覚したのだ。
「冒険者として依頼を受けるためには依頼書が読めないといけないからね」
「そうなんだ、わかったよ」
「ンフィー、よろしくね」
「任せてよ!」
ンフィーレアはドヤ顔で胸を張っている。
くそぅ、ここで借りを作ってしまったら、エンリとの関係を堂々と邪魔できない……
「とりあえず夕食にしようか。アレスくん、自分の家だと思って寛いでくれ」
「はい。ありがとうございます」
それから一週間ほどバレアレさん宅に滞在し、バレアレ薬品店のお手伝いをしながら文字の読み書きを教えてもらった。
その間に召喚魔法を駆使して街の地図を作り、《
スーちゃんはエ・ランテルには居ないらしい。
早く活動してお金を貯めて次の街を目指さなければ……!
一応宣伝
賢者の孫も触ってたりするのでよろしければそちらもよろしくお願いしまぁす。