「急に呼び出して済まないね」
「大丈夫です。それで、なんの用ですか?」
チャラ男や小便タレには舐めた態度で接するが、一応自分の所属する組織の偉い人が相手なので丁寧な口調で対応する。
「キミたちの昇格についてだ。多くの被害を出した未知のアンデッドに果敢に挑み、これを討伐したキミたち二人を昇格させることにした」
「おお」
昇格か……
なぁなぁでモンスター狩りまくってたら
冒険者ランクを上げるよりニニャのレベルを上げる方が優先度は高かったからね。
「とこまで上がるんです?
「ミスリルだ」
「ふぇ?」
ミスリル?
今現在ここエ・ランテルに在籍しているミスリル級冒険者チームは『虹』だけ。
次にミスリル級に上がるのは一時期俺もお世話になっていたチームでもある天狼だと言われていたのだが、まさかの追い越しに驚くばかりである。
「ミスリルだ」
「いや、聞こえてます」
あまりの衝撃にリアクションが取れなかっただけである。
ほら、隣のニニャも口をあんぐり開けて呆然としているし……
はしたないよ?
「これがプレートだ」
「組合長ってマイペースですよね」
俺たちが話についていけていないのを無視して、組合長はミスリルのプレートを取り出して俺とニニャの前に並べた。
「それとこれが特別報酬だ」
組合長はさらにふたつの皮袋を取り出してプレートの隣に並べる。
「金貨が100枚ずつ入っている。収めてくれたまえ」
「金貨……」
「100枚……」
「不服かね?」
「いや、現実味が……」
農村出身者を舐めないで頂きたい。
俺はカルネ村で生活していた時には金貨なんて見たこと無かったんだぞ!
「金貨なんてほとんど見た事なかったもので……ちなみにこれ、どれくらいの価値があるんですか?」
「価値か……参考になるかは分からんが、私の給金が月に金貨8枚だな」
結構な高給取りなんだと組合長は笑う。
ふむ、つまり組合長の年収は金貨96枚、ほぼ同額か……
これ、カルネ村なら一生暮らせるんじゃないかな?
まあ使う店無いんだけど。
「文句ないです」
「うむ。ちなみにキミたちが狩って来たアンデッドの集計も終わっている頃だから帰りに受け取って帰るといい」
「まさかの別会計?」
コミコミだと思ってた。
金貨100枚に加えてさらに貰えるなんて……
もう働かなくてもいいんじゃないのかな?
「話は以上だ。これからも頑張ってくれたまえ」
「あ、はい」
組合長との話も終わったので、今まで身に付けていた
これで俺たちもミスリル級冒険者だ。
未だに現実を受け止めきれていないニニャを連れて、一階の受付エリアに移動してイシュペンさんから討伐報酬を受け取る。
「ミスリル級に昇格したのね。おめでとう」
「ありがとうございます」
報酬を受け取り、サインをしているとイシュペンさんが祝いの言葉を掛けてくれた。
「今まで何回も昇格試験を断っておいてこんな方法でランクアップするなんて凄いわね」
「試験とか時間かかるしめんどいですもん。そんなの受けるくらいならモンスター狩ってる方がいいです」
俺とニニャの殲滅力は他のチームの追随を許さない。
下手な依頼を受けるより遥かに稼げるのだ。
「それは確かにそうね。ところでチーム名は決まっているの?」
「決まってますよ。『無敵☆最強団』です」
「ちょっと待って」
ミスリル級に上がったということでチーム名を登録することとなったので、思いついた名前を言ってみたらニニャにすごい顔で止められてしまった。
「なに?」
「絶対に嫌だ」
どうやら嫌らしい。
こんなにかっこよくてスマートで俺たちを表現しているチーム名なのにどこが気に入らないのだろう?
「嫌なの?」
「嫌だよ!」
俺は『無敵☆最強団』いいと思うんだけどなぁ……
「じゃあ『モンスター絶対殺す団』」
「やだ」
「『
「やだ」
「『無敵☆つよつよ団』」
「ふざけてるの?」
「『ペニー&スー』」
「誰だよ」
ふむ、これだけ案を出しても採用されないとなると……
俺とニニャの共通点から引っ張ってくることにしようか。
俺とニニャの共通点、それはお互い明るめの茶髪だろう。
茶髪……茶色……お茶……
「『お茶の子さいさい団』!」
「いい加減にして!」
割とガチ目のトーンで怒られてしまった。
結構真面目に考えたつもりなんだけどなぁ……
「じゃあ何がいいのさ?」
「もっとこう……何かあるでしょ!?」
「ねぇよ! あと思いつくのは『白銀の閃光』くらいだよ!」
これは俺のユグドラシル時代の異名である。
俺が装備していたワールドチャンピオンの鎧が白銀だったのと、俺のプレイスタイルが超高速攻撃型だったことから付けられた異名だ。
防御力フル無視で攻撃と速度に特化したロマン型ビルドを組んでいたのでこのような異名が付けられたのだが、あまりにも厨二ちっくなのであまり気に入ってはいない。
「『白銀の閃光』……それいい!」
「え?」
「それにしよう!」
何故だろう、ニニャが乗り気だ。
本気でユグドラシル時代の俺の異名をチーム名にしようとしている。
「今の俺たちに白銀要素ほとんど無いけどそれでいいの?」
「これから装備品は白銀で揃えればいいんだし、これでいいよ!」
「……まぁニニャがそう言うなら」
考えてみればスーちゃんサイドからしても俺が『白銀の閃光』を名乗っていればすぐに気付いてくれるだろう。
スーちゃんから接触してくれる可能性が上がるならこれでもいいか。
「じゃあそういうことで」
「登録しておきますね!」
横で聞いていたイシュペンさんも納得したようで、俺たちのチーム名は『白銀の閃光』に決定してしまった。
「よし、用事も全部済んだし……今日は自由時間にしようか」
「そうだね。じゃあ資料室に――」
「アレスくん!」
組合での予定が済んだので、あとはお休みにしようとニニャと話していると、聞き覚えのある声で名前を呼ばれたのでそちらに視線を向ける。
「ンフィーじゃん、こんなところでどうしたの?」
「久しぶり! えっと、僕はお父さんとカルネ村に行くからその護衛をお願いしに来たんだけど……」
ンフィーレアの視線が俺の首元へと移動して、そこで止まった。
「アレスくん、ミスリル級になったの!?」
「うん。今さっきプレート貰ってきたんだ」
「すごい……あっという間にミスリル級になるなんて……」
ンフィーレアと話していたことで、周りの冒険者たちも気付いたようだ。
皆、俺のプレートを見て驚いている。
「ンフィー、出発は何時なの?」
大変に居心地がよろしくないので話を逸らす。
早めに打ち切ってしまった方がいいだろう。
「明日の朝出発なんだけど……」
「ニニャ、いい?」
「いいよ。バレアレさんにはお世話になったんでしょ?」
ニニャに視線を向けて問うと、ニニャは頷いてくれた。
「ンフィー、それ俺たちが受けるよ。イシュペンさん、手続きお願いします」
「かしこまりました」
「いや……ミスリル級のアレスくんを雇うほどお金持ってないよ?」
「気にしないで。ンフィーの予定してた金額で受けるから」
今回は報酬目的ではなくお世話になったバレアレさん一家に対する恩返しみたいなものだからね。
報酬も一度受け取ってから返すつもりだから金額は関係ないのだ。
「ありがとう」
「いいよ。俺もそろそろ一回カルネ村に帰りたかったしちょうどいいからさ」
ちょいちょい時間を見つけては転移の魔法で帰ってはいるのだが、中々長時間滞在出来ていないのでそろそろエンリとネムに泣かれそうなのだ。
バレアレさんたちと一緒に依頼として向かえば数日は滞在出来るだろう。
「じゃあそういうことで……待ち合わせは組合前でいいのかな?」
「うん、日が昇ったくらいに」
「了解、じゃあまた明日!」
ンフィーレアに軽く手を挙げて別れを告げ組合を後にする。
ニニャは資料室に籠るらしいのでこれからは別行動だ。
さて……何して時間を潰そうかな?
連休終わったので一日一話に戻ります。
なにか嬉しいことがあればブーストするかもしれません。