ンフィーレアと別れた後、俺は実家に持って帰るお土産を購入するために市場へと向かい、色々と物色していた。
お土産は干し肉などの保存食や塩などの調味料、新しい農具やエンリとネムの機嫌を取るために日持ちのするお菓子など、思いつく限りのものを買っていたらあっという間に金貨が2枚ほど消えていった。
これは買いすぎたかもしれん。
まぁこの依頼を終えたらスーちゃんとニニャの姉を探すための旅に出ようかと考えているので、その際に必要となる物資も一緒に購入したと考えれば損はしていないだろう。
《
ということでなんの憂いもなくさらに金貨を1枚使って様々な物を購入してから宿へと戻った。
「おかえりアレス」
「ただいまー……ってペテルくんたちも戻ってたんだ」
宿に戻り、いつもの相部屋に入るとそこにはニニャと漆黒の剣のメンバーが揃ってベッドに腰掛け、何やら楽しそうに話をしていた。
俺たちは出会った宿に今まで滞在しており、相部屋の相手がこの漆黒の剣の三人だったのだ。
その縁で仲良くなり、何度か一緒にモンスター狩りにも行っている。
ちなみにニニャに絡んでいたハゲたちも別の部屋に泊まってるよ。
あの後俺たちが
なんでもアレは新人に対する伝統行事のようなものだったらしい。
ああやって顔の怖い先輩に絡まれた時にどう対応するかで新人を見極めるんだそうだ。
チビって泣いてしまうようでは向いていないから辞めるよう促すのも彼らの役目らしい。
将来ある若者を無駄に死なせないためにやっている事だと聞いてちょっと申し訳ない気分になったものだ。
ちなみにニニャは辞めた方が身のためと思われていたようだが、短期間で第三位階、今では第四位階魔法を使う
「アレスはどこ行ってたんだ? もしかして女のところか?」
「黙れチャラ男、お前と一緒にすんな」
「ははは、いつもルクルットが済まないね」
ペテルくんが頭をかきながら謝罪してくるが、気にしないで欲しい。
「謝らなくていいよ。別に嫌いなわけじゃないし」
「お、アレスがデレた! 俺はアレスのこと好きだぜぇ」
「あ、ごめんやっぱなし。やっぱり嫌いだわ」
「ひでぇ!」
「これはアレスの勝ちであるな!」
ダインさんがガハハと豪快に笑うと、ペテルくんやニニャも釣られて笑う。
「ウソウソ、嫌いじゃないよ。むしろどっちかと言うと好き寄りだよ」
そう、本当にチャラ男のことは嫌いでは無いのだ。
むしろこのノリは話していて楽しいからチャラ男と話すのは好きなくらいだ。
「おー、どうせまた上げて落とすんだろ?」
「落とさないよ? ルクなんとかさん好きー。だから俺たちの狩りに招待しちゃう」
「ルクルットな? 途中まではちょっと嬉しかったけど最後やっぱ落とされたわ」
「落としてないよ?」
「お前らの狩りに俺だけついて行くとか死亡フラグだからな?」
俺たちと漆黒の剣では狩りの密度が違いすぎる。
漆黒の剣が数日かけてゴブリン数十匹を狩るのに対し、俺たちは一日百匹ペースで狩るからだ。
「でも稼げるし強くなれるじゃん」
「それは否定しないけどよ……」
一緒に狩りに行くたびにひぃひぃ言ってるからね。
この世界の冒険者は甘いと思う。
その後流れで一緒に夕飯を食べ、また部屋で雑談に花を咲かせてその日を終えた。
◇◆
翌朝、起きて準備を整えてニニャと共に冒険者組合の前に行くと、そこには既にンフィーレアとパパーレアが俺たちを待っていた。
「すみません、お待たせしました」
「いや、待ってないよ。アレスくん、ニニャさん、今日はよろしくね」
「はい!」
ニニャのことは組む事になってすぐバレアレ一家には報告している。
なんせエ・ランテルにおいてバレアレさんは俺の保護者のようなものだからね。
「じゃあ出発しよう」
バレアレさんの号令で出発、特に問題もなくのんびりと進んでいたのだが、休憩中に大きな問題が向こうからやってきてしまった。
「おい! 早く逃げろ!」
王国方面から走ってきたのは
先頭を走るイグヴァルジは俺たちが街道脇で休憩しているのを見つけると、大きな声で逃げろと叫んできた。
「何事?」
「ギガントバジリスクだ!」
ギガントバジリスク?
あの《石化の魔眼》やら毒の体液やらを持つめんどくさい系モンスターのギガントバジリスク?
「どうしてこんな場所に?」
ギガントバジリスクがこの辺りに出現するなんて聞いたことがない。
もっと北の方に生息してるって前にニニャが言ってたもん。
「しるかよ! 死にたくなければさっさと逃げろ!」
そう言い残してイグヴァルジたちクラルグラはエ・ランテル方面へと向けて脱兎のごとく逃げ出した。
「アレスくん! 僕たちも早く逃げよう!」
「解毒のポーションはあるけど、石化を解除するポーションは無いんだ、早く逃げよう!」
ンフィーレアとバレアレさんは立ち上がり、慌てて逃げる準備を始めたが、正直これ逃げる訳にはいかないんだよね……
俺たちがこのまま逃げてしまったらギガントバジリスクはそのまま進んでエ・ランテルまで辿り着いてしまう可能性が高い。
ならばここで仕留める以外に選択肢は無いだろう。
「ンフィーたちは下がってて! ニニャ、やるぞ」
「うん!」
ニニャも同じ考えだったようで、杖を握りしめ立ち上がる。
その目には、決死の決意が見て取れた。
「そんな……危険だ!」
「でもここで食い止めないとエ・ランテルまで辿り着かれるとヤバいですよね?」
「それは……」
バレアレさんも分かっているのだろう。
このままギガントバジリスクがエ・ランテルまで辿り着いてしまうと街は壊滅間違いなしだ。
「アレスくん……」
「ンフィー、大丈夫。俺たちで殺るから」
安心させるようにンフィーレアに笑いかけ、腰の剣を叩く。
「んじゃ、ちょっとぶった斬ってくる!」
俺とニニャは頷き合い、クラルグラが逃げてきた方向へと足を進める。
しかしバレアレ一家は運が悪いというかなんというか……
以前はゴブリン軍団に襲われて、今回はギガントバジリスクって……
世界がバレアレさんたちを殺しに来てるのかな?
まぁ例えそうだとしても助けられるなら助けるし、万が一があったとしても復活させるけどね!