ンフィーレアたちには、割とすぐに追いつくことが出来た。
当然だ、戦闘にかかった時間は10分ほどであるし、魔法と武技の重ねがけでそこらの馬の全速力より早い速度で走って追いかけたのだから。
「おーい!」
エ・ランテルに向けて走っている荷馬車を追いかけながら声をかける。
「アレスくん!」
荷台に載せられていたンフィーレアが俺に気付き、立ち上がった。
危ないよ? 落ちちゃうよ?
「アレスくん、ギガントバジリスクは!?」
「倒したよ。だからもう安心」
「倒したの!?」
馬車を停めたバレアレさんに尋ねられたので、倒したと答えると大変に驚かれた。
そんな英雄を見る目で見られても困る。
倒したのは俺じゃなくてニニャだから……
俺は怒られてただけだから。
「それで……死体は? まだ残ってるのかな?」
「持ってきてますよ。そういえば体液がポーションの材料になるって聞いたんですけど、いります?」
「全部買おう」
バレアレさんはギガントバジリスクの死体を気にしていたので、もしやと思い体液の話をしてみるとすごい食いつきを見せてきた。
この反応、レア素材なんだろうな。
「えっと……」
そこから価格交渉が始まり、俺は無料を提示してみたが即却下。
改めて相場を聞いてからお身内価格を提示したがそれも却下。
プロの商人の交渉術に敵うはずもなく……奮闘虚しく相場での買い取りとなってしまった。
なんでも優先購入権があるだけでほかの業者から羨望の眼差しで見られるのに、割引までしてもらっては恨まれるからと頑なに断られてしまったのだ。
安く売ろうとする冒険者と高く買おうとする商人って構図が逆な気もするけどね。
「よし、ではそういうことだから、一度店に戻ろうか」
「わかりました……」
逃げるためにエ・ランテル方面へと走っていたので、街まではもう目と鼻の先。
それなら一度戻って体液の引渡しと支払いを済ませてしまおうということになり、俺たちは一度エ・ランテルに戻ることにした。
ギガントバジリスクから逃げていたクラルグラが組合に報告しているだろうし、討伐報告もしておかないと無意味に警戒させてしまうしね。
先にバレアレ薬品店に向かい、作業場でギガントバジリスクの死体を【アイテムボックス】から取り出す。
討伐証明部位の角だけを切り取り、血抜きをバレアレさんに任せて俺とニニャは角だけを持って組合へと向かう。
「こんちはー」
組合の扉を開けて中に入ると、やはり中は大騒ぎとなっており、その中心にはイグヴァルジを始めとするクラルグラのメンバーが勢揃いしていた。
「アレスくん! 良かった、まだ街に居たのね!」
「イシュペンさんこんにちは。今度は何の騒ぎですか? ギガントバジリスクですか?」
「そうなの! ギガントバジリスクが現れたの!」
やはりそうか。
そして俺たちが街に居たことを喜んでいるということは俺たちに討伐を任せたいのだろう。
「すぐ組合長を呼んでくるから少し待ってて!」
「あ、ちょ!」
もう倒したと伝えようとしたのだが、俺の発言を待たずにイシュペンさんは立ち上がり、奥の職員用の階段を使って上の階へと駆け上がって行ってしまった。
「アレス……」
「これはしょうがなくない?」
騒ぎの原因が何かも確かめずにいきなり「ギガントバジリスク倒したんすよ!」とか言っても訳分からないよね?
「次からは私が対応するから」
「お願いします」
ニニャに冷めた目で見られつつその場で待機すること数分、アフロ組合長を伴いイシュペンさんがカウンターに戻ってきた。
「まだ街に居てくれて助かった。君たちに緊急依頼をお願いしたい」
「あの……」
ニニャが口を挟もうとするが、アフロ組合長は全く気にする素振りもなく話を続ける。
もうアフロでいいや。ヒゲアフロだ。名前知らんし。
「街の近くにギガントバジリスクが出現した。発見したクラルグラの話では既にいくつかの村が壊滅したそうだ……今、このエ・ランテルに居るミスリル級以上の冒険者チームは君たち『白銀の閃光』ただひとつ。成功した暁にはオリハルコンを約束するのでどうか討伐を引き受けてもらいたい!」
「いや……あの……」
「天狼を始めとするいくつかの
「あの!」
こちらの話を全く聞かないヒゲアフロに対し遂にキレたのか、ニニャがカウンターを叩きながら大きな声を出した。
「な……どうかしたのかね?」
「これを!」
ニニャは俺が持っていたギガントバジリスクの角を奪い、カウンターへと叩き付ける。
「既に討伐しました!」
ギガントバジリスクの討伐証明部位である角を見せ付けられたヒゲアフロは、カウンターに置かれた角と俺の顔を交互に見る。
なんで俺を見るんだよ。
「これは……」
「クラルグラを追いかけていたギガントバジリスクの角です。何度も討伐済だと言おうとしていたのに……話を聞いてください」
「いや……え? ああ……すまない……?」
討伐済ということが信じられないのか、ヒゲアフロは俺、ニニャ、角と視線をさ迷わせる。
「じゃ、オリハルコンってことで……あと討伐報酬よろ……」
「アレス!」
ここだと思ったので口を出してみたが、お気に召さなかったのかニニャから肘打ちを食らってしまい俺は再び口を閉ざした。
「あ……ああ……もちろんだ」
「私たちはこれから依頼でカルネ村に向かいますので、帰ってくるまでにお願いしますね?」
「わかった。戻ったらまた組合に顔を出してくれ」
報酬と昇格は戻ってからか……
「では失礼します」
「お疲れ様でした」
ニニャがヒゲアフロに軽く頭を下げて挨拶をしたので、俺も続いて挨拶をする。
振り返ると、そこには唖然とした顔をしている冒険者多数、邪魔だよ?
「帰るから道開けてー、特にそこのイグヴァルジは隅に寄れ」
俺が声をかけると、冒険者たちはノロノロと動き出して道を開けてくれた。
イグヴァルジは冒険者たちに壁際へと押しやられている。いい気味だ。
「どうもどうも。じゃあお疲れっした」
俺たちは開けてもらった道を通り組合の外へ、そのままバレアレ薬品店へと向かって歩き始めた。