アレスとして意識が覚醒して早半年、ようやく元々のアレスくんの口調である少し舌っ足らずなお子様言葉を習得して普通に喋れるようになってきた。
というか精神は肉体に引っ張られるのか、自然体に振舞っていれば両親から違和感を持たれる事は無さそうだ。
父の農作業のお手伝いとして畑に生えた雑草と戦っていると、カルネ村にしては珍しい外部からの訪問者がやってきた。
「やぁハンスさん、久しぶり」
「バレアレさん、お久しぶりです。薬草採取ですか?」
父に声をかけてきたのは金色の髪を肩口で切りそろえた中々のイケメン。
こう言ってしまうと野暮ったいうちの村の人間とは違い、洗練されているというか……
まぁシティボーイ感溢れるイケメンがやって来て、親しげに父に話しかけてきたのだ。
イケメンの周りには5人の男が立っており、全員がそれなりの武装を整えている。
首元には銀色のドックタグのようなものが掛けられており、話に聞いていた冒険者であることが伺えた。
「ぼうけんしゃさん?」
「おう坊主、冒険者に興味があるのかい?」
「あい!」
イケメンは父と話しているので、後ろにいた冒険者に話しかけてみると、男はしゃがみこんで俺と視線を合わせてくれた。
コイツ、イカつい顔しておいて中々分かってるじゃない。
「つよいの?」
「そうだなぁ、俺たちは銀級だからそれなりかな?」
ガハハと笑いながら頭を撫でてくる。
その手は大きく、剣だこというのだろうか、なんとなくガサガサしていてあまり心地よくは無い。
父から聞いたのだが、冒険者というのは階級があるらしく、下から銅、鉄、銀、金、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトだそうだ。
彼らは銀級ということで、下から3番目の階位だね。
そんなことを考えながら撫でられていると、男の腰のモノに俺の視線は吸い寄せられる。
――剣だ。
「けん!」
「ん? コイツが気になるのか?」
俺が指さすと、男は柄頭をポンポンと叩きながら問いかけてくる。
剣……
その中でも戦士系最強職、ワールドチャンピオンにまで至ったユグドラシルの思い出が強い。
見た限りでは魔法効果は無さそうな古びた鉄剣だが、だからこそ駆け出しの頃の記憶が思い起こされる。
懐かしいなぁ……
「見せてやりたいところだが、流石にコイツは危ないからダメだな!」
「ぶー!」
「ははは、そんな顔してもダメなものはダメだ」
見てみたい、欲を言えば触ってみたかったのだが、やはり子供に剣は危ないということで見せてはくれなかった。
まぁ……当然である。
この場で剣を抜けば彼らの雇い主であるイケメン……バレアレさんやうちの父が飛んでくるだろう。
バレアレさんたちはどうやらこの村のすぐ近くにあるトブの大森林という場所で薬草を採取するためにカルネ村に訪れたらしい。
先程の冒険者の男から聞いたのだが、バレアレさんの母はエ・ランテルという大きな街で一番有名な薬師だそうだ。
バレアレさんには薬を作る才能が無く、こうやって材料を調達したり、商人と掛け合って薬やポーションの販売を行っているそうだ。
ポーション……
ゲームなんかでは定番の回復アイテムだが、この世界にも存在しているらしい。
この世界には魔法もあるそうなので、これはファンタジー世界に異世界転生したということで間違いなさそうだ。
「じゃあハンスさん、我々はこれで……」
「はい。お気を付けて! 今度はンフィーくんも連れて来れたらいいですね!」
「はは、そうですね……アレスくん、うちのンフィーレアと仲良くしてくれるかい?」
「あい!」
ンフィーレアくんは俺の1つ年下で、エンリの1つ上の男の子だそうだ。
当然まだ小さいので、エ・ランテルからカルネ村まで連れてくるのは大変だろうが、早く会ってみたいな……
この村、人口もあまり多くないので同年代の友達ってほとんど居ないんだよね。
こうしてトブの大森林へと向かう一行を見送り、再び農作業のお手伝いへと戻った。
せっかく魔法のある世界に異世界転生したんだから、農民としてではなくやっぱり英雄を目指して戦士職になりたいよな……
今日はここまで。
明日から基本的に1日1話投稿で行きたいと思いますー。
忘れないように皆さんから声掛けしてくださいね。
声の掛け方は感想や高評価、ここ好きです。