それから俺は時間が許す限りユグドラシルについてニニャに語った。
色々な話を聞かせたのだが、特に食いつきが良かったのが『俺とスーちゃんの出会いからお付き合いが始まるまで』と『世界最強の戦士を決める大会で七連覇した話』そして『好敵手たっち・みーの話』だった。
もうちょっとユグドラシルの成り立ちとか、魔法や
女の子だから恋バナに興味を示すのもわかるし、冒険者になるくらいだから英雄譚のような話が好きなのも理解出来るけど、そればかり聞いてくるのには少し辟易した。
まぁ『大会七連覇』は完全な自慢話だし、『好敵手たっち・みー』は昔を思い出して楽しい気分になれたからよかったけどね。
ペニー&スーVSたっち&ウルベルトのガチバトル動画とかクッソバズったからね。
バトルには負けたけど、動画の収益はかなり良かったから実質俺の勝ちと言っても過言ではないだろう。
しかし鍔迫り合いの瞬間に『正・義・降・臨』のエフェクトを出すのは卑怯だとおもう。
あれはビックリするよ。
「すごいね……アレスは前世ですごい人生を生き抜いたんだね」
「まぁね」
ユグドラシルこそ我が人生だ。
「だから前世の力とアイテムを引き継いでるんだよね」
「記憶だけでもすごいのに、力とアイテムまで持ち越すのはずるいよね」
「それ一番俺が思ってる」
完全にチートだよ。
望んでチートをやるのはプロとして有るまじき行為なので絶対にやらないのだが、初めから搭載されてたらこれはもう仕様だろう。
だから俺は気にせず使う!
「なんで今まで出さなかったの?」
「あー……もし最初から強い装備に慣れちゃったら甘えが出るかと思って」
戦う者にとって一番の敵は油断と甘えだからね。
いくら相手が自分より弱くても油断すれば負けるのだ。
だから俺は油断しないようにユグドラシルでは防御力を捨てた紙装甲ビルドを組んでいたのだから。
一発貰ったら死ぬ状況ってドキドキするよね?
「なるほど……確かに……」
「甘えが出たらここまで強くなれて無かったと思うんだ」
だから俺は間違ってない。
メイスも皮鎧も必要経費でした。決して異世界っぽいことをしてみたかったわけではございません。
「うん、言いたいことはあるけど、理解はしたよ。アレスのおかげで強くなれた自覚もあるしね」
「そう言って貰えたなら幸いだよ」
この子ほんとに10歳なの?
俺なら文句のひとつやふたつ言うと思うんだけど……精神年齢俺より上じゃない?
「あ、あとひとつ言っておかないと」
「今度は何? もう何を聞かされても驚かないよ」
ホントに?
「俺、魔法使えます」
「なんとなく予想はしてた」
「第十位階まで使えます」
「……は?」
良かった、驚いて貰えた。
これで驚かれなかったらちょっと残念な気持ちになるところだった。
「第……十……位階?」
「うっす」
「流石に……冗談だよね?」
「ガチっす。それがステータスチェック最大の秘密っす」
捜索には魔法をフル活用するつもりだから言わない訳にはいかないんだよね。
せめてニニャが第六位階魔法《
「第十位階って……どんな魔法があるの?」
「お? 気になります?」
ニニャも
「うん。気になる」
「じゃあお教えしましょう……エ・ランテルくらいの街なら魔法一発で滅びるよ」
「え?」
第十位階も必要ないね。第七位階に存在する《
「もしかして一人で国に勝てたり?」
「普通に勝てると思うよ」
「やらないでよ?」
「やるわけないでしょ」
俺の事をなんだと思ってるんだ。
「はぁ……すごい話聞いちゃったな」
「なんだかごめんね」
「いいよ別に。もう諦めてるから」
「何を?」
諦めるなよ。諦めたらそこで試合終了だぞ?
「アレスのめちゃくちゃっぷり」
「あ、はい」
なんかすみません……それは諦めてください。でも――
「ねぇニニャ」
「何? またとんでもない事聞かされるの?」
「いや、もう開示するべき情報は無いですね」
違うんです。これだけは確認しておこうと思ったんです。
「じゃあどうしたの?」
「怖くないの?」
聞くのは怖いけど、一応これだけは聞いておかないといけないだろう。
もし俺のことが怖くてチームを解散したいのなら受け入れよう。
お姉さんを探す手伝いをする約束は守りたいから情報だけは貰いたいけどね。
「なにが?」
「え、俺が……変な記憶持ってる上にこの世界基準で考えたら恐ろしい力とマジックアイテムを持ってるんだよ? 普通怖くない?」
俺なら怖いね!
「別に……だってアレスはアレスでしょ?」
「そりゃ俺は俺だけど」
「なら別に怖くないよ。寧ろ記憶無しでアイテムと力がある方が怖いよ」
「そうなの?」
そういうものなの?
「だってアレスって馬鹿だけど優しいでしょ?」
「俺は今褒められてるの? 貶されてるの?」
「全力で褒めてるよ」
「なら馬鹿って言わないでよ!」
馬鹿って思い切り悪口じゃん!
「馬鹿は馬鹿でもいい馬鹿だから」
「馬鹿に善し悪しあるの?」
「あるよ」
少しふざけているのかと思ってしまったが、ニニャの顔を見ると真剣な表情を浮かべていた。
「怖いのは力だけをもった馬鹿だよ。アレスは常識とか良識とかちゃんと持ってるでしょ? 時々無くなるけど」
「無くならないから」
ちゃんとあるから。常識人だから。
「目上の人にはちゃんと対応してるし、なにか言われても自分のことなら怒らないでしょ?」
「まぁ……」
他人が作ったコンテンツに便乗するしかないプロゲーマーってある意味底辺だと思ってるからね。
承認欲求はクソ高い自覚はあるけど、自分が優れた人間だなんて思ったことは無い。
「だから怖くない。心配ならこれからも私に怖がられないように自重して」
「分かりました」
「ホントに? 本当にわかったの? ちゃんと自重できるの?」
ニニャが俺を全く信用していない件。
「今までちゃんとしてきてるじゃん?」
「イグヴァルジの件とか、気が付けばモンスターの群れの真ん中に突撃して囲まれてることとか、いつの間にか詐欺に引っかかりそうになったりとか……この前は組合長の髪に手を突っ込もうとしてたよね?」
「すみませんでした」
もう生意気言わないんで許してください。
ただ組合長の頭にはいつか手を入れてやろうと思います。