夜通し話をした結果大変にいたたまれない気持ちになったりもしたが、日が昇り始めたので気を取り直して朝の支度を開始した。
「バレアレさん、朝です」
ニニャが作り始めた朝食が完成しそうになった頃合いを見て俺はバレアレさん親子に声をかけて起こし、皆で朝食を囲んで出発となる。
昨日頑張ったおかげで予定通りに野営地まで辿り着くことができたので、今日は無理せずゆっくりとしたペースでカルネ村へと進んでいく。
道中ほとんどモンスターに襲われることはなく、予定通り日が落ちる前にカルネ村に到着することが出来た。
「ありがとう。アレスくんたちのおかげで無事に到着出来たよ」
「いえ、むしろ昨日は急かしてしまってすみません」
「いやいや、こっちとしても予定通り着けるならその方がいいから気にしないでくれ。じゃあ私は村長さんに挨拶をしてくるからここで……」
「いえ、俺も護衛の冒険者として一緒に行きますよ?」
「いや……アレスくんの場合は村長さんのところより先に妹に顔見せて上げないと拗ねるんじゃないかな?」
さもありなん。
エンリは拗ねると顔も見せてくれなくなるからなぁ……
ネムもそれを真似するから拗ねられるととても寂しいのだ。
というわけで、俺はニニャとンフィーレアを引き連れて実家へと向かうこととなった。
ンフィーレアはパパーレアに着いて村長さんのところに行けよとも思ったのだが、こちらをチラチラ見ながらソワソワしている姿を見れば強くは言えないので仕方なく同行を許すことにした。
「ただいま!」
「お兄ちゃん!!」
この村……というか農村部には鍵をかける習慣が無いどころか鍵すら存在していないので勢いよく玄関を開きながら帰宅の挨拶をすると、一番に気付いたネムが立ち上がり俺に抱きついてきた。
「ネム! 大きくなった?」
「なった!」
俺が村を離れている間に誕生日を迎えて5歳になったネムを抱き上げながら質問をすると、ネムは満面の笑みを浮かべてそれを肯定した。可愛い。
ちなみに当然だがネムの誕生日には帰ってきて一緒にお祝いしている。
「おかえりお兄ちゃん!」
「エンリもただいま」
流石に11歳になったエンリはもう抱き着いてきてくれないが、頭を撫でてやると嬉しそうに目を細める。可愛い。
「おかえりアレス。ンフィーレアくんもいらっしゃい。って……」
エンリたちに続いて父も姿を見せ、笑顔で俺たちに声をかけてきたのだが、俺の首に掛かっている冒険者プレートを見て動きが止まった。
「ミ、ミスリル!?」
「せやで」
「この前帰ってきた時は
「せやな」
ドヤ顔で腕を組み、足を広げて仁王立ち。そして顎を少しあげて首元のプレートを見せつける。
気持ちいい……
ちなみに前帰ってきたのはつい先週のことで、冒険者活動の休日にニニャが資料室に篭っていたので転移魔法を使って帰ってきていたのだ。
うちのチームはホワイトなので、週休二日制を採用している。
俺は会社勤めは経験してないけど、四十八時間耐久配信をして狩り効率が落ちたことから学んでいるのだ。
「すごいな……まだ村を出て半年も経ってないのに……」
「お兄ちゃんすごい!」
父が驚いているのを見て、エンリとネムもすごいすごいと褒めてくれる。
多分分かってないんだろうなと思いつつもとても誇らしい気分だ。
「実はエ・ランテルに戻ったらオリハルコン級に昇格するんだ」
「我が息子ながらめちゃくちゃだな……さて、君がニニャさんかな?」
「は、はい!」
父は一度呆れたように大きく息を吐き、俺の斜め後ろに立っていたニニャへと声をかけた。
「君もミスリル級……ということはうちの息子に巻き込まれたのかな? すまないね」
「いえ、巻き込まれただなんて……」
おいニニャ、もっと強く否定しろ。
それじゃ完全に俺がニニャを巻き込んだようにしか見えな――あれ? 間違ってないのか?
「うちの息子は時折ハチャメチャな行動をすることがあるから……」
「承知しています……」
なんだろう、なんだか父とニニャが通じあってる気がする。主に俺の悪口で。
「改めてンフィーレアくんもいらっしゃい。お父さんは村長さんのところかな?」
「お久しぶりです。はい、父は村長さんに挨拶に行っています」
「そうか、多分お父さんはそっちに泊まるだろうから、ンフィーレアくんはこのまま家に泊まるといい」
「ありがとうございます」
一通り必要な会話を済ませた後は雑談。
皆は主に俺とニニャ『白銀の閃光』の冒険譚を聞きたがった。
とは言え話せることはほとんど無い。
基本的にモンスターを狩ってレベリングしているのみで、依頼なんて今回受けた護衛依頼が初めてなのだから。
まぁ
「すごい! ニニャさんはその歳で第四位階魔法を使えるんですか!?」
「はい……どうやら才能があったみたいで」
中でも第一位階とは言え魔法が使えるンフィーレアはニニャが第四位階に達したことを聞いて興味津々だ。
その後もしばらく話に花を咲かせていたが、ネムが限界を迎えたので解散となり、体を休めることになった。
寝室に入る前に父にお土産を渡すと――
「買いすぎだろ……」
とドン引きされてしまった。
うん、なんとなく俺も思ってたよ。
だからと言ってお土産を減らすような真似はしない。
次の帰郷を楽しみにしておくんだな!