「じゃあ私が集めた情報から報告するね」
「よろしく」
食事を終え、部屋に戻った俺たちは備え付けのテーブルを挟んで向かい合って座っていた。
ハムスケは馬用の厩舎に居り、宿の人が用意してくれた野菜や木の実を美味しそうに食べていたのでそのまま放置だ。
「まずはアレスが気にしていたお嬢様の情報だけど、名前は『ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ』。第三位階の信仰系
剣も使えることは屋敷では聞いていなかった。
このラキュースって人がスーちゃんならガチでユグドラシル時代とは真逆のビルドを組んでるっぽいね。
ユグドラシルでのスーちゃんは戦士職を一切取らない完全後衛魔力系
うんうんと頷いて続きを促す。
「えっと、ガガーランって
「結構ランクに差があるチームなんだねぇ」
「うん。でもまだ登録して間も無いからそのランクなだけで実力自体はお嬢様もガガーランって戦士もオリハルコン級は堅いって話みたい」
「へぇ……ガガーランって人は知らないけど、14歳でオリハルコン級は堅いってものすごい才能だね」
「アレスだけはそれを言っちゃダメだと思う」
まぁ……うん。なんかごめん。
「それで今は最近見つかったばかりの秘匿されていた十三英雄が作った遺跡に潜ってるらしいよ」
「遺跡に潜ってて伯爵が心配で夜も眠れないって話は聞いてたけど、十三英雄ゆかりの遺跡なんだ」
十三英雄……小さい頃に父や母に寝物語として聞いたことがある。
御伽噺だと思っていたけど、実在してたんだ。
「私の方はこんなものかな? アレスの方はどうだった?」
「お嬢様関連はニニャの方が詳しかったくらいだね。あとは王国の情勢やら国王派の貴族のことは分かったけど、興味ある?」
「あんまり無いかな」
「だよね。一応国王派の貴族はまだまともそうだってことだけ言っとく」
ニニャは貴族の話になると憎しみが表に出てくるからね、あまり話したくはない。
ニニャの姉のように女を攫ったり、重税を課して民を苦しめるのは大抵貴族派だと言うことだけ伝えておけばいいだろう。
もちろん国王派にもそんな奴は居るだろうし、貴族派にもまともな貴族は居ると思うけどそんなことは俺にもニニャにもどうでもいいからな。
「アレスの報告もこれで終わり?」
「そうだね。あとはお願いがひとつ……」
ニニャが早く王都に行きたがっていることは知ってるからとても頼みづらい。
しかしこれはなんとか同意して貰いたい。
「遺跡に行きたいんでしょ? いいよ」
「いいの?」
どうやって頼もうかと少し悩んでいると、ニニャの方が先に口を開いた。
しかも王都に到着する日を遅らせることに同意する内容で少しばかり驚いた。
「早く王都に行きたい気持ちはもちろんあるけど、それは私の都合だから。それに遺跡の調査依頼も出てたからちょうどいいよ」
「遺跡に行くのは俺の都合だよ?」
「私とアレスの都合ならアレスの都合を優先するよ」
ニニャの言葉に返事か出来なかった。
ニニャだってお姉さんに早く会いたいだろうに、どうして俺の都合を優先するなんて言えるのだろう?
「私はね、アレスが居なかったら力なんて付けられなかったと思うんだ。アレスのおかげで姉さんを探す力を得られた、これは間違いないと思ってる」
「俺のおかげもあるかもだけど、それよりニニャが頑張ったからだと思うよ?」
他の冒険者たちと話していて分かったことだけど、普通あんなペースでモンスター狩りはしないらしい。
そんなペースに着いてきたんだから、ニニャはもっと自信を持ってもいいと思うんだ。
「ついこの間まで第一位階魔法がなんとか使えるだけだったのに、ほんの数ヶ月で第五位階だよ? 普通に考えてみれば一生掛かっても到達不可能なレベルだよ」
「それは……まぁ……」
第二位階で一般的、第三位階魔法は大成した
これが常識の世界で10歳にして第五位階は……うん。やり過ぎた。
「せめて第三位階を修めてからじゃないと姉さんを探すことは出来ないと思っていたからね。その為には何年掛かるのかって考えてたのにあっという間だったよ。だから数日遅れることくらいどうってことないよ」
「ごめ……いや、ありがとう」
思わず謝りそうになったが、ここは謝る場面じゃない。
ニニャがそう言ってくれるのならお礼を言って甘える場面だと思い直す。
「じゃあ今日はもう寝ようか。明日早朝に依頼を受注して遺跡に向かえばいいよね?」
「うん。そうしよう」
明日、スーちゃんに会えるかもしれない。
高鳴る期待に目が冴えそうになるが、自分に昏睡魔法を掛けて無理やり眠ることにした。
別に今から行ってもいいんだけど、宿泊費払っちゃったから泊まらないと勿体無いもんね。