「大丈夫ですか?」
ニニャの魔法発動をなんとか回避した俺は、先程とは違い堂々と姿を晒して女性三人組の前へと足を進めた。
「貴方は?」
「失礼。オリハルコン級冒険チーム『白銀の閃光』のリーダー、アレスと言います」
暫定スーちゃんの前で丁寧に自己紹介を行う。
ラキュースがスーちゃんだったとしても今世では初対面なのだから、第一印象を稼ぎに行った形だ。
しかしエンゲージリングの効果は発動していない……装備していないのだろうか?
「これはご丁寧に……私は冒険者チーム『蒼の薔薇』リーダーのラキュースと申します」
ラキュースーちゃん(仮)も丁寧に自己紹介を返してくれる。
ふむ、第一印象はとてもいいよ!
「こちらは戦士のガガーラン、そちらは
「おぅ、よろしくな!」
「ふむお主、先程一度近付いて来ておったの?」
ガガーランと呼ばれた金髪刈り上げゴリマッチョは気さくな笑みを浮かべながら軽く手を挙げて挨拶をしてくれた。
なんとなく女性ということはわかるのだが、思わず「アニキ」と呼びたくなってしまいそうな筋肉だ。
対してリグリットと呼ばれた老婆は俺が一度近付いていたことに気付いていたようで、中々の索敵能力だと言わざるを得ない。
いくら
「バレていましたか」
「あまり隠れる気も無かったんだろう? お主が本気で隠遁しておれば気付かんかったよ」
「どうでしょう」
まぁ、気付かれないだろうね。
見たところこの老婆のレベルは40前半、100レベルの俺が本気で隠れたら見つけることは絶対に出来ないだろう。
ちなみにラキュースとアニキは共にレベル20台前半、アニキはともかくラキュースのレベルが思ったより低かった。
「それでアレスさん、どのような――」
「警戒した方がいいですよ」
レベル測定を終えた俺にラキュースが話しかけてきたが、それを遮ってラキュースの背後を指し示す。
「見つけてるから隠れても無駄だよ。さっさと出てきたら?」
俺がそう声をかけると、ピクっと反応した気配が返ってきたのだが、出ては来ないようだ。
「アレスさん……一体?」
「そことそこの影に隠れてますね。人数は二人、暗殺者かな?」
蒼の薔薇の面々と暗殺者に見えないよう背中に手を回してからアイテムボックスを開き、クナイを二本取り出して隠れている気配へと向けて投げつける。
「ッ!」
「ちっ!」
舌打ちをしながら二つの影が飛び出してくる。
顔は同じ、体型も同じ、身に付けているものも同じ……いや、ところどころカラーリングが違うな。
「双子か?」
「残念」
「私たちは」
「「双子じゃない!」」
そう言って二人はクナイを構えてこちらへと突撃し始めた。
あの足運びにクナイ……コイツら忍者か?
忍者なら60レベルを超えているはず、多少の警戒は必要かと警戒して腰を落とすが、いつまで経っても相手から攻撃が飛んでこない。
「ありゃ?」
あまりにも遅いので、再び腰に手を回してからアイテムボックスを開いて接近戦用の忍刀を取り出し構える。
敵の忍者二人は未だに間合いの外に居た。
遅くね?
最低でもレベル60を超えないと忍者の
そしてレベル60を超えているのなら……俺が忍刀を取り出す前に目の前まで来ていないとおかしいのだ。
「シッ!」
赤い方の忍者が走りながらクナイを投擲してくる。
この攻撃も……遅すぎる。
「ほいほいっと」
クナイでの攻撃を打ち払うために忍刀を取り出したのだが、この速度なら撃ち落とすこともない。
左手の人差し指と中指で飛んでくるクナイをはさみ取り、そのまま手首のスナップだけで投げ返す。
「グッ……!?」
「な……疾い!」
違います。お前らが遅いだけです。
さっき触った感じ、投げられたクナイにはおそらく麻痺毒が塗られていた。
そのクナイを投げ返され太ももに突き刺さった赤い方は麻痺に対して完全耐性を有していない限りレジストするにも一瞬動きが固まるはず。
その一瞬の隙があれば青い方を制圧するには十分だ。
「
一歩で青い方との間合いを詰め、頭を掴んで
どう見てもレベル60を下回る相手に普通に攻撃すれば一撃死する可能性しかないのでダメージを与えず
「クソっ……」
「残念、俺からは逃げられない」
麻痺をレジストしたのか、赤い方が逃げ出そうとしたので、青い方と同じように《激震掌》を使い気絶させてから二人が装備しているアイテムの検分を行う。
「何してるの?」
「行動阻害やら精神攻撃やらに対する耐性を付与するアイテムを装備してたから剥ぎ取ってる」
二人の装備していたマジックアイテム……指輪とスカーフにそれぞれ行動阻害耐性(小)や精神攻撃耐性(小)が付与されていることを確認したので、それらを剥ぎ取ってから改めて二人を拘束する。
これで逃げられないだろう。
「じゃあ一人ずつ起こしますんで、一応警戒はしておいてくださいね」
「え、ええ……」
「すげえな、ほとんど見えなかった……」
ラキュースとガガーランはまさに絶句と言った様子で頷いているが、リグリットは値踏みするような目で俺を見ている。とてもやりづらい。
「ほいっと」
赤い方の体を起こし、背中に手を当てて気を送り、強制的に意識を覚醒させる。
「ぐっ……これは?」
「お前らは負けた上で拘束されました。キリキリ吐きなさい」
全身を縄でぐるぐる巻きにされている赤忍者は殺意剥き出しの目で俺を睨みつけてきたが、一瞬後には目を見開いた。
「……いい」
「は?」
なんて?
「少年、尋問ならベッドの上でするべき。そうすれば全部吐く」
「へ?」
「ベッドの上で少年が私にあんな拷問やこんな拷問をすればいい。そんなことをされたら私は素直になってしまうかもしれない」
なんだこいつ……こわ……
「む、よく見たら少し育っている。でも育ちかけきる直前のショタに無理矢理
「なしよりのなしだこのド変態め」
薄らと頬を赤らめクネクネと体をくねらせているが、全身ぐるぐる巻きなので尺取虫にしか見えない。
「《
どうしたものかと悩んでいると、無表情のまま俺の横に歩み出てきたニニャが赤忍者に強化した魔法を行使。
赤忍者の瞳から意志の光が消失した。
「これでいいでしょ?」
「あ、はい。どうもありがとう」
ニニャのおかげで、色々聞き出すことに成功した。