赤忍者から聞き出した情報によると、赤忍者はティナ、青忍者はティアという名前で、彼女らは『イジャニーヤ』という暗殺組織に所属する暗殺者だと言う。
今回の任務はラキュースたち蒼の薔薇の暗殺と、十三英雄が残したお宝の奪取が目的だったそうだ。
表向き依頼主は貴族派の末端貴族らしいのだが、イジャニーヤ調べによると八本指が関わっているらしい。
暗殺組織に依頼する時点で表も裏もないと思ったのは俺だけでは無いと思う。
一通り情報を聞き出したので、再び赤忍者を《激震掌》で眠らせて青忍者を起こす。
赤忍者とは違って俺ではなくニニャやラキュースを見てハアハアしていたが、赤忍者と同じく《
「そういうことらしいですけど、どうします?」
「そうね……ちょっと話してみてもいいかしら?」
「いいですよ。でもその前に少しだけいいですか?」
ラキュースを誘って皆から少し離れた位置へと移動する。
ニニャに目で合図を送ると、ちゃんと受け取ってくれたようで《
遺跡の中で何を悠長なことをと思わなくもないが、この周辺にモンスターの気配は無いのだから少しくらいなら大丈夫だろう。
「なんですか?」
「すみません。少し聞きたいことがありまして……」
左手薬指に嵌めてあったエンゲージリングを指から抜いて掌に乗せる。
いろい宝石の色は青のまま、この時点で落胆しそうになるが、なんとか堪えて口を動かす。
「この指輪に見覚えはありませんか? それと……『スーちゃん』や『神崎澄香』、『ユグドラシル』などの言葉に聞き覚えは?」
ラキュースはしばらく俺の手にある指輪を見つめた後、言葉を選ぶように口を開いた。
「……素晴らしい指輪だとは思いますが、見た記憶はありません。また、それらの言葉にも聞き覚えはありませんね」
「そう……ですか……」
やはり違ったか……
指輪の効果が発動しなかった時点で覚悟はしていたが、いざ違うとわかると溜息が漏れる。
「お力になれなかったようで申し訳ありません」
「いえ……ラキュースさんが悪い訳では無いので……」
何故か頭を下げて謝罪しようとするラキュースを手で制す。
なんで頭下げようとするの? 貴女貴族の娘でしょ? 俺みたいな農民の子に頭下げちゃまずいでしょうよ。
別に農民をバカにしたりはしてないよ。封建社会的にまずいよねって話。
「もしその指輪を見かけたり、先程の言葉を聞いたなら必ずアレスさんにお伝えしますね」
「そうしてもらえると……ありがとうございます」
聞きたいことも聞き終えたので、皆のところに戻るとラキュースは今度は赤青忍者へと近寄り何かを話し始めた。
「アレス……」
「違ったよ」
それを少し離れた位置から眺めていると、ガガーランやリグリットと話をしていたニニャが不安そうな顔でこちらへとやって来たので、簡潔に結果を報告する。
「そっか……」
「残念だけど、また探すよ」
「うん。私も出来る限り協力するから」
そんなことをヒソヒソ話していると、ラキュースの方も忍者との話が終わったようで、立ち上がり仲間のもとへと歩いて行った。
「アレス、どうなると思う?」
「殺害or置き去り。どっちだと思う?」
「置き去り」
「おけ。じゃあ俺は殺害ね。銀貨3枚な」
「賭けるの? 別にいいけど額しょぼくない? しかも私たちって基本財布一緒だよ?」
銀貨3枚がしょぼいなんて金銭感覚おかしくね?
つい数ヶ月前まで安宿の宿泊費すらヒーヒー言ってたんだぞ?
まぁユグドラシル金貨なら百億枚単位で持ってるけどさ。
ギルド解散の時に拠点維持費用の金貨全部貰ったけど使い道あまり無かったから使わなかったんだよね。
「あ、動いたよ」
「三人全員で行ったね。これは袋叩き殺害コースかな? 銀貨3枚ゴチっす」
「いや待って、縄解いてるよ」
「なんで!?」
三人はぐるぐる巻き忍者と一言二言会話をして、忍者を拘束していた縄を解き始めた。
せっかく捕まえたのに何してるの?
「こっち来るよ」
「何しに来るんだろ? もう一回とっ捕まえた方がいいのかな?」
「それはしなくていいと思うよ」
ですよね。俺もそう思う。
「お待たせしました」
「いえいえ……それで?」
ラキュースたちは五人でこちらへとやって来た。
適当な距離を開けて立ち止まり、ラキュースが皆を代表して一歩前に進み出た。
「はい。ティアとティナは私たちのチームに迎え入れることになりました。ちょうど斥候を探していたのでちょうど良かったです」
「マジすか」
その忍者、君たちの命と財宝を狙って襲ってきた襲撃者だよ?
仲間になったフリをしておいて後から隙を見てプスッと殺りに来る可能性が非常に高いと思うんだけど……
いくら斥候が欲しいからってその選択は正直無いと思う。
「ほら、改めて自己紹介して」
ラキュースが振り返り、二人に自己紹介をするよう声を掛ける。
「ティア。女の子が好き。そっちの娘は超好み。お持ち帰りしたい」
「ティナ。ショタが好き。そっちの男の子結構好み。お持ち帰りされたい」
この自己紹介はふざけているのだろうか? ぶん殴ってもいいのかな?
「ハハハ! おもしれぇだろ? ちなみに俺は童貞が好きだ。アレス、ここの探索が終わったら俺と二人で打ち上げしようぜ?」
「どどど童貞ちゃうわ!」
あくまで「前世では」となるが、俺は童貞ではない。
アレス・エモットの体は新品童貞で間違いは無いのだが、精神的経験者だから童貞じゃない。
この体の童貞はスーちゃんに捧げるんだ!
「みんな何言ってるのよ!!」
「カッカッカ!」
ラキュースが顔を真っ赤にしながらツッコミを入れ、リグリットが横で腹を抱えて大笑いしている。
チームとしての雰囲気はめちゃくちゃ良さそうなんだけど、この忍者信用ならないんだよなぁ……
釘刺しとくか?
「あー……ラキュースさんたちが決めたのなら文句は言えないんですけど、一つだけいいですか?」
「なんでしょう?」
基本的に俺は他人がどうなろうと知ったこっちゃない。
例えばクラルグラの誰かが死んだり、チームが全滅したとして「へぇ」の一言で済む。
漆黒の剣なら仇討ちくらいはするかな? 天狼なら世話になったぶん悲しむし苛烈に報復するだろう。
他のチームにいたっては訃報を聞いた時こそ表面上悲しんだり残念そうな雰囲気は出すだろうが、数分後には名前やチーム名なんて忘却の彼方だろう。
俺は俺の大切な人が平穏無事ならそれでいいのだ。
それらに対して蒼の薔薇に何かあった場合、俺は不快に感じるだろう。
一度はスーちゃんかもしれないと思った女性になにかあると考えると……なんかイラッとする。
だからその「なにか」が起こらないようコイツらには一言言っておこう。
「赤いのと青いの、お前らの顔と名前、組織名までしっかり覚えた。ラキュースさんたちになにかあったら……わかるね?」
殺意は込めない。必要無い。
ラキュースたちになにかあったとしても俺はコイツらを殺さない。
死んだ方が遥かにマシって目に合わせるだけだ。
「……逃げても無理そう。分かった」
「隠れたところで無理そう。了解した」
こうして、蒼の薔薇のメンバーが三人から五人に増えたのだった。