「少し、話をさせて頂いてもよろしいだろうか?」
ラキュースが魔剣キリネイラムをうっとりとした表情で見つめているのを眺めていると、横からリグリットが声をかけてきた。
そういえばボス部屋に入る前に話がしたいとか言ってたね。
「なんですか?」
「会ってもらいたい者がおります。この後時間は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃないです」
この後は王都に行ってニニャのお姉さんを探さなければならないのだ。
人に会っている時間なんて無い。
「そこをなんとか……」
「無理ですね。ここに来たのも俺のわがままですから。本当なら一刻も早く王都に行かなければならないんですよ」
「それは……なんのためかお聞きしても?」
ニニャの方を見ると、頷いたので軽く説明をすることにする。
「ニニャの姉が八本指に売られた可能性が高いので、救出のために」
「なんと……」
「八本指か……」
話を聞いていたリグリットとガガーランは沈痛な面持ちでニニャへと顔を向ける。
赤青忍者は一瞬だけ気の毒そうな顔をしたが、それだけだ。
「だから人と会ってる余裕は無いっす。その人が王都に居るなら別ですけど」
「そう……ですか。王都であれば会って頂けると?」
「王都でなら捜索の合間に会うことくらいは出来ると思いますよ。優先はしませんけど」
捜索に影響の出ない時間に少しだけならいいよ。
「わかりました。彼奴にはそうお伝えしておきます」
「え、来るの?」
あの話ぶりでは王都に居るわけでは無いと思っていたのだが、まさか俺に会うためだけに来るのだろうか?
まぁ、わざわざ出向いて来てくれるのであるなら相手をするのも吝かではない。
来る者拒まず去るもの追わずだ。
「じゃあそろそろ……」
「アレスさん、八本指と戦うのですか?」
帰ろうと言おうとしたのだが、いつの間にかトリップ状態から復帰して話を聞いていたらしいラキュースの声がかかった。
「素直にニニャのお姉さんを返してくれるなら戦わないかもですけど、間違いなく戦うことになるでしょうね」
素直に返せば穏便に裏からこっそり潰す。
返さなければ正面から叩き潰す。
ニニャの姉に手を出した時点で八本指の未来は決まっているのだ。
「そうですか……アレスさん、お願いがあります」
「なんですか?」
「
「
急にどうしたのだろうか。
「はい。私たちも八本指と戦います!」
ラキュースがいきなり宣言するが、チーム内での同意はちゃんと取った方がいいと思う。
ガガーランは獰猛な笑みを浮かべ乗り気のようだが、リグリットは難しい顔をしている。
赤青忍者も少し不満そうな表情を浮かべているが、早速裏切るのかな?
「それはいいけど、仲間との合意は必要だよ。それに、ラキュースさんはアインドラ伯爵家のご令嬢でしょう? リ・アインドルを離れて大丈夫なんですか?」
「八本指と戦うということであれば是非もありません。八本指はここアインドラ伯爵領にもちょっかいをかけて来ていますし、何より罪なき人々を脅かす八本指を許してはおけません!」
ラキュースがあまりにも信念の籠った目て見つめてくるので、俺もなんと返していいかわからなくなる。
「俺は賛成だぜ! アイツらは気に食わねぇ!」
ガガーランは拳同士を打ち付けながら賛成の意を表明する。
その姿と笑みはとても頼りになりそうだ。今度時間があったら模擬戦してもらおうかな?
「ふむ……アレス殿がいれば問題無かろうが、逆に儂らが必要かどうかが問題じゃな」
リグリットも八本指と戦うこと自体否定するつもりは無いようだが、参戦する意味があるのかと言うところで悩んでいるようだ。
「元依頼人と戦えなんてリーダーは鬼。この鬼リーダーめ」
「だけど八本指は嫌いだから戦うこと自体は構わない。了解した鬼ボス」
「鬼って……」
ラキュースは不服そうだが、まぁ赤青忍者視点から見ればそうなるのも仕方ないと思う。
裏切るつもりがないならそれでいいよ。
「まぁ人手が増えるのはいいことだし……いいよね?」
「うん。私に異存は無いよ」
ニニャも反対では無いようなので、ありがたく蒼の薔薇からの
「じゃあそういうことで。よろしくラキュースさん」
「提案を受け入れて頂き感謝します。こちらこそよろしくお願いします」
ラキュースと握手を交わし、俺たち『白銀の閃光』とラキュースたち『蒼の薔薇』の
「じゃあ帰りましょうか。俺とニニャは転移魔法で戻りますけど、一緒に転移します?」
せっかく
「転移……儂も《
リグリットがニニャの方をちらりと見ながら口を開くが、残念ながら転移魔法を使うのはニニャじゃなくて俺である。
ニニャもリグリットと同じで第五位階の《
「使うのはニニャじゃなくて俺ですよ。第五位階の《
「第七位階!?」
蒼の薔薇の全員が驚愕に目を見開き、固まる中ニニャが呆れたように口を開く。
「蒼の薔薇の皆さん、彼……アレスはいつもこんな感じですので……
「いつも?」
「ええ。突拍子も無いことを言って周りを驚かせるのはいつものことです」
「そう……わかったわ、早く慣れるよう努力します」
ニニャとラキュースが分かりあったかのような雰囲気を出しながら頷きあっているが……それ、絶対褒めてないよね?