オーバーロード〜約束の指輪〜   作:愛飢夫

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生まれながらの異能

「ど、どうかな……?」

「すごいよ! ンフィーくんかっこいい!」

「本当にすごいね。僕にも使えるかな?」

 

 ユグドラシルのことは一旦脇に置き、今はンフィーレアくんからわかることを聞き出そう。

 

 日本には当然魔法なんて存在しなかったし、ユグドラシルではバリバリの前衛職だったので使えるのなら使ってみたいのだ。

 

「えーと、お父さんが言うにはまず媒体と契約して、それから媒体を通して世界の意志に接続するんだって……」

「媒体? 世界の意志?」

 

 なんぞそれ?

 

 ユグドラシルではモンスターを倒して経験値を貯めてステータス画面から取得したい職業(クラス)や種族に割り振ってレベルアップ。

 俺は戦士職だったからあまり自信は無いけど、それが魔法詠唱者(マジックキャスター)ならレベルアップ時に習得出来る魔法を選択するシステムだったはず……

 

 そこに世界の意志なんてフレーバーテキストは無かったし、ユグドラシルの魔法詠唱者(マジックキャスター)は一切の装備無しでも魔法は行使出来る。

 だから『媒体』なんてものも存在しなかった。

 

 つまり……ここはユグドラシルと似ているだけでユグドラシルとは無関係?

 

 おっといかんいかん、またユグドラシルに引っ張られてしまっていた。

 

 まぁ……ユグドラシルで魔法を使うためにはまずは魔術師(ウィザード)職業(クラス)を取らないとだし、俺には関係ない――

 

魔術師(ウィザード)職業(クラス)を取得しますか? Yes/No】

 

「……は?」

 

 そんなことを考えていると、突然目の前に半透明な板が出現し、そこにはそんな選択肢が表示されていた。

 

 驚き、固まっている俺の下に心配そうな顔をしたエンリとンフィーレアくんが駆け寄ってきた。

 

「おにいちゃんどうしたの?」

「アレスくんなにかあったの?」

 

 二人の言葉にハッとして振り返る。

 二人の目は心配そうに俺の顔を見つめていた。

 

 二人の目には、この板が見えていないのだろうか?

 

「あ……いや、これ……見える?」

 

 選択肢には触れないよう気を付けて目の前の板を指差すが、やはり二人には見えないようで揃って首を傾げている。

 

「なにかあるの?」

「いや……」

 

 二人に見えないのなら、これは俺にしか見えていないだろう。

 

「アレスくん、どうかしたの?」

 

 ンフィーレアくんも心配そうに尋ねてくるが、今はちょっとこの子達の相手をする余裕が俺には無い。

 

「ごめん! ちょっとトイレ行ってくる!」

「え?」

「あ、うん。行ってらっしゃい」

 

 とにかく一人になって考えたかった俺は適当なことを言い残しその場を駆け出した。

 

 そのまま自宅へと戻り、トイレに駆け込む。

 途中、何事かと心配した母にどうしたのか尋ねられたが、「お腹痛い」の一言で納得させてようやく落ち着くことが出来た。

 

 その間もずっと選択肢は俺の目の前に表示され続けている。一体どうすれば……

 

「ステータス画面が見れるわけでも無いのに急にそんなこと言われても……」

 

 思わず独り言が漏れるが、それも途中で言葉を失った。

 

「ステータス」と呟いた直後、選択肢表示の隣に同じような板が出現。そこにユグドラシルで見慣れたステータスが表示されていたからだ。

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 アレス・エモット Lv0

 種族 人間種

 年齢 8歳

 

 HP2

 MP0

 

 物理攻撃2

 物理防御1

 素早さ3

 魔法攻撃0

 魔法防御0

 総合耐性0

 特殊0

 

 所持EXP5,500,000P

 

 次へ→

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

「え……何これ弱い……」

 

 弱い。つい5分前にユグドラシルを始めたルーキーでも驚く程に弱すぎる。

 HP2ってなんだよ、ゴブリンパンチにも耐えられないぞ?

 

「まぁ子供だから仕方ないのか? でもレベル0ってどういうことだよ……って経験値多くね?」

 

 経験値550万と言えば、レベル100のカンストプレーヤーがさらに経験値を限界まで所持した場合の数値だったはず……

 つまりレベル101相当の経験値を所持していることになる。

 

「これって……俺は人間種だから種族レベルは取れないけど、職業(クラス)リストがあればすぐにでもカンスト出来るんじゃ……」

 

 ゴクリと生唾を飲み込み、ステータス画面の【次へ】に触れる。

 すると予想通り画面が切り替わり、そこに見慣れないモノを発見した。

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 生まれながらの異能(タレント)

 

 ステータスチェック

 

 習得済魔法

 なし

 

 習得済特殊技術(スキル)

 なし

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

「生まれながらの……異能?」

 

 聞いた事のない能力だ。

 このステータス画面はユグドラシルその物であるが、これだけは理解が追いつかない。

 

 いや、全てにおいて追いついていないのだけども……

 

「多分《ステータス》の言葉に反応してステータス画面が出たんだよな……なら……《職業(クラス)リスト》!」

 

 ステータス画面が出るならリストも出るだろ――

 

 そんな安易な考えで小さく声に出してみると、予想通りにユグドラシルの職業(クラス)リストが表示された。

 

「……嘘やろ?」

 

 予想通りに表示された。しかし表示された内容は予想とは全く違っていた。

 

 レベルが0だし、初めて開くのだから下位職業(クラス)が表示されると思っていたのだが……

 

「なんでリストの一番上にワールドチャンピオンが表示されてるんだよ……しかも白文字ってことは選択出来るのか?」

 

 ユグドラシルでは選択可能なものは白文字、不可のものは灰文字で表示されていた。

 白文字表示ということは今の段階でワールドチャンピオンの職業(クラス)に就けるのだろうか?

 

 就けるとして、その場合下位職業(クラス)で習得する特殊技術(スキル)や耐性、ステータス値などはどうなるのだろうか?

 分からないことだらけである。

 

「それなら安易に選択しない方がいいのか? それともとりあえず1レベルだけ取ってみようか……」

 

 悩みながらリストを見ていると、とんでもない職業(クラス)を発見してしまった。

 

「エクリプスって……これ死の支配者(オーバーロード)の種族レベル5にしないと取れないやつじゃん……白文字ってことは人間種でもエクリプス取れるのか?」

 

 なにこれバグってる?

 

 とりあえず元の選択肢である魔術師(ウィザード)はNoを選択、すると予想通り選択肢表示は消えてくれた。

 

「しかしこれ……どうしよう……」

 

 その後しばらく悩んでいたが、母にトイレの扉を叩かれたので諦めてエンリたちの所に戻ることにした。

 

 ステータス画面に関しては、もう一度「ステータス」と呟くことで消えてくれたので助かった。

 

 これは……色々試してみるべきか?

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