翌朝、ツアレニーニャの調子はどうかと思いニニャの部屋を訪れたのだが、当のツアレニーニャ本人に物凄く怯えられてまい、しょんぼりしながら一階へと降りて一人寂しく朝食を摂っていると、女性が宿に入ってきて俺の座っているテーブルの横に立った。
「おはようございます。アレスさん」
「おはようラキュースさん。どうしたの?」
「実は……」
ちょうど食事を終えたタイミングだったので話を聞いてみると、なんと昨日俺たちと別れたあとすぐに王宮へと赴き、少しだけ王女様とお話してきたらしい。
その時に俺がラキュースに渡していた『こんな証拠がありますよリスト』も手渡したそうだ。
「『これだけ証拠があるなら問題ない』と言っていたから、出来ればアレスさんにも一度ラナーと会ってもらいたいのだけど……」
「嫌です」
そんな緊張しそうなところになんで行かないといけないんだよ。
こちとら前世も今世も平民やぞ!
お偉いさんに会う時の心構えもマナーも何も知らないよ!
「それに、今日は待ち合わせがあるから」
昨日支配した金髪ゴリラから証拠を受け取らなければならないのだ。
《
効果が切れる前に受け取らないと正気を取り戻して隠滅されてしまう。
それに、《
そのことを盗聴防止用
「ニニャさんの言っていた通り、慣れないと大変そうね……慣れること自体が大変そうだけど」
「なんて?」
「なんでもないわ。それより、誰を支配したの?」
ラキュースは小声でなにやら呟くが、上手く聞き取れなかったので聞き返したが「なんでもない」と話を逸らされたので気にしないようにして質問に答える。
「知らない。金髪を短く切りそろえたゴリラだよ」
「ゴリラって……それじゃ分からないわよ」
分からないよね。
名前を聞いておけばよかったのかもしれないが、聞いたとしても一晩開けたら覚えていなかっただろうから一緒だろう。
「証拠の受け渡し場所の指示も出さないといけないから聞いてみる」
《
「おれおれ、俺だけど」
『ご主人様、連絡をお待ちしておりました』
ゴリラにご主人様と呼ばれてしまいゲンナリする。
スーちゃん以外にそう呼ばれても何も嬉しくないし、萌えない。
「キモイ。ところでお前名前は? どこにいるの?」
『私の名前はバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフにございます。現在地は王宮の自室です』
「うん。ちょっと一回切るね」
なんだかすごく聞き覚えと言うか見覚えのある名前が聞こえたような気がするんだけど……流石に別人だよね?
別人であってほしい。別人であれ。
「あの……」
「ラキュースさん」
「はい?」
俺が《
ラキュースなら貴族だから知ってるよね……違うと言って欲しい。
「俺が昨日支配したゴリラなんだけどね……?」
「ええ」
「『バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ』って名乗ったんだけど……知ってる人?」
おそるおそるラキュースの顔を見ると、目を見開き固まっていた。
うん、その反応を見たらわかる。
俺、やらかしちゃってますね……
これ、流石に国家反逆罪で打首っすかね?
「あの……ラキュースさん?」
「いえ……あの……」
ラキュースは一歩身を引き、目を逸らす。
わかるよ。その気持ちは痛いほどわかる。
流石に王族に《
「あー……そういえば証拠受け取りに行かないといけないんだよなー、場所は王宮なんだよなー」
チラリとラキュースの顔に視線をやると、肩をビクッと揺らして顔を背ける。
「……王宮なんだよなー。王宮に入るにはなんらかのツテが必要だよなー……そういえば……」
「あの……ラナーには私の方からアレスさんは都合が悪いと伝えておくから……」
「そういえば王族から招待受けてたよなー、断るなんて不敬なこと出来ないよなー」
ニガサナイヨ?
こうして俺は穏便に王城へと足を踏み入れる方法を手に入れた。
なんだかラキュースが泣きそうな顔をしているのだけど……そんなに黄金と讃えられる第三王女様に会えるのが嬉しいのかな?