ラナーの私室に戻ってくると、ラナーとラキュースはテーブルの上に地図を広げてなにやら話し合っていた。
「ただいま戻りました」
帰還を告げ、地図へと目をやると、そこには八つの印が打たれていた。
「おかえりなさいませ」
「おかえりなさい。今ちょうどラナーが八本指の拠点を特定したところよ」
「え?」
「バルブロお兄様は八本指と深い付き合いをしていたようで……色々な情報をご存知でしたわ」
ラナーはにっこりと微笑むが、相対して座っているラキュースは苦笑を浮かべている。
「ラナー、それが出来るのは貴女だけよ」
「そうかしら? 王宮で流れている噂、アレス様から頂いた証拠リスト、そしてお兄様の自白書類……これらを併せて考えればこれくらい簡単よ?」
「少なくとも私には不可能ね」
ラキュースは呆れたように笑っているが、全く同感である。
分かる気がこれっぽっちもしない。
「まぁそれは置いておいて……戦力が足りないわね」
「そうね……せめてこの前の御前試合で優勝したガゼフ・ストロノーフ様と準優勝のブレイン・アングラウス様が居てくだされば……」
「ストロノーフ戦士長は戦争、アングラウスさんは行方不明だったかしら?」
話に入れなかったので大人しく聞いていると、どうやら数ヶ月前に王国最強の戦士を決めるために大会が開かれたらしい。
その大会で優勝したガゼフ・ストロノーフという人が国王直属の王国戦士長として召し抱えられたそうだ。
その戦士長と決勝で互角の戦いを繰り広げたブレイン・アングラウスにも多くの貴族から士官の話があったようなのだが、全て断って姿を消してしまったらしい。
ちなみに蒼の薔薇のアニキことガガーランも出場していたようで、準決勝でガゼフ・ストロノーフに当たり惜しくも敗退してしまったそうだ。
ふむ、ガガーランニキより強いのか、一度会ってみたいな……というか出場したかった。
「どうしましょう……」
「二人ほどならアテはありますが……」
カルネ村及びトブの大森林警備隊から分身を二体持ってくればいい。
一応レベル40前後とリグリットに匹敵するレベルなので少しは役には立つだろう。
「その方はどのような方なのでしょうか?」
「私の分身です」
「ぶん……しん?」
ラナーは意味がわからないといった様子で眉根を寄せている。
まぁ忍者の知識が無いと理解出来ないよね。
「うちのティアとティナも《影分身の術》を使って増えるのだけど、同じようなものかしら?」
「多分似たようなものです」
「わかりませんがわかりました。では……」
二人は理解することを放棄したのか、「そういうもの」としてスルーすることに決めたようだ。
「それでもまだ心許ないですね……」
「そうね、アレスさんやハムスケさんなら単体で部門ひとつくらい落とせそうだけど……」
ふむ、八本指はその名の通り八つの部門に分かれている。
俺、ハムスケ、分身A、B、蒼の薔薇……
同時に襲撃出来るのは五ヶ所となる。
「あの……」
「なんでしょう?」
ふと思いついたことがあるので、手を挙げて発言の許可を求める。
ラキュースはかなり、ラナーは若干引きつった顔をして俺の発言を聞く体勢になった。
「警備部門の六腕って確か個人個人がアダマンタイト級に匹敵するんでしたよね?」
「ええ……多分私たち蒼の薔薇でも二人までなら対処出来るでしょうけど、それ以上になると厳しいわね」
アダマンタイト級を二人相手にして勝てるのなら十分じゃないかな?
「そうなんですね。じゃあ味方にしましょう」
「味方……?」
「なるほど……そういうことですか」
ラキュースはピンと来ていないようだが、ラナーは俺の言いたいことを理解してくれたようだ。
「《
「そうです。支配して他部門にぶつけてやればよろしいかと」
人手が足りないならある所から持ってくればいい。
それが敵方なら敵の戦力も削れて一石二鳥でしょう?
同じ組織に所属している強者から襲われるとなると、精神的ダメージも期待できる。
一石二鳥どころか三鳥かもしれない。
問題は大人しく支配されてくれるかだけど、アダマンタイト級なんて精々レベル30~40程度、数発ぶん殴ってから装備品を剥ぎ取り魔法を使えば問題なく掛かるだろう。
掛からなければ掛かりたくなるまで殴るだけだ。
「私では絶対に思い付かない作戦ですわね」
「そうね。ある意味ラナーとは対極の究極の脳筋戦法だもの」
めちゃくちゃ頭がいいって評判のラナーですら思い付かないような作戦を思い付いたってことは、俺の頭脳も捨てたものでは無い。
この案は無事採用され、最初に俺が六腕を襲撃、支配完了次第《
助けた娼婦に関しては、一時的に王都のアインドラ屋敷にて療養、その後はラキュースやラナーたちのツテで社会復帰を目指すという方針に決まった。
そういえば以前カルネ村に帰った時に村長が「嫁不足」と言っていたので、もしも希望者が居ればカルネ村に移住してもらおう。
「あとは決行日だけど……」
「それなのですが……」
会議が始まって数時間、まだ終わりは見えて来ない。
なんかもう面倒くさくなってきたし、
はやくスーちゃんに会いたい。