オーバーロード〜約束の指輪〜   作:愛飢夫

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実力差

 蒼の薔薇対吸血鬼(ヴァンパイア)の戦いはあっさりと決着が着いてしまった。

 

 吸血鬼(ヴァンパイア)は魔法詠唱者(マジックキャスター)だったようで、第四、第五位階の魔法を放っていたが、それらをラキュースとリグリットがレジスト、赤青忍者が翻弄し、その隙を突いてアニキの一撃、トドメにラキュースが必殺の一撃を放って勝負は決まった。

 

 その必殺技である《超技・暗黒刃超弩級衝撃波(ダークブレード・メガインパクト)》は大変に俺の心を擽る技であった。

 ナイスセンス! 俺も使いたい!

 俺も《次元断切(ワールドブレイク)》を披露するからもう一度見せて欲しい!

 

 それはあとから交渉するとして、吸血鬼(ヴァンパイア)って前衛寄りのステータスに成長する種族だったと思うのだけど、魔法詠唱者(マジックキャスター)になってるのはなにか意味があるのかな?

 殴っても強い殴り魔術師(マジシャン)でも目指したのかな?

 アレは序盤では強いけど、中盤以降使い物にならなくなるよ?

 

「うう……五人がかりは卑怯だ……」

「お主がそれでいいと言ったんじゃろうが。そんなんだから泣き虫なんじゃ」

「泣き虫じゃない!」

「まぁまぁリグリット、そのくらいにして……」

 

 仲がいいのかリグリットと吸血鬼(ヴァンパイア)が微笑ましいやり取りをしていたのでそれを眺めてホッコリしていると、そこにラキュースが割り込んで話を終わらせた。

 

「改めまして……私はラキュースよ。貴女は?」

「……イビルアイだ。訳あって本名は伏せさせてもらう」

 

 イビルアイ……邪眼?

 確か吸血鬼(ヴァンパイア)は種族スキルで『魅了の魔眼』や『支配の魔眼』を習得できたはずなのでそこから引っ張ってきているのだろう。

 こちらもいいセンスをしている。

 

「イビルアイ、私たちの力はどうだったかしら?」

「人間としては強いんじゃないか? まぁ個々人として見れば私の方が強いがな!」

「そう……それで、仲間になってくれるの?」

 

 おお! これが噂のメスガキムーブか!

『ユグドラシル紳士の集い』で仲良くなった友達のバードマンが言ってたやつだ!

 

 こういう強気なメスガキを屈服させて素直にさせるシチュがたまらないと言っていたけど、なるほどこういうことか!

 

 ……その話で盛り上がっている時にスーちゃんとバードマンの姉のピンクのスライムが乱入してきて二人して追いかけられたんだよな……懐かしい。

 アイツ逃げきれたんだっけ? 俺はダメだった。何せログアウトしたらそこにスーちゃんがいるもので。

 

「よろしくイビルアイ」

「ああ、よろしく頼む」

 

 懐かしい思い出に浸っているうちに話は進んでいたようで、無事吸血鬼(ヴァンパイア)のイビルアイは蒼の薔薇に加入する事が決まったようだ。

 

 早速青忍者がイビルアイの尻を触ろうと忍び寄っていたが、無事イビルアイに殴り飛ばされてどこかへ飛んで行った。

 

「アレス、お前は蒼の薔薇のメンバーでは無いのだよな?」

 

 このまま戻ってこなくていいのになと思いながら青忍者が飛んで行った方向を眺めていると、いつの間にやら傍らに来ていたイビルアイが俺を見上げながら声をかけてきた。

 

「うん。俺は別チームだよ。今回は……足がわりに連れてこられた感じ」

「そ……そうなのか。それで、アレスは強いのか?」

「気になる? ならお相手しようか?」

 

 正直簡単に完封できるのだが、それなりに強者っぽいのでやるなら歓迎しよう。

《上位魔法無効化III》は解除して相手してやるよ!

 むしろやらせろ!

 

「いや、そのつもりは無いんだ。リグリットから私たち六人を相手にしても無傷で勝てると聞いたのだが、それが本当かどうか知りたいんだ」

 

 やらないのか……期待させておいてそれは酷い。

 

「残念……質問の答えは『YES』だよ」

 

 蒼の薔薇のレベル帯は20~40前後、イビルアイは先程の戦闘を見た感じ50は超えていそうだけど、その程度じゃ俺に傷一つ付けることは叶わない。

 

《上位物理無効化III》と《上位魔法無効化III》を俺が持っている時点でお疲れ様である。

 

 唯一ラキュースの持つ魔剣キリネイラムだけはデータ量的に俺にダメージを与えられる可能性があるが、避ければダメージは無いのだ。

 

 ちなみにユグドラシルでは《上位物理無効化》より《上位物理軽減》の方が一般的で、効果も高いのだが俺が《上位物理無効化》を選んだのは防御力が紙過ぎて高レベルの相手からの攻撃を受けた場合軽減しても一撃死もしくは瀕死になる。なので軽減の意味が無いからだ。

 魔法に関してはワールドチャンピオンの鎧を手に入れたことで魔法防御力が格段に上昇してしまったため、《上位魔法軽減》にすれば良かったと後悔している。

 

 相手からの物理攻撃はパリィするか回避しないと死ぬ。この緊張感がたまらない。

 

 それもこれも攻撃力特化のために『蛮族戦士(バーバリアン)』の職業(クラス)を取ってしまったがゆえでもある。

『蛮族戦士(バーバリアン)』は中位の職業(クラス)の中では圧倒的な攻撃力の高さを誇るのだが、物理防御力を上げると攻撃力が下がってしまう。

 

 なのでユグドラシル時代の俺の最強装備に盾は無く、鎧も見た目は立派だが物理防御力は皆無な鎧を着用していたのだ。

 

 そんな紙防御な俺ですらこの世界では相手からの攻撃をほぼ全てノーダメージで受け切れることが可能となってしまっているのはバグか何かだと思いたい。

 

「そうか、やはりぷれいやーは強いのだな……」

「イビルアイもこっちじゃかなり強いんじゃない?」

 

 イビルアイのレベルは50を少し超えたくらい。この世界で見てきた中ではダントツの最高レベルだ。

 

「私の強さは難度にすると150を超えるくらいだな。アレスはどうなんだ? 200か? 250か?」

「300かな」

「さん……!?」

 

 難度というのがユグドラシルレベル×3ということは学習した。

 従って俺はレベル100なので難度に換算すれば300となる。当たり前の計算だね。

 

「……想像も出来んな」

「六大神とか八欲王とかも同じだと思うよ」

「神と同列か……」

「でも戦えば間違いなく俺の方が強い」

 

 ユグドラシル公式ランキング一位は伊達では無い。

 ちょいちょい油断して死ぬから常時一位だったわけではないが、ユグドラシルの歴史において最も長く公式ランキング一位の座に着いていたのは間違いなく俺である。

 

 当時ですらそうだったのに、今は【ステータスチェック】なんてチートまで持っているのだから負ける道理が無いのだ。

 下位の基本職を取らずに条件無視で最上位職から取れる。

 下位職から順番に取らなければならないプレーヤーとはステータス面でも比べ物にならない。

 

 俺の最終決戦用アルティメットチートビルド戦士版にステータスで並ぼうと思えば、おそらく150~200ほどレベルが必要になってくる。

 

 レベルが10離れるとほぼ勝ち目が無くなるユグドラシルにおいて、レベル差50は絶望なんてもんじゃない。負ける方が難しい。

 

 そういった意味では俺の難度は450~600になるのかな?

 やっぱり頭おかしいよね。

 

「そうか……伝説を超えるのか……」

 

 その後のイビルアイは、ずっと一人でブツブツ言ってて少し怖かった。

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