ンフィーレアに魔法を見せてもらい、《ステータスチェック》という謎能力が自分の中にあることが分かってから早2年、いつの間にやら俺は10歳になっていた。
「おーいアレス! 次はこっちの収穫を頼む!」
「任せてー!」
この2年で
初めて開元した時にも分かっていたことだが、好きに
これは前提となる下位
ガチビルドなんて可愛いものではない。純然たるチートである。
ただしどれだけ魔法職を重ねても超位魔法だけは取得出来ない。何故なんだろうね?
そんな欠点とも言えないような欠点もあるが、《ステータスチェック》のぶっ壊れ具合はこの程度では終わらない。
まず、ビルドの任意組み換えが【ステータス】さえ開けば何時でも可能である。
なので今は父のお手伝いのために農民系の
鍬の一振で畑全体を一瞬で耕したり、種や苗を手に持って指パッチンするだけで種まきが完了したりと中々ぶっ飛んだ状態だ。
さすがにそれをやるとどうなるかくらいは予想ができるのでそこまではやらないが……
他にも何らかの条件(おそらく俺と対象者がお互いに大切な存在だと認識することだと思われる)を満たせばその対象者のステータスも閲覧できるし、自分と同じようにビルドを弄る事も可能となる。
まさにチート。チートオブチート。
この権能を使って父のビルドも組み換えようかとも思ったのだが……
農民Lv2 狩人Lv1 罠師Lv1 以上総レベル4という中々どうしてどうしようも無いレベルだったので断念することとなった。
俺は限られた条件の中で最強を目指すのは大好きなのだけど、ズルはあまり好きでは無い。
なのでチートは唾棄すべきものであるのだが……
「これが俺に与えられた能力だと言うのなら、これが限られた条件とも言えるよね」
「何か言ったか?」
「なにもー!」
思わず漏れた独り言に、父が反応してしまった。
いけないいけない、気を付けなければ。
「しかしバレアレさんたち遅いな。予定では昨日にでも着いててもおかしくないのに」
「そうだね。でも今回は奥さんも一緒にって話だったから、それで遅れてるのかもね」
「そうかもしれないな。というか……アレス、早いな」
やべっ……
話に気を取られて無意識に収穫作業を行ってしまっていた。
今の俺のビルドは農民特化、父より遥かにレベルが高いことを失念していた。
「はは……そうかな?」
「うーむ、アレスが俺を超える日も遠くないのかもしれんな……」
「そんなことないよ。父さんにはまだまだ敵わないよ」
「俺だってまだまだ息子に負けてやるつもりはないぞ?」
談笑しながら収穫作業を終え家へと戻ろうと立ち上がると、家の方からエンリが慌てたように走ってくる姿が目に入った。
「父さん」
「ん? あれはエンリか?」
いつもニコニコしているエンリが慌てている……これは何か大変なことが起こったのかもしれない。
「お父さん! お兄ちゃん!」
「どうしたエンリ」
父は慌てて駆け寄るエンリを落ち着かせるためか、柔和な笑みを浮かべ、膝に手を着いて息を切らせているエンリの肩に手を置いた。
「ンフィーが! バレアレさんが!」
「ンフィーレアくんがどうかしたのかい?」
「大変なの! 早く村長さんの家に!」
よほど慌てているのか、エンリの説明は要領を得ない。
「父さん、まずは村長さんの家に行こう」
「ああ……そうだな」
困惑している父の背を叩き、俺たちは村長の家へと急いだ。
◇◆
俺たちが村長宅に到着すると、そこには既に多くの村の男たちが集まってきていた。
「おーい! 何があったんだ!?」
「ハンスか……バレアレさんが……」
「バレアレさんがどうかしたのか?」
近くにいた父の知り合い(まぁ小さな村なので全員が知り合いではあるのだが)に声を掛け、何が起こったのかを聞いてみると……
「バレアレさん一家がここに向かっている途中、大規模なモンスターの群れに襲われた」
「な、なんだって!?」
モンスターの群れ……この世界にモンスターが存在していることは知っていた。
このカルネ村の近くにはトブの大森林が広がっており、『森の賢王』という魔獣がそこを縄張りとしているため、縄張り近くのこのカルネ村にモンスターが襲ってくることはほとんど無い。
なので全く警戒していなかった。
しかしそうだよな、森の賢王の縄張りから離れている街道を移動してくるバレアレ一家がモンスターに襲われる可能性は十分にあったんだよな。
そのために冒険者を護衛に雇っていたのだが、大規模な群れの前にはどうにもならなかったそうだ。
辛うじて冒険者チームの戦士がンフィーレアだけを連れて逃げることに成功し、ここカルネ村まで何とかたどり着いたらしい。
「おじさん、ンフィーは無事なんですか?」
「あ、ああ。多少怪我はしているようだが、命に別状は無いそうだ」
「そうですか」
良かった……とはとても言えない。
ンフィーレアが無事だったこと自体は喜ばしいが、両親と護衛が亡くなってしまっているのだ。
ンフィーレアの気持ちを考えると……
大切な人を失う悲しみは、俺にもよくわかるから。
そしてその後しばらくンフィーレアは気持ちが落ち着くまでカルネ村に留まることとなった。
初めは村長の家でという話であったのだが、少しでも仲のいい友達が居る方がいいだろうと言うことで我が家でンフィーレアを預かることになった。
何も話さなくてもそばにいてやろう。こういう時、決して1人にしてはいけないのだ。