王城での話し合いを終えた俺はすぐに宿に戻り、ニニャを呼び出してその報告を行った。
「というわけで聖王国行ってくるね」
「いや……どういうわけ?」
困惑したような表情を浮かべながらニニャは問い返してくるが、状況をわかっていないのだろうか?
……わかっているわけがないね。説明してないもんね。
「えっと、八本指を確実に潰すためと、王国の混乱を最小限に抑える為に今戦争に行ってる貴族の協力が必要なんだって。その貴族の協力を得るために一ヶ月の時間が欲しいって言ってた」
「なるほど……その間アレスはやることが無くなるからスーちゃんさんを探しに行くってことだね?」
「そういうこと」
察しが良くて助かる。
これ以上の証拠も必要無いとのことなので俺に出来ることは娼館にいる女性に回復魔法を掛けて回ることくらい。
それくらいなら昼間聖王国でスーちゃんを探して、夜転移で戻ってきてからやればいい。
……いや、夜だと汚い男のケツを見ながら魔法を使うことになるからやっぱり朝方出発前にしておこう。
ああいうのを見ていると、もしかしてスーちゃんもこんな目に遭っていたのかもしれないと想像してしまい……思わず殺しそうになる。
前回一人も殺さずに帰ってこれたのは我ながらよく我慢出来たものだと思わなくもない。
「アレス、ごめんね」
「なにが?」
急にどうしたのだろう?
なにか俺に謝らなければならないことをやらかしたのだろうか?
いや、ニニャに限ってそれはないと思うのだけど……
「私、助けて貰ってばっかりで……何もアレスの役に立ててないなって」
「そんな事ないと思うけど」
「でも!」
ニニャは歯を食いしばり、瞳に溜まった涙を零さないように必死に耐えているようだ。
「アレスは……私を助けてくれた! 力をくれた! その上、姉さんまで助けてくれて……その恩を、私は何も返せてないよ……」
「うーん……」
まさかそこまで思い詰めていようとは……
「気にしないでって言っても無理な感じ?」
「うん……」
「そっかー無理かー」
ですよねー……
「俺としてはさ」
「うん」
「ニニャが居てくれて良かったと思ってるよ?」
「どうして……」
まぁそうなるかー……でも、本心なんだよね。
「俺ってさ、前世の記憶とか持ってるでしょ?」
「うん」
「これってさ、なかなか人に言えないんだよね」
「……え?」
いや、なんでそんな「嘘だろ?」みたいな顔でこっち見てくるの……
「親にも言ってないんだぜ?」
「それは知ってるけど……結構簡単に話してるイメージが……」
「む……ソンナコトナイヨ?」
知っているのはニニャと蒼の薔薇のメンバーと……ツアーくらいだよ?
「あんま隠してる感じじゃないし」
「いや、うん。特別隠そうとしてないのは事実かもしれない……」
リグリットに聞かれた時もあっさり答えたしね。
言われてみれば隠してるとは言えないような気がしてきた。
「まぁ……うん。これ以上広める気は無いし」
「スーちゃんさんには?」
「もちろん言うさ!」
スーちゃんに言わなくて誰に言うのさ?
むしろ他の人には言ってるのにスーちゃんに言わなかったら正座だよ?
スーちゃんも記憶を引き継いでいれば言う必要は無いかもしれないけど。
「ほら」
「いや、スーちゃんは別枠じゃん?」
「そういうものなの?」
「そういうものさ」
あれ? 何の話だっけ? 何を言おうとしてたんだっけ?
「っと違う違う。まぁ言いたいことはあるかもしれないけど、俺はニニャにはそのまま居てくれたらそれでいいと思ってるよ」
「どういうこと?」
「このまま友達で居てくれたら嬉しい」
俺、友達少ないんだよね。
蒼の薔薇は友達って感じじゃないし、ニニャを除けば俺の友達ってンフィーレアにペテルくん、ダインさんくらいしか居ないと思う。
ルクルットはなんか違う。
「友達……」
「そう、友達。だから今後俺が困った時に助けてよ。もちろんニニャが困ったら助けるし」
「そっか……うん、友達か……」
一瞬だけ寂しそうな顔をしたが、次の瞬間には袖で涙を拭い、いつものニニャの表情へと戻っていた。
「わかった。アレスがそれでいいのなら」
「むしろそれがいいんだよね。無理して恩を返すとか言われても困っちゃう」
「ふふ……なんだかアレスらしいや」
ニニャは朗らかに笑い、立ち上がる。
「聖王国へ行くことは了解したよ。私は姉さんのところに戻るね」
「うん。お姉さんにもよろしく伝えておいて」
「わかったよ」
そう言ってから軽く手を上げて、ニニャは部屋へと戻って行った。
「さて……一応蒼の薔薇とツアーにも伝えておいた方がいいのかな?」
ふとそう思ったので、宿を出て蒼の薔薇が宿泊している宿へと向かい、カウンターに居た従業員に呼び出して貰った。
俺たちが泊まってる宿とは比べ物にならないな……さすが貴族令嬢にしてアダマンタイト。
「お待たせしました。なにかありましたか?」
飲食スペースでお茶を飲みながら待っていると、蒼の薔薇のメンバーはすぐに降りてきた。
ラキュースたちもそれぞれ飲み物を注文し、それが届いたので話を始める。
「ちょっと聖王国行ってきます」
「……はい?」
「探し人が聖王国にいる事がわかったから探しに行きます」
「はぁ……」
伝え方が悪かったのかイマイチ反応がよろしくなかったので、改めて一から詳しく説明する。
「何でも願いが叶う指輪……」
「なんだそりゃ……お前、そんなモン持ってたのか」
再入手は不可能だし、俺は超位魔法は使えないからね。
「まぁそういうわけで……毎日転移で戻ってくるつもりだけど、なにかあったらニニャかイビルアイから《
「わかったわ。亜人の侵攻を跳ね除けて安定し始めてるって噂だけど、くれぐれも気を付けて」
その後多少の雑談をしてから蒼の薔薇と別れ、宿へと戻った。
さて、日も落ち始めたし、今日はもう休んで明日の早朝から動きますかね。