翌朝、日が昇る前に起床して違法娼館に囚われている女性たちに《
「やぁ、おはよう」
「おはようツアー。こんな所で何してるの? もしかして昨夜はお楽しみでした?」
だとしたらサンドバッグの刑なんだけど、その辺どうなの?
「一緒に聖王国に行こうと思って君を待ってたんだよ。質問にも答えると、そんなことはしないし興味も無いよ」
娼館の女性には興味も無いの? つまりどういうことなの? そういうことなの?
「えっと……俺、心に決めた女性が居るからツアーの気持ちには応えられない……かな」
「君は本気なのなふざけてるのか分かりづらいね。君は僕の正体知ってるでしょ?」
「ドラゴン」
「正解。だから人間の雌には興味無いよ」
そういえばそうだった。コイツドラゴンだから人間に興味無いんだった。
俺も雌ドラゴンには興味無いからお互い様だね。
素材という意味でなら興味津々だけど、素材としてなら雄雌関係ないし。
「目が怖いよ。頼むから私利私欲でドラゴンを狩らないでおくれよ?」
「狩らないで欲しかったらツアーの古くなった鱗とか爪とかちょうだいよ。生えてくるなら尻尾もちょうだい」
トカゲの尻尾切りともよく言うし、トカゲより上位のドラゴンならちょん切っても生えてくるんじゃないかな?
「最悪古くなって剥げた鱗や生え変わった爪や牙ならあげてもいいけど、尻尾は嫌だよ。僕が痛いじゃないか」
「俺は痛くないもん。それに俺の神裂なら鋭すぎて斬られても痛くないよ?」
「その時は痛くなくてもあとから痛くなるやつでしょ? 絶対に嫌だ」
「ユグドラシルのレアアイテムあげるから」
「……ちょっと考えさせて」
とりあえず超位魔法の詠唱時間をキャンセルできる砂時計でもあげればいいだろう。
アレなら500個くらい在庫あるし、超位魔法使えない俺にはゴミだし……
それでいて課金アイテムだからレアアイテムと言っても差し支えないよね?
「まぁその話はあとからするとして、どうして着いてくるの? 俺のことが好きなの?」
「嫌いじゃないし気に入ってもいるよ。だけど恋愛感情は無いよ」
良かった、ドラゴンにケツを狙われるという絶望的な状況は回避出来たようだ。
そんな極一部の人にしか需要の無い状況にはなりたくない。
ただスーちゃんが喜ぶ可能性が無きにしも非ずなんだよなぁ……
いくらスーちゃんのためとはいえそれはちょっと……
「で、なんで着いてくるの?」
「君が無茶しないか監視する為だね」
監視って……俺ってどれだけ信用無いのかしら?
「アレスは基本的に良い奴だけど、時々考え無しで突拍子の無い行動をして周りを巻き込むことがあるってニニャが言ってたからね。君は自分でどう思う?」
「黙秘します」
そっかー、ニニャが言ったのかー……
それなら仕方ないな!
「分かったよ。本当は何かあった時のために王都に残ってて欲しかったけど」
「転移魔法で移動するんだろ? それなら僕が王都に居ても居なくてもあまり変わらないと思うけど」
「それもそうか」
何かあったら俺がすぐ戻れば済む話か。
王都にはニニャとイビルアイも残ることだし、第四、第五位階を使える二人が居れば俺が戻るまでの時間くらい容易く稼げるだろう。
「不安なら本体の方で気にしておくよ」
「してくれるならよろしく。とりあえず俺はやることやってくるね」
「分かった。ここで待ってるよ」
ツアーと別れ、娼館へと侵入。前回と同じように各部屋を周り、女性に魔法を掛けていく。
この時間は客もほとんど居ないようだ。汚いモノを見なくて済むのは有難い。
イビルアイが言うには魔法は自作できるそうだし、《
いや、《
俺の精神衛生上やはり開発は断念すべき魔法のようだ。
そんなアホとしか言いようのないことを考えながら最後の部屋へと侵入、中で死んだように眠っている女性に
「お待たせ」
「そんなに待ってないよ」
転移魔法を使ってツアーの待つ裏路地へと転移、待っていたツアーに声をかけると、そこまで待っていないと返事があった。
まぁ今回初めて侵入するわけでは無いし、中の構造も覚えている。
邪魔になる客もほとんど居なかったのでかなりスムーズに事は終えたと思う。
「じゃあ行くかい?」
「そうだね」
以前確認した聖王国とアベリオン丘陵を隔てる長大な城壁を頭に思い浮かべる。
「《
俺が魔法を唱えると、前方に半球状の黒いモヤが出現する。
「これは?」
「最上位の転移魔法だよ。《
《
その点《
「こんな魔法もあるんだね。君は超一流の戦士でありながら
「その辺は前も話したじゃん。ユグドラシルプレイヤーが転移なら俺は転生だから」
六大神の『大神殿』や八欲王の『天空城』みたいな拠点は俺には無いのだ。
最終日時点で俺はギルドに所属していなかったし、そもそも条件のひとつと思われる『最後の瞬間までログイン』すらしてなかったもの。
ツアーの言うユグドラシルプレイヤーと俺は別物だと思う。俺はある意味現地産だよ。異物じゃないよ。
「そうだったね。それで、これを通ればいいのかい?」
「そうだよ」
会話を終えた俺とツアーは《