オーバーロード〜約束の指輪〜   作:愛飢夫

64 / 64
再会

 《転移門(ゲート)》を抜けて戦場へと躍り出た俺の目に入ったのは、俺と同じ指輪を身に付けた髪の長い女性へと斬り掛かる銀色の獣の姿だった。

 

 スーちゃんが危険で危ない、そう直感した俺は《アイテムボックス》から神裂を取り出しながらビルドを変更。

 ひとつの特殊技術(スキル)を発動した。

 

「《次元断切(ワールドブレイク)》」

 

 スーちゃんの前に立って剣を薙ぐ。それだけで、目の前の銀色の獣とその背後に展開していた全ての亜人たちの上半身と下半身は分かれを告げ、一匹残らず地に倒れ伏した。

 

 ついでに遠くに見える丘まで射程範囲に入ってしまったのか、真っ二つになってしまったが気にしない。一撃だけなら誤射である。

 次から気をつけよう。

 

「え……?」

 

 背後からスーちゃんと思われる女性の声が聞こえるが、まずは敵を殲滅しなければ落ち着いて会話もできない。

 今は目の前の……スーちゃんの敵を全て斬る。

 

「武技《加速》《超加速》」

 

 レベル100の前衛職のステータスを『エンゲージリング』の効果で爆上げしている俺がさらに武技を使って強化する。

 

 その結果どうなるか……俺は戦場を駆ける一陣の風となった。

 

 今の俺を止められる者など存在しない。

 今の俺なら何でもできる。何でも斬れる。爽快感が半端ない。

 

 そして何より……今、俺はスーちゃんを守るために戦っている。

 今の俺、超かっこいいんじゃない? 惚れ直すこと待ったナシ。

 

 スーちゃんたちを囲むように展開していた亜人たちを全て斬り殺し、ついでに髪の短い女性と一騎打ちみたいな構図になっている他の亜人よりちょびっとだけ強そうな亜人も斬ったところで、俺は動きを止めた。

 

「ふぅ……」

 

 神裂を鞘に戻し、振り返る。

 すると呆然とした顔をしている二人の女性と、頭を抱えて蹲るツアーの姿が目に入った。

 

「何してるの!? なんてことしてくれたの!?」

「調子に乗って殺った。反省も後悔もしていない」

「それもだけど、それよりあっちのことだよ!」

 

 ツアーが指差しているのは、綺麗に真っ二つになった丘だった。

 

「誤射です」

「誤射で丘を斬るってなんなのさ!?」

「次から気をつけますです。はい」

 

 そもそも俺が暴走しないように着いてきたんじゃなかったの? 防げなかったからと言って俺に文句を言うのはやめて欲しい。

 

 大慌てで話しかけてくるツアーを軽くあしらい、女性二人へと顔を向ける。

 

「大丈夫? 怪我は無い?」

 

 俺が声を掛けると、女性二人はヘナヘナと力無くその場にへたりこんだ。

 

 余程疲れているのだろうと察した俺は、ビルドを信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)へと変更し、有り余る魔力を使って全ての傷と状態異常を回復させる第十位階魔法《完全治癒(パーフェクト・ヒール)》を無詠唱化して発動、二人を完璧に癒して差し上げた。

 

「あ、あの!」

 

 これでお話出来るかなと思っていると、髪の長い方の女性が意を決したように立ち上がり、俺の顔を正面から見つめてくる。

 

 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)で見た時から分かってはいたが、この目を見て確信した。

 

 スーちゃんだ。今俺の目の前にスーちゃんが立っている。

 

「貴方は……」

「スーちゃん……会いたかった!」

「え? ちょ!」

 

 スーちゃんは口を開き、何かを言おうとしていたが、それを聞く前に俺の体は勝手に動いてスーちゃんを強く抱き締めていた。

 

「ちょっと……ねぇ、ちょっと離して?」

「スーちゃん! 結婚しよう!」

「え? あ、うん……じゃなかった! いいからちょっと離して!」

「スーちゃん!」

「離せって言ってるでしょうが!!」

「ひでぶっ!?」

 

 下半身にかなり強めの衝撃を感じたので思わず抱き締めていた腕を離して下半身に目を向けると、スーちゃんの膝が俺の股間(ペニー)に突き刺さっていた。

 

 《上位物理無効化III》の効果でダメージは入っていないのだが、股間(ペニー)を蹴られたという事実が俺の心に大ダメージを与えてくる。

 

 いや、でもこれは考えようによってはご褒美……ありがとうございますッ!

 

「正座」

「……え?」

「正座。早く」

「はい!!」

 

 言われた俺は瞬時に膝を折ってスーちゃんの前に正座する。

 

 なんだか一瞬漆黒の後光のようなものが見えた気がしたけど、スーちゃん漆黒の後光なんて持ってたかな?

 

 というか髪の短い方の女性も俺の隣で正座してるんだけど……なんで?

 

「どうして姉様まで正座しているのですか?」

「いや……なんとなく?」

 

 雰囲気かよ。

 

「はぁ……姉様にも言いたいことはありますが、今はいいです。立ってください」

「分かった」

 

 隣で正座していた女性はどこか安心したような顔をしながら立ち上がる。

 そういえば俺、この二人の名前も知らないや……

 

「コホン……それで、お名前は?」

「えっと……アレスです。アレス・エモットです」

「そうですか。私はケラルト・カストディオと申します。こちらは私の姉のレメディオス・カストディオです」

「先程は助かった。礼を言う」

 

 スーちゃんのお姉さん……レメディオスさんはさっきの安心したような顔とは違い、キリッとした顔で軽く頭を下げてお礼を言ってくれた。

 

 なんか女騎士って感じがしてかっこいいな。

 

「それで……」

 

 スーちゃんは俺から視線を外し、後方に控えているツアーへと視線を向けた。

 

 紹介しろということだろう。

 

「この鎧はツアーだよ」

「とりあえず今は僕のことは気にしなくて構わないよ」

 

 なんだかツアーのテンションが低いな。

 まぁスーちゃんに色目を使ったらぶった斬るし、大人しくしているのならそれでいいか。

 

「わかりました。それより、先程の件ですが……」

「結婚してください」

「それよ! 何でいきなりプロポーズなの!? その前にもっとやることがあるでしょう!? 馬鹿なの……ごめん、馬鹿だったわね」

「さすがにそれは酷いと思う」

「うるさい馬鹿!」

「ごめんなさい!」

 

 これは口答えしない方が良さそうだな。

 しかし……怒られているはずなのになんだか懐かしくて楽しい。ちょっと泣きそうだ。

 

「一応……一応念の為に確認しておくけど、アレスはその……貴方なのよね?」

 

 スーちゃんは姉であるレメディオスの方をチラチラ見ながら尋ねてくる。

 これは前世の話は姉にもしていないのだろう。

 

 でもこれめっちゃあからさまだけど大丈夫? 普通バレない?

 

「そうだよ。これが何よりの証明だと思うけど」

 

 チラリと視線を左手に動かすと、スーちゃんも釣られて視線を動かして俺の薬指に嵌っているエンゲージリングを見た。

 

「私のことをスーちゃんって呼んでたし、間違い無さそうね」

「でしょ? だったら……」

「いくら命の恩人でもそう簡単に妹はやらないぞ!」

「もう! 姉様は少し黙ってて!」

 

 急に話に割り込んできたレメディオスさんに対し、スーちゃんはチョップをお見舞いしている。

 

 うん、平和だな。

 

 こうして、ついに俺はスーちゃんとの再会を果たすことが出来たのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

セバス・チャンは完璧な執事である(作者:目ん玉)(原作:オーバーロード)

 執事とは何か。▼ 全日本執事協会というのがありまして、そのウェブサイトより抜粋した内容が、以下の通りです。▼ 空間の品格を保ち、時間を創り出し、ご依頼者が本当に大切なことに集中できる環境そのものを整える――それが執事の本分です。▼ 執事の第一の技能は、掃除でも給仕でもなく「観察」です。あらゆる情報から次に必要なことを察し、言葉にされる前に動きます。頼んだこ…


総合評価:2773/評価:8.46/完結:25話/更新日時:2026年10月12日(月) 17:00 小説情報

オーバーロード 現地人に転生した弱体鈴木悟さん(作者:モモンガ・アインズ)(原作:オーバーロード)

ユグドラシルでのサービス終了と同時に、本編世界に現地人として転生した鈴木悟。▼王国の片田舎で事情持ちの両親と一緒に暮らしており、アバター「モモンガ」の力をある程度継承していたために本編世界では異例の強さを持っていたものの、「モモンガ」よりは弱くなっていた。▼自然豊かな世界でどう生きようか。そう考えている間に、平穏は崩れ去る──。▼毎日20時更新予定です。▼R…


総合評価:3014/評価:8.34/完結:13話/更新日時:2026年11月01日(日) 20:00 小説情報

選択内容全部S(作者:青林)(原作:オーバーロード)

「あなたの分身がオーバーロード世界にいたら」の六つの選択内容が全部Sの主人公を妄想した二次創作。▼作中の設定や諸々に妄想が入ってるので苦手な方はブラウザバック推奨です。▼「あなたの分身がオーバーロード世界にいたら」▼https://overlord-anime.com/_season4/10th-anniv/▼タグ追加 9/5


総合評価:3955/評価:8.58/連載:3話/更新日時:2026年09月07日(月) 06:36 小説情報

迷宮を目指した俺は、世界を間違えた(作者:アルマトラン)(原作:無職転生)

二十一歳で死んだ大学生は、異世界で二度目の人生を始めた。▼魔法がある。▼魔物がいる。▼迷宮がある。▼大好きだった『マギ』の世界だと思った。▼……ところが。▼ジンがいない。▼金属器もない。▼ーーどうやら俺は、世界を間違えたらしい。▼これは、勘違いから始まる二度目の異世界人生。


総合評価:3240/評価:8.09/連載:29話/更新日時:2026年10月21日(水) 21:33 小説情報

デメテル・ファミリアの団長(作者:Mr.♟️)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

▼地雷だと思った方はブラウザバックしてください。▼オリ主ハーレム?モノです。▼タグは随時更新します。▼原作の30年前から始まります。▼挿絵は全てAI絵になります。▼オリ主:ライ・フェンネル▼物語スタート時、年齢:10歳。▼狐人とハイエルフのハーフ、妖精狐(エル・ルナール)。


総合評価:1873/評価:7.52/連載:13話/更新日時:2026年09月01日(火) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>