《
スーちゃんが危険で危ない、そう直感した俺は《アイテムボックス》から神裂を取り出しながらビルドを変更。
ひとつの
「《
スーちゃんの前に立って剣を薙ぐ。それだけで、目の前の銀色の獣とその背後に展開していた全ての亜人たちの上半身と下半身は分かれを告げ、一匹残らず地に倒れ伏した。
ついでに遠くに見える丘まで射程範囲に入ってしまったのか、真っ二つになってしまったが気にしない。一撃だけなら誤射である。
次から気をつけよう。
「え……?」
背後からスーちゃんと思われる女性の声が聞こえるが、まずは敵を殲滅しなければ落ち着いて会話もできない。
今は目の前の……スーちゃんの敵を全て斬る。
「武技《加速》《超加速》」
レベル100の前衛職のステータスを『エンゲージリング』の効果で爆上げしている俺がさらに武技を使って強化する。
その結果どうなるか……俺は戦場を駆ける一陣の風となった。
今の俺を止められる者など存在しない。
今の俺なら何でもできる。何でも斬れる。爽快感が半端ない。
そして何より……今、俺はスーちゃんを守るために戦っている。
今の俺、超かっこいいんじゃない? 惚れ直すこと待ったナシ。
スーちゃんたちを囲むように展開していた亜人たちを全て斬り殺し、ついでに髪の短い女性と一騎打ちみたいな構図になっている他の亜人よりちょびっとだけ強そうな亜人も斬ったところで、俺は動きを止めた。
「ふぅ……」
神裂を鞘に戻し、振り返る。
すると呆然とした顔をしている二人の女性と、頭を抱えて蹲るツアーの姿が目に入った。
「何してるの!? なんてことしてくれたの!?」
「調子に乗って殺った。反省も後悔もしていない」
「それもだけど、それよりあっちのことだよ!」
ツアーが指差しているのは、綺麗に真っ二つになった丘だった。
「誤射です」
「誤射で丘を斬るってなんなのさ!?」
「次から気をつけますです。はい」
そもそも俺が暴走しないように着いてきたんじゃなかったの? 防げなかったからと言って俺に文句を言うのはやめて欲しい。
大慌てで話しかけてくるツアーを軽くあしらい、女性二人へと顔を向ける。
「大丈夫? 怪我は無い?」
俺が声を掛けると、女性二人はヘナヘナと力無くその場にへたりこんだ。
余程疲れているのだろうと察した俺は、ビルドを信仰系
「あ、あの!」
これでお話出来るかなと思っていると、髪の長い方の女性が意を決したように立ち上がり、俺の顔を正面から見つめてくる。
スーちゃんだ。今俺の目の前にスーちゃんが立っている。
「貴方は……」
「スーちゃん……会いたかった!」
「え? ちょ!」
スーちゃんは口を開き、何かを言おうとしていたが、それを聞く前に俺の体は勝手に動いてスーちゃんを強く抱き締めていた。
「ちょっと……ねぇ、ちょっと離して?」
「スーちゃん! 結婚しよう!」
「え? あ、うん……じゃなかった! いいからちょっと離して!」
「スーちゃん!」
「離せって言ってるでしょうが!!」
「ひでぶっ!?」
下半身にかなり強めの衝撃を感じたので思わず抱き締めていた腕を離して下半身に目を向けると、スーちゃんの膝が俺の
《上位物理無効化III》の効果でダメージは入っていないのだが、
いや、でもこれは考えようによってはご褒美……ありがとうございますッ!
「正座」
「……え?」
「正座。早く」
「はい!!」
言われた俺は瞬時に膝を折ってスーちゃんの前に正座する。
なんだか一瞬漆黒の後光のようなものが見えた気がしたけど、スーちゃん漆黒の後光なんて持ってたかな?
というか髪の短い方の女性も俺の隣で正座してるんだけど……なんで?
「どうして姉様まで正座しているのですか?」
「いや……なんとなく?」
雰囲気かよ。
「はぁ……姉様にも言いたいことはありますが、今はいいです。立ってください」
「分かった」
隣で正座していた女性はどこか安心したような顔をしながら立ち上がる。
そういえば俺、この二人の名前も知らないや……
「コホン……それで、お名前は?」
「えっと……アレスです。アレス・エモットです」
「そうですか。私はケラルト・カストディオと申します。こちらは私の姉のレメディオス・カストディオです」
「先程は助かった。礼を言う」
スーちゃんのお姉さん……レメディオスさんはさっきの安心したような顔とは違い、キリッとした顔で軽く頭を下げてお礼を言ってくれた。
なんか女騎士って感じがしてかっこいいな。
「それで……」
スーちゃんは俺から視線を外し、後方に控えているツアーへと視線を向けた。
紹介しろということだろう。
「この鎧はツアーだよ」
「とりあえず今は僕のことは気にしなくて構わないよ」
なんだかツアーのテンションが低いな。
まぁスーちゃんに色目を使ったらぶった斬るし、大人しくしているのならそれでいいか。
「わかりました。それより、先程の件ですが……」
「結婚してください」
「それよ! 何でいきなりプロポーズなの!? その前にもっとやることがあるでしょう!? 馬鹿なの……ごめん、馬鹿だったわね」
「さすがにそれは酷いと思う」
「うるさい馬鹿!」
「ごめんなさい!」
これは口答えしない方が良さそうだな。
しかし……怒られているはずなのになんだか懐かしくて楽しい。ちょっと泣きそうだ。
「一応……一応念の為に確認しておくけど、アレスはその……貴方なのよね?」
スーちゃんは姉であるレメディオスの方をチラチラ見ながら尋ねてくる。
これは前世の話は姉にもしていないのだろう。
でもこれめっちゃあからさまだけど大丈夫? 普通バレない?
「そうだよ。これが何よりの証明だと思うけど」
チラリと視線を左手に動かすと、スーちゃんも釣られて視線を動かして俺の薬指に嵌っているエンゲージリングを見た。
「私のことをスーちゃんって呼んでたし、間違い無さそうね」
「でしょ? だったら……」
「いくら命の恩人でもそう簡単に妹はやらないぞ!」
「もう! 姉様は少し黙ってて!」
急に話に割り込んできたレメディオスさんに対し、スーちゃんはチョップをお見舞いしている。
うん、平和だな。
こうして、ついに俺はスーちゃんとの再会を果たすことが出来たのだった。