やることをやった翌日、俺は眠い目をこすりながら父の農作業を手伝っていた。
とてつもなく眠い。
前世は36時間とか48時間耐久ゲーム配信などもしていたので疲労や短時間睡眠にも耐性があるかと思ったが、そんなことはないようだ。
普通に考えてこの体は子供なのだから当たり前である。
異世界転生なんて現実味のない状況故かゲーム脳になりつつあるな。気を付けなければ……
しかしゲームと言えばアイテムボックスの中には《疲労無効》や《睡眠無効》などの効果の付与されたマジックアイテムが入っているはず。
近いうちに中身の確認とそれらのマジックアイテムの効果の検証もやらなけれは……
「どうしたアレス、眠そうだな」
「あまり寝られなくて……」
「そうか……昨日あんな事があったんだから仕方ないよな」
10歳の子供にはショッキングな出来事だったのは同意する。
「すまない、今日くらいは休ませてやるべきだったかもな」
「え? 大丈夫だよ」
「かもしれないが、お前は妹たちの面倒もよく見てくれるし、こうやって手伝いもしっかりしてくれているんだ。たまにはのんびりしてもいいんだぞ?」
父は気遣わしげな視線を向けてくるが、なんだか申し訳ない気持ちになってしまいそうだ。
レベル4の父に対して俺は100レベル。
心配されるようなやわな身体能力ではないのだ。
「大丈夫だよ。エンリもネムも可愛いし、父さんの仕事を手伝うのも楽しいよ」
「アレス……お前は本当にいい子だな! 俺の自慢の息子だ!」
ニカッと笑う父を見ていると、俺も嬉しくなってくる。
前世では両親は早くに亡くなっており、亡くなる直前まで忙しく働いていた両親の顔もほとんど覚えていない。
そんな俺にとって、今世の家族は大切な宝物となっている。
そんな宝物である父から褒められ、誇らしいような恥ずかしいような不思議な気分で収穫物を運んでいると、血相を変えたエンリが俺や父の居る畑に駆けてくるのが目に入った。
昨日も全く同じ光景を目にした気がする。
「お父さん! お兄ちゃん! 大変!」
「エンリ、今日はどうしたんだ?」
「バレーさんが! ンフィーのお父さんとお母さんが!」
お、ンフィーレアのご両親が村にたどり着いたのかな?
今はまだ正午にはなっていない。思ったより早かったな。
「落ち着きなさいエンリ。バレアレさんがどうかしたのかい?」
「来たの! 村にンフィーのお父さんとお母さんが来たの!」
「なんだって!?」
「今は村長さんの家!」
「わかった! こうしちゃいられない! 行くぞ二人とも!」
父は息を切らせているエンリを抱き上げて、村長さんの家の方へと走り出した。
俺も遅れないように、つい本気を出して抜き去ってしまわないよう気を付けながら父のあとを追った。
◇◆
「バレアレさん!」
村長宅に到着した父は、ノックをすることも忘れ村長宅の玄関扉を勢いよく開く。
「エモットさん、こんにちは」
「こんにちは……じゃなくて! 無事だったんですね!」
父に続いて中に入ると、村長夫妻とテーブルを挟んで対面に座っていたバレアレさん夫妻がこちらに気付き、軽い調子で挨拶をしてきた。
その奥には再会を喜びあっている冒険者たちの姿も見える。
「無事……ええ。モンスターに襲われたところまでは覚えているのですが、気が付けば護衛の方たちと一緒に街道付近で目が覚めまして……正直何が何だか」
「そうなんですね……しかし何がどうあれ、バレアレさんたちが無事で良かった! ンフィーレアくんも喜びますよ」
ンフィーレアの名前を出し、父はちらりとこちらに視線を向けた。
これは……呼んでこいってことだな。
「呼んでくる!」
「頼む」
一応声に出して確認してみると、正解だったようで父が頷いたので自宅に居るンフィーレアを連れてくるために村長宅を後にする。
「お兄ちゃん、私も行く!」
村長宅を出ると、すぐにエンリが飛び出してきて、一緒に行こうと手を繋いできた。
きっと大人たちの中に一人で残るのが嫌だったのだろう。断る理由も無いので手を繋いだまま自宅へと駆け込んだ。
「ンフィー!」
バン! と勢いよく扉を開け、中に居るンフィーレアにエンリが呼びかける。
あまりの勢いと、エンリの大きな声に驚いたのか部屋の隅で座り込んでいたンフィーレアがビクッと大きく肩を揺らした。
「エ、エンリ……どうしたの?」
「ンフィーはまだ聞いてないの?」
「なにを?」
ンフィーレアは虚ろな目でエンリを見ている。
会話自体は成り立っているのだが、心ここに在らずといった感じだな。
まぁそれも当然だ。
急にモンスターの群れに襲われて、両親が亡くなったなんてことになれば俺でも一ヶ月は引きこもる。
こうしてエンリの問いかけに反応しているだけでも立派なものだ。
「ンフィーのお父さんとお母さんが生きてたんだよー」
「……え?」
突然のエンリの爆弾発言に、ンフィーレアはまともな反応が出来ていない。
そりゃあ昨日モンスターに襲われて、亡くなったと聞かされて落ち込んでいたのに翌日に生きてましたと聞かされても……信じられないよね。
「いま……なんて?」
「だから、ンフィーのお父さんとお母さんが村に来たの!」
「ほ、本当に!?」
「うん! ね! お兄ちゃん!」
「本当だよ。今は村長さんの家に居るから、ンフィーも早く行こう」
エンリの話を聞いて呆然としていたンフィーレアだが、その話を俺が肯定したことで信じる気になったのか、その目から涙がこぼれ落ちた。
「本当に……お父さんとお母さんが……」
「元気だよ! 早く行こっ!」
エンリはンフィーレアの腕を掴み立ち上がらせる。
そのまま、ンフィーレアの手を取って村長宅へと向けて走り出した。
エンリは元気だな……
置いていかれないよう俺も走って二人を追い掛け始めた。
早速投稿予約忘れてました。
忘れてたお詫びと☆10個頂けたのて18時10分にもう一度更新しようと思います。