悪役の魂と共にMCU転生したので生き延びる 作:ゴウカザルのスケジュール
「あなたの能力は、『死者の魂を自分の脳内に宿すこと』です」
私は市役所で働いているアラサーのおじさんである。
今日も変わらず、悩める市民の皆様方に窓口対応を行うべく、
国からの照会メールを閉じて自分の席を立った。
やって来たのは、とても美しい女性だった。
頭皮が剥き出しである事がデメリットになっていない。
寧ろ、ミステリアスな雰囲気を醸し出すアクセントとなっていた。
服装もそうだ。
奇抜という表現は現代の価値観からするとよろしくないので、
敢えてココでは個性的と言い換えよう。
しかし、何故だろうか。
どこか既視感がある。
こんな美人な、しかも、どう考えても外国籍の方との繋がりは、
自身が所属するあらゆるコミュニティーにおいて存在しない筈だった。
それなのに初対面な気がしない。
「しかし、困りましたね。どうやら『悪に属する者のみ』という条件が付きます」
「こんにちは。今日はどうされましたか?なにか役所から書類届きましたか?」
私は張り付けた笑顔のまま全力で頷き、質問を投げ掛けた。
一昔前の自分であったならば、厨二病だとか、精神患者だとか馬鹿にするだろうが、今は立派な公務員だ。
ありとあらゆる人が存在する事を理解している。
収監された方に対して、収容されていた期間に対応する国民健康保険税の所得割や均等割を免除する手続きを行う事も稀にあるし、
福祉課や納税推進課と連携しながら、様々な障害をお持ちの滞納が多い方に対する適切な相談は日常茶飯事である。
取り敢えず、こういう場合の対応は、ただ一つ。
相手の話が終わるまで全部頷いて聞き流す。
コレに尽きる。
相手が言いたい事を何もかも吐き出させた後に、業務上必要な手続きを行えばいいのだ。
ということで、私は聞き手に徹した。
美人だなぁと思いながら、禿げ……ゲフンゲフン。
取り敢えず、光ってて、美人だ。
死の直前に生への異常な執着を持っていた人物の精神が、
私の魂の器の中に逃げ込んで来るという。
故に、私の意思で取捨選択は不可能であり、受動するしか無いのだとか。
しかも、それは全て悪に属する者たちであるそうだ。
「興味深いですね。それでですね、ご本人確認が出来ます、身分確認証はお持ちでしょうか。よろしかったらお名前ちょうだいしても?」
はー、とか、ほー、とか、そうなんですね、を繰り返しつつ、
徐々に業務の方へ誘導していく。
「エンシェント・ワン」
「ありがとうございます。次に生年月日をお伺いしてもよろしいでしょうか。因みに、自営業か農家かなにかですかね」
私が担当する業務は国民健康保険。
つまり、大抵が農家だ。
故に、職業を聞いてみたが、
「ソーサラー・スプリーム」
としか返答が無かった。
たまに居るのだ。
年齢を聞いたらサバを読んだり、逆ギレしてくる女性が。
まぁ、致し方ないと受け入れるしかない。
公務員を嫌う人々は多いので、その分、クレーム対応には慣れている。
が、何事も限度───というより、専門分野があるのだ。
流石に福祉課に連絡を入れないとな……と、立ち上がったタイミングで、
私の視界が暗転し、そこからの記憶は途切れている。
*****
「って、事があった訳よ。ゾラ爺。んで、4五歩」
恐らくだが、私は転生した。
いや、正確に言うならば、転生している最中だろう。
今は胎児だと思われる。
産まれてすら居ないが、既に意識は明瞭である。
というか、私以外にもう一人、この肉体に同居人が居る。
それがゾラ爺。
本人の話を聞くに、科学者らしい。
といっても、このゾラ爺はAIもドローンもイマイチ理解していない。
チャッピーは凄いんだぞ、チャッピーはな!
ようつべも知らないからなぁ。
ぶっちゃけ、オンボロ爺さんだと嘲笑って不当な扱いをしている。
…………いや、ゾラ爺って、アーニム・ゾラだよな。