悪役の魂と共にMCU転生したので生き延びる   作:ゆかりちゃん@良識のある物書き

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ddd32様
slothful-soma様
誤字報告ありがとうございます。
感謝致します。

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第十四話

「I am Iron Man .」

 

 

───あの歴史的な発言から2年が経過した。

ロシア人の鞭おじさんが現れる事は無く、

バナー博士がハーレムでアブない夜遊びに興じる事も無かった。

世界は平和であった。

 

 

その間、オズコープ社は急成長を果たしていた。

スターク社が撤退した軍需産業への部分的参入。

コレが大きな要因であった。

私の脳内に生息するオバディア・ステインことオバ爺の知識と経験を活かし、

圧倒的な経営手腕をもって、優良な元スターク社の下請けや孫請け企業を買収していった。

 

敬虔なキリスト教徒である義父ニコラスからの反対意見や批難もあったものの、我が祖国である自衛隊を例に挙げ、防衛事業の名目で運営していく事には同意を得られた。

 

そもそも、スターク社が撤退し、巨大なパイが突然現れた状況なのだ。

三流の悪質な武器商人が我が物顔でパイに齧り付くより、

高潔な精神を持ち、善良な判断を下せる我々、オズコープ社が軍需産業の治安を守る方がまだ世界は平和だろう。

実際、その様な内容を訴えると、義兄は賛同を示し、多少は協力的に動いてくれるようになったので問題は無い。

 

現在、オズコープ社は高機能防護装備の世界的シェアを獲得し、

災害対策装備においても、一定の評価を得ている。

勿論、野外医療機器に至っては、すでに絶対的なブランドとしての地位を確立していた。

 

 

個人的な研究における進捗は、分野ごとに大きな差が有る。

キック力増強シューズの開発という機械工学分野に関する計画は、白色テロルを始めとする激しい妨害行為を受け、大変残念ながら、泥沼の迷走を極めている。

 

その一方で、バイオテクノロジーのプロジェクト……つまり『超人血清』の精製は、恐ろしいほど順調に成果を上げていた。

実に正しく、ハイルヒドラー。

さぁ、皆も三唱したまえ。ハイルヒドラー。

 

善良なる精神を有する我が義父ニコラスと義兄マイケルを信頼したブルース・バナー博士が提供した血液サンプル。

これをゾラ爺が解析し、副作用0を目指す方向性で研究を行っている。

 

そして、実際に、超希釈超人血清(エナジードリンク)を完成させた。

しかも、製造ラインまで確立されている。

 

 

 

───時は遡る。

 

 

「では、ここからは私の本領発揮という場面だな」

 

『そうじゃ。というか、薬事法ってなんじゃ』

 

「正式名称は、医薬品・医療機器等の品質・有効性及び安全性の確保等に関する法律な。だから、今は薬機法か。兎に角、そういう法律が日本にはあるんだよ」

 

 

数ヶ月前、私は本気で頑張った。

元公務員として、現代日本では考えられないアメリカ法の穴を発見したのだ。

 

アメリカの1994年に成立された DSHEA法(栄養補助食品健康教育法)

コイツはイケない。

いや、我が祖国たる日本が安全衛生に対して異常なまでに厳格なだけだが。

実際に比較して考えてみればよく分かる。

 

日本の薬機法は、身体の機能を活性化させる効果や、傷の治りを早めるといった明確な効果効能を持つ成分は、全て、『医薬品』とみなされる。

 

医薬品指定を受ければ、何年もの歳月と莫大な費用をかけた治験を行い、厚生労働省の厳しい承認審査を通過しなければ、店頭で1本たりとも売る事が出来ない。

 

だからこそ、日本のエナジードリンクは医薬品扱いのタウリンを抜き、代わりにカフェインやアルギニンを放り込んだ清涼飲料水として売るしかないのだ。

 

——が、しかし、時は2010年。ココは自由の国、アメリカ合衆国。

 

DSHEA法(栄養補助食品健康教育法)において、サプリメントの枠組みで商品を届ける場合、Food and Drug Administration ───通称、 FDA (アメリカ食品医薬品局)の事前承認や治験は一切不要。

メーカー側が、自己責任で安全基準を判断し、発売の30日前に簡単な書類を提出するだけで、販売が可能となる。

 

更に、身体の構造や機能にどう作用するかという機能表示すらも合法的に記載する事が出来る為、『疲れ知らずでパフォーマンス向上』や、『細胞レベルの活力サポート』と表記してしまっても、合法的なサプリメントとして販売審査が通ってしまうのだ。

 

実際に、独自ガンマペプチド濃縮複合体配合とだけ明記した商品を販売しているが、何処からも突っ込まれる事が無い。一度たりともだ。

現時点において、ハルク由来の血清を数千倍に希釈したという超危険な企業秘密の全成分配合比率ですらも、完全に隠蔽出来ていた。

 

又、前世において当時は、2002年に発売が開始された『Monster』が、老舗銘柄である『RedBull』相手に急激なシェア争いを起こしている時期であった。

この世界においても、我がオズコープ社が発売している『GOBLIN』は様々な競合他社の商品と鎬を削りながらも順調に売上を伸ばしている。

特に緑色のデザインである、『GREEN GOBLIN』は大人気商品だ。

 

 

 

なにせ、マーケティング費用が掛からないのだ。

我々、オズコープ社の得意技である、粗悪記事の自動大量生成。

ゾラ爺が組んだアルゴリズムによって、24時間体制でWeb上に好意的な口コミが湧き上がる。

勿論、それだけでは無い。

ガッツリ、エロい画像を表示して、目を引きつつ、社名を刷り込む、通称『ドパガキをシャブ漬け戦略』を実行し、賛否両論ある大成功を収めている。

 

こうした自動生成による情報拡散を行うことで、宣伝経費を極限まで押し潰すことに成功していた。

 

そして、浮いた宣伝経費で、美女達を雇い、現地でのゲリラ的無料配布を行う。狙う場所は、格闘技の観客席や大学街、更には深夜のクラブやバーだ。

案外、口コミは良い。ほんの極わずかな即効性超人血清が含まれているので、「ナイトクラブで飲むと朝までバテない」「観客席で飲むと異様にハイになる」という都市伝説的な噂話がNY中で駆け巡っている。

 

 

発売開始から数ヶ月が経過した現在に至っては、ゾラ爺の全自動まとめサイト群で自社自演をせずとも、ネット上の掲示板やレビューサイトは異常な熱気に包まれている。

全米のエナジードリンク市場における『GOBLIN』のシェアは12%を突破し、月間売上高は1億ドルを越えていた。

 

 

「……で、数字の推移の方はどうなんだ、ゾラ爺」

 

 

自室のThinkPadに向かい、私がそう問いかけると、画面のコマンドライン上に緑色のグラフが跳ね上がった。

 

 

『くくく、順調そのものじゃよ、アルバ。テレビ広告に数百万ドルをドブに捨てる競合他社を横目に、我がオズコープ社のWeb工作と現場でのゲリラ配布による顧客獲得単価は、他社の10分の1以下を叩き出しておる』 

 

 

「10分の1か。前世の公務員時代に見たら胃が痛くなりそうなマーケティング効率だな」

 

 

経営難に陥っていた小規模なボトリング工場を次々と買収し、非常に高い安全基準の運用を前提に製造を行っているが、私が品質管理面において求める水準が高過ぎるせいで、需要に供給が追いついていない。

この問題はいずれ、解決せねばならないな。

 

 

「よし……今日の分の『究極希釈版超人血清(エキス)』、出来上がり」

 

 

私はピペットを使い、精製された鮮やかな赤色のハルク血清をほんの1滴だけ抽出し、それを生理食塩水とオズコープ製ビタミンシロップで凡そ12万6000倍近くに超希釈した。

因みに、ゾラ爺特製の変な薬物もしこたま入っている。

 

出来上がったのは、ほんのり薄ピンク色をした、ただのスポーツドリンクのような怪しい液体だ。

 

 

「いただきます」

 

 

腰に手を当て、ゴクゴクと効果音を自分で発しながら、飲み干していく。

こういう仕来りは大切なものだ。知らんけど。

あの事故の夜、青紫色の血液を盛大に口内にホールインワンされて以来、私はこのエキスを毎日継続して飲み続けていた。

勿論、風呂上がりのタイミングで、だ。

 

当然、市販の『GOBLIN』とは効力がまるで異なる。

大人気商品である『GREEN GOBLIN』を例に挙げて比較してみるが、

コチラは即効性に最も重きを置き、身体能力は向上するものの僅か数時間で減衰し切って消滅する。

その上、万人向け商品の為、肝機能に対する負担が少なからず存在する。

勿論、安全衛生基準に関しては比較的高い水準を求めてはいるが、どうしても限界があった。

 

だが、一方の『究極希釈版超人血清(エキス)』は、私の遺伝子情報を分析した上で生成している為、適合率が非常に高く、半永久的に身体機能が向上し続ける。

更に、ハルク化に対する圧倒的な解毒作用を主軸として設計している為、胃酸で分解されつつ超低濃度で毎日少しずつ消化器官から吸収させる分には、ガンマ線変異の危険性もその他の副作用もほぼゼロに等しい。

 

その上、副作用が存在せず、味も悪くない。

強いて言うならば、複数の薬品を摂取する以上、避けては通れない肝機能の低下問題。

しかし、此方も解決されつつある。

義兄こと天才生理学者マイケルの協力が得られたのだ。

取り敢えず、次は二酸化リチウムとクロロフィルの研究をして欲しい。

え?いいからやってよぉ、オニイチャンでしょ!!

 

 

「……うん、いいね。今日も胃が荒れる事もなく、発熱もしない。安全基準適合ヨシ!」

 

『呆れたヤツじゃ……。せっかくの神の血を、乳酸菌飲料のようにチビチビ飲んで満足しておるとはな。お前のそのチキンぶりには頭が下がるわい』

 

 

牛乳に乳酸菌は含まれているのか?

どうしても、ヤクルトやヨーグルトの印象が強い。

私はそんなどうでも良い疑問を抱きながら、ゾラ爺に反論した。

 

 

「バカを言え。命あっての物種だぞ。だいたいな、注射一発で超人になろうとするからMCUの悪役は皆、自滅するんだ。行政の基本を教えてやろう。段階的な経過措置って概念だ。ゾラ爺は義務教育で習わなかったのか?」

 

 

全身鏡の前に立つ。

映る姿は、モヤシのような9歳児。

されど、肌のツヤが異常に良く、引き締まっている。

何より骨密度と靭帯の引っ張り強度の数値が跳ね上がっていた。

 

あくまでも子供の領域。

されど、継続し続ける事により、私の身体は着実に地味な変化を続けていた。

そろそろ、武術に対する知識も付けておくか。




年   Red Bull  Monster
2008年 35.7%   28.3%
2009年 29.8%   30.6%
2010年 31.9%   27.9%

エナジードリンクのアメリカ市場
2008年 約78 億ドル
2010年 約80億ドル

2012年にGameloftからリリースされたスマホアプリ版『The Amazing Spider-Man』を

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