悪役の魂と共にMCU転生したので生き延びる 作:ゆかりちゃん@良識のある物書き
2011年現在。
軍需業界のパイは留まるところを知らず巨大化し続けていた。
スターク・インダストリーズが軍需産業から撤退した事を切っ掛けに、我がオズコープ社は新規参入した訳であるが、持ち前のバイオ技術と脳内に生息するオバ爺チートを活用して一定ラインまで食い込むことに成功した。
最高経営責任者である義兄マイケルが抱く、医師としての矜持なる精神や、
我が祖国、日本で運用されている自衛隊をモデルとして考慮している私の影響もあり、
防衛・人道救助・高機能医療機器の建前のもと、競合他社とは異なる方向性の画期的な新商品を次々と開発していた。
そんな中、突如として起きたジャスティン・ハマー氏の逮捕劇。
鞭おじさんこと、イワン・ヴァンコがスターク・エキスポにて打ち上げたきたねぇ花火の責任を取らされた形で凋落していく。
この事件がオズコープ社にとっては追い風となった。
当然だが、脳内のオバ爺はハマー・インダストリーのことを己の会社の如く、知り尽くしている。
原作ではかなり残念な描かれ方をされているが、スターク・インダストリーズにとって長年のライバル企業の一角であったは事実だ。
故に、その指示は余りにも迅速で、且つ、的確であった。
ニュースを聞くや否や、瞬発的にオズコープ社の中に新しい部署を複数設立し、社内公募で最適な人材を確保した。
そして、狙い撃ちすべき優秀な下請け企業を適切な価格で
オバ爺のこうした活躍もあり、今やオズコープ・インダストリーズは、世界的な
こうして企業規模と事業の幅が広がったオズコープ・インダストリーズは本社を移転した。
マンハッタン島の中央部、ミッドタウン西57丁目300番地。私専用の新しいラボも此処にある。
重厚な超高強度繊維補強鉄筋コンクリート造の基壇部から、天を突くように組み上げられた幾何学的なダイアグリッドの強化ガラス。所々に御影石の装飾が施されている。
双眸の如く、そびえ立つ全54階建てのツインタワーだ。
中層と高層を頑強に繋ぐ
その頂上部の鋭利な削ぎ落とし部分には、夜空に妖しく青く輝く『OSCORP』の巨大な発光ロゴが浮き彫りになっている。
正直、ダサい。鯉のぼりみたいだ。
私が出した姫路城案の方が100万倍優れていると思うんだが、義父からの評価はイマイチだった。
結局、ゾラ爺のHydraデザイン案やオバ爺のスターク社丸パクリデザイン案を通すわけにはいかないので、渋々、義兄の魚鱗案に賛同した訳である。
因みに、南東へ少し離れたグランド・セントラル駅付近では、スターク・インダストリーズが、クリーン・エネルギーの象徴とやらを建てようとしている。
12%は彼女の子どもだ、と云う冗談はさておき、NY決戦の舞台となる地だ。
思わず、ロキが選びたくなるような自己顕示欲丸出しのタワーに仕上げて欲しい。
是非とも、宇宙人からの視線すらも独占するくらいド派手に目立つものが無事に完成する事を心の底から祈っている。
鉄骨を天へ伸ばす未完成の巨塔を、専用のラボの窓から少し遠くに見上げつつ、私は呟く。
原作を知る身として、平時の利便性を天秤にかけつつ、妥協できる範囲で宇宙人が飛び交う激戦区から可能な限り離れたつもりだ。
それでも、直線距離は僅か1.6キロメートル。
故に、少しでも標準とされないように、敢えて、高さを抑えた構造になっている。
それと、前世からの癖でどうしても完璧な耐震性能を求めてしまうのは御愛嬌だろう。
マンハッタン島において、地味な建物デザインコンテストで優勝するのは、紛れもなく我がオズコープの双子塔だった。
このように我がオズコープ社が、国家防衛と極限医療のトップブランドとして名実ともに君臨したタイミングで国から極秘の連絡が入った。
───S.H.I.E.L.D.が北極の氷床から伝説の英雄を発見したのだ。
しかし、かの組織は持ち得なかった。
70年もの間、凍結されていた超人を細胞レベルで損傷なく目覚めさせる異次元の医療技術を。
更に、解凍した超人に急激な代謝異常を起こさせず、運動機能を戻す専門的な医療技術を。
そこで白羽の矢が立ったのが、没落したハマー社の穴の大半を埋めて、爆発的に
その中でも、今回、最重要視されているのは、世界一のバイオ技術を保有するメディカル部だろう。
実際、野外医療や高機能生体モニタリング機器においてトップブランドの名を欲しいままにしているのだ。期待には応えようとも。
「ニック・フューリー長官は、本気でこの件を我がオズコープに任せたいとおっしゃっているのですか……」
オズコープ・タワー最上階の重役会議室。
広大な会議室には、厳重な秘密保持義務を署名させられた幹部たちがズラリと居並び、息をのむような緊張感が漂っている。
数々の敵対的買収の裏で起きた我がオズコープに対する訴訟。その全てを勝ち抜いた女傑ことアン・ウェイング
ゾラ爺と対等に幅広い分野にまたがって会話が成立する、野良の大天才ことメンデル・ストローム
まぁ、誰もMCU原作映画に登場していないので、どのくらい優秀なのかはあまり分かっていない。義兄と同じく野良の天才タイプなのだ。
故に、私の原作知識の一切が役に立たず、オバ爺の無双伝説が無ければ、これ程に多い地上の星を手にすることは叶わなかっただろう。
「北極の氷床より発見されたキャプテン・アメリカの解凍およびリハビリ支援に関する極秘委託要請。マイケル義兄さん、ウチにピッタリな仕事では?」
私は口を開く。
重苦しい雰囲気だが、脳内のオバ爺にサポートされながら、かなりの場数を踏んだお陰で気後れする事は無くなった。
義兄マイケルは書面から顔を押し上げると、隣に座る白髪交じりの老技術者に視線を向けた。
「ストローム博士、我が社の生体モニタリング機器と医療カプセルの性能で、この要請に対応することは可能でしょうか?」
ストローム博士は、気むずかしげに手元の資料へ目を落とし、一枚ずつ捲っている。
徐々に眉間に刻まれた皺が深くなっていく様子に、周囲は不可能かと悟る。
しかし、数秒の重苦しい沈黙の後、眼鏡の縁を押し上げながら静かに頷いた。
「一筋縄ではいきません。対象が常人離れした代謝機能を持つ超人である以上、予測不可能なタイミングで、突発的に体温上昇や脳波の急変といった不測の事態は十分に起こり得ます」
ストロム博士は資料の一箇所を指で叩いた。
息を吸い、続きの言葉を紡ぐ。
「ですが、S.H.I.E.L.D.の杜撰な医療設備に比べれば、我が社の最高モデルの医療カプセルは二重のバックアップ電源とリアルタイムの自動鎮静システムを備えているだけ、対処しやすいかと。マイケル専務が開発された人工血液と細胞維持薬を正しく投与し続けて解凍手順を踏む……という前提であれば、安全に依頼を達成出来る確率は極めて高いと言えます」
あぶない、あぶない。
ここで「技術的に不可能です」と言われると非常に困るところであった。
今がチャンスだ。結論を急がせよう。
「決まりですね。お引き受けしましょう、マイケル義兄さん。貴方を必要としている方がいらっしゃるのですから」
重役たちの視線が一斉に注がれる中、上質なスーツを着こなした私は、デスクに置いた愛機『ThinkPad W999』のキーボードを打ち込みながら答えた。
そして、会議室の端で厳格な佇まいに徹していた黒スーツの男へ視線を向ける。
「メンケン
ドナルド・メンケン。
完璧に整えられた髪型と冷徹な表情を崩さないこの男は、アメリカ国内の
国家機関相手であっても隙を見せず、法的な穴を突いた上で、恩を売りつつ、会社に圧倒的利益をもたらす手腕はまさに一流である。
メンケン氏は、寸分の狂いもない動作で深々と一礼を返した。
「承知いたしました」
その完璧すぎるお辞儀と冷徹な笑みを眺めていると、脳内のオバ爺が気だるげな声を漏らしてきた。
実際に、メンケン氏を紹介したのはオバ爺であるが、採用に関しては、あまり気乗りしないという態度を貫いていた。
『……アルバよ。あのメンケンという男は、仕事は完璧だ。が……気をつけろよ。あいつには反骨の相が出ている。野心が強すぎる部下ってのは、油断するとあっさり足を掬われるぞ』
『ふん、オバディアよ。それはただの相貌心理学じゃ。人相や骨格から性格や野心を読み取るというのは、旧時代の疑似科学でしかないわい!』
すかさず脳内のゾラ爺が横から口を挟んできたが、私も即座にツッコミを入れる。
(いやゾラ爺、それ相貌心理学じゃなくて『体癖論』だろ)
『……は? 二人とも何言っている。あくまでも私の勘だ』
『……おいアルバ、体癖論ってなんだ? 近年、発表された学術なのか?』
(……え、いや……オバ爺は諸葛孔明だし、ゾラ爺も戦前エセ科学過ぎて何を言っているのか……)
お互いがお互いの持ち出した怪しい学説に困惑し合うシュールな沈黙が流れたが、私は咳払いを一つして意識を現実に戻す。
ともかく、メンケンの優秀さと野心の強さは綺麗に比例しているのだろう。
どこかしらで首輪を嵌める方法を考えねばな。
こうして、我がオズコープ社とS.H.I.E.L.D.の共同プロジェクトが始動した。
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』終了。
スタークタワーの住所
Grand Central Terminal, New York
キャプテン・アメリカの台詞
「南は39丁目まで」
『アメイジング・スパイダーマン 1』における
オズコープ社の住所
300 West 57th Street, Midtown Manhattan
2012年にGameloftからリリースされたスマホアプリ版『The Amazing Spider-Man』を
-
プレイした事がある
-
プレイした事がない