悪役の魂と共にMCU転生したので生き延びる 作:ゴウカザルのスケジュール
実の所、薄々気が付いてきたんだ。
アベンジャーズの世界って事に。
あの時の市役所での受付業務。
その後に意識を失って以降、どうも謎の浮遊感に襲われ続けている内に、
受け入れ始めたと言い換えた方が良いかもしれない。
兎も角、エンシェント・ワンという自己紹介を受けた辺りで、
かなり前に観たアベンジャーズの映画を思い出したのは事実である。
そして、夢だと断じていたこの虚無な空間がいつまで経っても終わらないという現実。
転生という超現象を受け入れざる得ない。
味わってきた数はそんなに無いが、多少なりとは理不尽という社会の荒波を乗り越えてきたのがアラサーだ。
どうしようも無い事なので、転生したという前提でコレからどうしていくかの方向に向けて思考を切り替えるのは大切な事だろう。
色々と感情の整理が済んだ頃に、ゾラ爺は私の魂に迷い込んで来た。
魂なのか、思考なのか、脳なのかは分からないが、兎に角、うるさい爺さんであるのは変わりない。
いや、でも、亡くなったのは72歳なので、前期高齢者か。
一応、国民健康保険の対象範囲で、年金支給額にもよるが介護保険料と共に特別徴収で……いや、兎も角、後期高齢者医療制度対象者では無い。
まだまだ働けるぞ。近所の農家の爺さんなんて御歳88なのに未だに田植えをだな。
まぁいいや。
「取り敢えず、ゾラ爺はまだまだ将棋を分かってない。コレでどうよ。王手飛車取り。完璧だろ?」
どうも、私です。
将棋のルールを教えて、まだ三日の天才科学者をボコってます。
チェスはボロ負けしたので、将棋しか指しません。
「ってか、私達はいつ産まれるんだろうな」
この三ヶ月、余りにも暇だった。
ゾラ爺と喋る事しか暇潰しの手段が無いので、お互いに雑学クイズを出し合ったり、戦後世界のネタバレをしたり、世界経済や移民問題について話し合ったりしたが、結局の所、エロアニメの話が一番盛り上がる。
やはり、エロは偉大なのだ。
「その異世界転生ナーロッパとやらの概念は理解したが、転生したらスライムかも知れんぞ」
「まぁ、ナーロッパなら無双出来るんじゃない?ドイツの科学力は世界一ィィィ!!!出来んことは無いんだろ?もう理論分かってるから原爆作れるんだよね?ドラゴン倒せるくね?」
「物理攻撃無効などというスキルとやらがどう作用するかによるがな」
おおお、凄い。
ゾラ爺が少しだけ現代オタクっぽい事を言い出した。
ついこの前までは魔法という概念自体を全否定し、科学万能主義者であったが、なろう系の沼にハマったようだ。
たまに化学か科学か物理かはよく分からないが、お勉強を教えてくれる。
戦前の知識しか持っていない爺だが、現代の義務教育程度には通用するくらいには基礎がバッチリな筈だ。
私はゴリゴリの文系なので出来の悪い生徒だが、スイへーリーベーは理解した。取り敢えず、僕の船ってことらしい。
そんなこんなで迎えた転生の日。
私はゾラ爺と共に張り裂けんばかりの歓喜の雄叫びを上げる。
久々の肉体の実感。
持ち上げられている事を皮膚を通じて確かに理解する。
暫く経って、視界がクリアになった。
満を持して瞼を押し広げる。
目に映ったのは金髪美女。
この遺伝子なら私の顔面は勝ち確です。
そして、背景を注視する。
壁に掛かっているのはカレンダー。
Augustの文字。数字は2001。
はい、私は今世もZ世代です。
21世紀万歳。