悪役の魂と共にMCU転生したので生き延びる 作:ゴウカザルのスケジュール
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創作においてAIはあまり使いたくない旧世代の人間なので、
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皆様には誤字脱字読みにくいところがあるかもしれません。
御迷惑をお掛け致します。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
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目が覚めた。
ふかふかのベッドの上でゴロゴロと転がった後、気合を入れて立ち上がる。
そして、手すりの鉄棒部分を持ちながら、私はゆっくりと螺旋階段を降りた。
向かった先は、朝の静けさが漂うニコラス家のリビング。
イオニア式の特徴的な渦を巻く意匠が彫られた古い木製の大型作業机の上には、既に朝食のトレーが置かれていた。
作業机の片隅には、我が義兄であるマイケル───の親友である、マイロ。彼はロンドンに住んでいるらしい。
大西洋を横断してわざわざ送られてきたという、立派な彫刻が施された銀製のヴィンテージ・チェスセットが置かれている。
まぁ、義兄は基本的に眺めるだけだ。
実際にプレイするのは専ら、私。
脳内のゾラ爺とデュエルスタンバイしている。
え、傍から見るとおかしい?
確かにそうだろう。
そもそもチェスは二人用のゲームで……え?そうではなく棋譜が異常だと?
うるせぇ、ボロ負けするんだよ。ゾラ爺、許すマジ。
その傍らには、少し気取った筆跡で書かれた短い手紙と、ギリシャから仕入れたという上質なオリーブオイルの瓶が添えられていた。
試薬や消毒液の匂いが残る室内に、焼きたてのパンと、ボウルに盛られた濃厚なギリシャヨーグルト、そしてマイロから届いたオリーブオイルの青々しい香りが広がっていく。
「おはよう、マイケル義兄さん」
「……
目の下にうっすらと隈を作り、点滴スタンドのポールの位置を微調整しながら作業机の椅子へやってきた19歳の青年──我が義兄であるマイケル・モービウスは、疲れた手つきでコーヒーカップに手を伸ばした。
かすかに残る地中海訛りのアクセントとギリシャ語が、彼の苦々しい溜息に混ざる。
……カレメラ、ねぇ。
私はスプーンで固めのヨーグルトを掬いながら、内心で少し呆れていた。
と言うのも、明確な理由がある。
悪魔と恐れられた数学者のフォン・ノイマンは、幼少期に父親と古典ギリシア語でジョークを飛ばし合って遊んでいたという史実を知っているからだ。
朝の挨拶にいちいちギリシャ語を混ぜてくるのは、恐らく、厨二病を卒業出来ていない証だろう。この野良の天才は、もうすぐ博士号を取得するかも知れないというのに、未だイキっているガキんちょである。
私はどこか生温かい眼差しになりそうになるのを、トーストをかじることで誤魔化す。そして、思う。日本の柔らかいパンが恋しい、と。
世間では天才と持て囃されている義兄を視界に入れながら、私は記憶を呼び起こす。
私が観たMCUの映画の登場人物───アベンジャーズの創設メンバーやヴィランのリストのどこを探しても、『マイケル・モービウス』という名は存在しない。
「ふぅ……、まぁそりゃそうか」
しかし、大都市ニューヨークの層の厚さを思えば、ギリシャの田舎から渡米してきた表舞台に現れないローカルな野良天才などいくらでも転がっているのだろう。
義兄の専門分野は人間を初めとする哺乳類の血液構造に関するもの。
言わば、生化学というやつだ。
先天性で持っている疾患が、血液に関するものらしく、義兄は、自身や同じ難病を持つ患者達を救うべく、日々、奮闘している。
「あの疾患は───ふむ、文系のお前に分かりやすく伝えるならば、体内で新しい血液細胞を正常に作る事が出来ない病気というものだな。実際に、あの小僧は8時間ごとの輸血と生命維持装置がなければたちまち衰弱死するじゃろうて」
義父や義兄との対話で医学知識が現代水準に引き上がったゾラ爺が脳内で何かを呟いている。血を作るとなれば、骨髄とか関係しそうだが、赤血球側の問題だとかで、正直、素人にはよく分からない。
だが、ヒドラで超人血清の製作法を研究していただけあって、この分野であってもゾラ爺の基礎力はかなりなものだ。
「昨日の『血管内皮細胞における流体圧の変動モデル』の論文、読んだよ。面白かった」
私はそんなゾラ爺が脳内で発する言葉を、倫理観や法的観点において問題があまりに無さそうな台詞に変換し、一般人にも比較的、好意的に受け止められるように言い換えて出力する。
「……読んだのか。5歳児の読書としては、かなり悪趣味だと思うがね」
義兄は呆れたように眉を下げたが、その瞳には不快感ではなく、知的な好奇心と微かな苦笑が浮かんでいた。実際に見振りで続きを促す。
「ただ、気になった箇所が一つ。12ページの数式だけど、パラメータの初期値に、外れ値───いや、細胞の暴走を前提とした過剰な変数が混ざっていなかった? あそこ、パラメータを反転させて局所的な虚血を防ぐロジックに書き換えた方が、組織の壊死を起こさずに定着すると思うんだけど」
義兄のコーヒーを口に含む手が、ピタリと止まった。
ここ最近、義兄が格闘している研究論文の破綻ポイント──過剰なエネルギー代謝による細胞の破壊──に対して、私が投げかけたのは、ゾラ爺が半世紀前に超人血清の暴走でさんざん頭を抱えていた未公開失敗ログの反転解釈だった。
脳内で冷静に計算シートを再確認しているゾラ爺の呟きをはんば聞き流しつつ、私は少し高い椅子になんとかよじ登って食卓に着く。
義兄も何かに気が付いたのだろう。その痩せ細った長い指で額を押さえ、深々とため息をついた。
「……アルバさぁ、ここ数日間、僕がそのページで頭を抱えていたのを知っていて言っているのかい?」
「まさか。ただの素人質問だよ。まだ5歳だし」
「その『まだ5歳』という言い訳、そろそろ法的に禁止した方がいいと思うよ。……まったく、ロンドンで大金持ちの道楽を楽しんでいるマイロの減らず口に比べたら大人しいが、突きつけてくる毒の質が違いすぎる」
義兄は呆れつつも、マイロから贈られた香水瓶の一つを愛おしそうに指先で転がした。
「おはよう、二人とも。朝から実に知的で建設的な議論だね」
奥のキッチンから、スキレットで焼いた羊乳チーズと温かいスープの載ったトレーを手に、義父であるニコラスが穏やかな笑みを浮かべて現れた。
「ニコラス、助けてくれ。この新しい『弟』は、朝の挨拶代わりに僕の論文に赤ペンを入れてくるんだ」
「ははは、マイケル。君に高度な素人質問をぶつけられる人間が、この家にようやく現れたということさ。マイロがここにいたら『僕の代わりに痛快にやってくれた!』と大喜びしただろうね」
義父は朗らかに笑いながら、作業机の端を片付け、朝食の皿を並べる。
「……まったく。今日、大学に行ってからやらないといけない作業が増えてしまったよ」
義兄はボソッと呟きながら、マイロのオリーブオイルがかかったチーズを口に運ぶ。ゾラ爺はその更新後のデータが見たいと脳内で叫んでいた。
「役に立ったならよかった。美味しいね、このスープ」
私は子供用の小さなスプーンでドロドロのスープを口に運びながら、至極満足な笑みを浮かべた。心の中の炎柱が叫んでいる。不味いッッ!!
地中海被れの食事は、私の口にあまり合わないが、義父であるニコラスが言う通り、この家はとても知的な環境である。
元から里親に拾われた方が生活水準が上がるとは踏んでいた。
実の母親との生活は、気を抜けば生命の危機に瀕してしまう恐れが非常に大きかったからだ。主に、経済面と、母親が連れ込んでくる暴力的な男達の存在。アレらは学習以前の問題であった。
しかし、私とゾラ爺で決めた、大人との接し方を行う事を考慮すると、行政保護を受けたとしても、児童養護施設に送り込まれる可能性が大いに高かった。
だが、どうだ。
この素晴らしい現実は。
やかましく騒ぐ同年代の幼稚園児もいなければ、変な感情論を振り翳してくる過干渉な大人も居ない。
既に我が家には、19歳の病弱な天才が居るお陰で、変に目立つ事なく、こんな異物でしかない私ですら寛容に受け入れられる土壌が存在している。
適度な距離感、ロジカルな会話、そして、圧倒的自由な空間。
義父や義兄の親友であるマイロと会話を通じて知った事だが、中途半端なギフテッドの場合、エゴイズムに満ち溢れた学歴コンプレックスの偽善活動家が、教育機関のテストの点数などというしょうもない部分に固執し、無駄な学習を押し付けてくるケースもある様だ。
この国がアメリカ合衆国であるから、なのか、それとも、ハワード・スタークを初めとする異次元の天才達が前世以上に頻出するMCUの世界線であるからなのか、その両方であるから、なのかは不明であるが、
兎も角、この世界はギフテッドという概念が予想の範囲以上に社会に浸透していた。
義父が資本力と理解の双方が有るタイプの親である事は間違いないが、それでも流石に、やり過ぎでは無いだろうか。
子供部屋に軍用バッテリーがある件について。